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「おい! 八島もう一回だ!!」
「ん……良いよ」
悔しくも俺は八島に負けた悔しさで少しムキになってしまった。
「クソッ!! また負けた!」
「ムフー……」
こいつ……強すぎる……俺はこのゲームは結構上手な方だと思っていた。
ランクマッチだって、結構上位の方に居るし……。
そんな俺をこんな簡単に倒すなんて……八島、こいつ何者なんだ?
「おい! もう一回だ!」
「来るが良い……小僧……」
こいつ!!
完全に俺を舐めてやがる!
クソッ!
意地でもこいつに勝ってやる!!
「また負けただと!?」
「ムフーン……」
「ねぇ……そろそろ変わってよー、私が退屈になってきちゃった……」
「待ってくれ上屋敷! 後一戦だけ頼む! 俺は……負ける訳にはいかないんだ!!」
「いや、別に勝つ理由なんてないんじゃ……」
「八島、もう一回だ!!」
「む……仕方ない……相手になろう……」
結局そのあと俺は八島と10戦し、一回も勝つことが出来なかった。
最早レベルが違う……。
「ま、負けた……八島……お前は一体……」
「……まだまだ……」
「ねぇー終わったぁ?」
いつの間にか夢中になってしまい、上屋敷を放っておいてしまった。
上屋敷は暇そうな顔でスマホを弄っていた。
「はぁ……もう、二人ばっかりずるいよ!」
「すまん……しかし、八島……お前一日どれくらいゲームするんだ?」
「ん……深夜に少し……」
「少しの量でそこまで上手くならないだろ!」
「……気にしない方が良い……負け犬」
「おい! 今負け犬って言ったよな!? この野郎ぉ……もう一回だ!!」
「あぁ!! もう! いい加減にしてよ! 私がひーまーだーよー!!」
ついつい熱くなってしまった……。
俺はコントローラーから手を離し時計を見る。
一時間近くも俺は八島との対決に熱中していたらしい。
時間を忘れてゲームをするなんて、いつ以来だろうか……。
「もう、このゲームはいいよ。他の皆で遊べるゲームとかないの?」
「ん? それなら……この人生ゲームSPはどうだ?」
まぁ、タイトルの通り人生ゲームのテレビゲームバージョンなのだが、ボードゲームと違って片付ける面倒くささもないし、銀行役なんかも必要ないからな……。
それに少人数でもコンピューターを加えてやれば、盛り上がるし。
「いいね! コントローラーも人数分あるし! 運の要素も強いし!」
「まぁ、さっきよりはな……」
上屋敷はボロボロだったしな……。
俺たちはさっそくゲームを開始した。
元々は早乙女や強とやるために買ったものだが、まさか女子二人とやる事になるとは……。
「あ、さっそくイベントだな」
「えっと、入学イベントだね、どの高校に入学するか選ぶんだって」
このゲームは生まれてから社会人、そのあとの結婚生活までを疑似体験出来るゲームだ。
高校の入学イベントは、現在のパラメーターで決まるらしい。
「俺は……学力も体力も普通、財力も普通だから普通の高校か……」
「私は体力が高いからスポーツ推薦で行ける!」
「私は……学力高いから……進学校」
みんな、高校進学までは良かった。
しかし、高校に入学してからのイベントがこのゲームの鬼門だった。
「は!? 不良に絡まれてカツアゲされる? -10000円!?」
「うわ! 怪我をして大会に出られない!! 二回休み!?」
まぁ、ここまでは良かった。
普通のはずれマスに当たっただけだった。
しかし……。
「はぁ!? お笑い芸人になる事を決意!? 高校を辞めて上京? 社会人ステージへ!?」
「へぇ!? 部活に身が入らずえ、援助交際!? 学力-20!?」
いや、いきなりどうした俺のキャラ!!
何があった!?
今まで普通に生きてきただろ!
なんて一人でゲームにツッコミを入れたくなるほど、突然の出来事だった。
上屋敷のキャラも現在は学校を退学し、風俗で働いている……なんだこのゲーム。
そんな中八島はというと……。
「む……一流大学に合格」
「何!?」
「む……研究が認められ、大手企業に就職……」
順調に勝ち組の人生を歩んでいた。
こいつ……運までもってやがる……。
それと比べて上屋敷は……。
「え!? 子供が出来る? でも相手がわからず流産!? -20000円!?」
なかなかに波乱の人生を送っていた。
書く言う俺も……。
「はぁ!? バイト先で窃盗事件が発生? 犯人に疑われ警察署に連行? 三回休み!?」
このゲーム……無駄にリアルだな……。
まるでこの国の光と影を見ているようだ……。
言うまでもないが、人生ゲームもやっぱり八島が勝った。
最終的に八島は一流企業の社長にまで登り詰め、資産金は一兆円を超えた。
対する俺はお笑い芸人になれず、定職にもつけず、結婚もできずの散々な人生になってしまった。
上屋敷は結婚するも旦那のDVで死亡という、なんとも悲惨な結末で終わってしまった。
いや、こんな人生嫌だわ……。
「……私、結婚は慎重にする……てか、しないかも……」
「落ち着け上屋敷! これはただのゲームだ! 気にするな!」
しかし、俺も絶対にお笑い芸人は目指さないようにしようと、硬く心に決めた。
ちゃんと就職しよう……。




