05
俺は買ってきた食材を使い、簡単な昼飯を二人分作って八島に出す。
「ほら、お待たせ」
「ん……ありがとう」
俺が食事を用意すると八島は布団から出てきた。
出てきたのだが……。
「な、なんで裸なんだよ!!!」
また裸だった。
「ん……家ではいつもこう」
「少しは隠せ馬鹿!!」
そう言う八島は全裸で机の前にやってきた。 しかもまったく隠そうともしない。
なんなんだこいつは……無口だし、全裸だし……。
俺は八島に背を向けて尋ねる。
「お、お前なんで裸なんだよ! 服を着ろ!!」
「それは出来ない……」
「なんでだ!!」
「なんか気持ち悪い」
「意味が分からん!! お前は恥ずかしくないのか!」
「一回見られた、もう平気……」
「なんでそうなる!!」
「別に裸を見られても気にしない……最初は恥ずかしいけど……私、裸族だし……もぐもぐ」
「飯を食いながら話すな!」
裸族って……じゃあ昨日俺がドアを開けたあれも事故じゃなくて必然!?
てか、なんでこいつは羞恥心も無く、俺の作った飯を裸で食ってるんだよ!
「はぁ……お前さぁ……部屋は汚いし、裸族だし、無口だし……少しは女らしくしろよ」
「面倒くさい……」
「なんでそうなるんだ……」
俺は八島に背を向け、食事を済ませる。
食事を終えても、八島は相変わらず裸のままだった。
「お前……いつも飯はどうしてるんだ? 見たとこ、コンビニ弁当とかコンビニの袋ばっかりだけど」
「……いつもコンビニ」
「少しは栄養有る物食えよ……体壊すぞ」
なんで俺はこいつにこんな世話を焼いてんだ?
はぁ……もしかしてあれか?
こいつが家の両親に似てるからか?
俺の両親は仕事の関係で怠惰な生活を送っていた。
食事は基本俺が作っていたし、洗濯なんかも俺がやっていた。
うちの親は正直俺が居ないと何も出来ない。 とは言っても、生活くらいは出来るだろうが……。
出張先では家政婦を雇うって言ってたし、大丈夫だと思うけど、俺は今でも少し心配だ。
「はぁ……悪いが俺はもう帰るぞ、皿はこのまま回収して行く」
「ん……ありがとう」
「おう。あ、インターホン押されてもそのまま出ていくなよ」
「大丈夫、流石に服着る……」
「じゃあ、今も着ろよ……あと、鍵はしっかり掛けておけよ」
「ん、わかった」
「それじゃあな……」
俺は八島にそう言って、部屋を後にした。
食事の辺りからあいつの顔をまったく見なかったが、きっといつもの無表情だったんだろうな……。
「はぁ……なんか疲れた」
俺は食器を持って部屋に戻ってきた。
何やってんだろ……俺。
てか、なんであいつは部屋に男と二人の状況で裸なんだよ!
というか裸族って何!?
「はぁ……本格カレーを作る予定だったのになぁ……」
俺はそんな事を考えながら、食器を洗う。
しかし、あいつにあんな一面があったなんて……。
「人間、学校と家では違うんだなぁ……」
俺はそんな事を考えながら、食器を拭いて棚に並べて行く。
*
翌朝、昨日の入学式が終わり、今日の午後には新入生と在校生の顔合わせ会がある。
受業は無いが、昨日と違って一日学校に拘束されると思うと憂鬱だ。
俺はそんな事を考えながら、昼食用の弁当を作る。
「よしっ! 出来た!」
時間も言い時間なので、俺は作った昼食を持って部屋を出た。
鍵を掛け、俺はアパートの廊下を歩く。
そう言えば、八島はもう起きて学校に行っただろうか?
俺はそんな事を考えながら、通学路を歩く。 まぁ、少し寝坊してたとしても大丈夫だろう、あのアパートか学校までは近いし……。
「よっ!」
「ん? あぁ強か……」
「部屋は片付いたのか?」
「まぁな……大体終わったぞ。お前らは放課後どっか言ったのか?」
「あれだよ、早乙女のバイト先……オカマのマスターが居る喫茶店」
「あぁ、あそこか……」
「何? 呼んだ?」
「おう早乙女、おはよう」
いつもの三人が通学路で合流した。
「あら、あの子新入生かしら? カワイイわねぇ~」
「早乙女、くれぐれも手を出すなよ……あの子は男だ」
「分かってるわよ~」
「うぉ! なぁなぁ! あの子可愛くね!? 新入生かな?」
「強は無謀な恋はするなよ」
「その通りね」
「どう言う意味だ!!」
そんな話しをしながら、俺たちは学校に向かう。
「なぁ、今日お前の新居に遊びに行っても良いか?」
「はぁ!? なんだよ急に!!」
「なんでそんなに慌てるのよ?」
教室に着くなり強がそんな事を言ってきた。 いや、別に全然良いんだけど……八島が隣に住んでることがバレたらいろいろ面倒だしなぁ……。
でも、あいつは部屋から出てこないし……大丈夫か?
「ま、まぁ良いけど……」
「じゃあ、新居祝い持って行ってやるよ」
「まじか! 何くれるんだ?」
「まぁまぁ、楽しみに待っとけよ!」
「じゃあ、私も何か持って行かなきゃねぇ~」
「おぉ! 早乙女もか!」
「よし、決まった! 今日の放課後、鞄置いたら琉唯の家行くわ」
「あぁ、良いぜ。準備して待ってるよ」