ポイリティ・ポイんノリティ
<< なろう高校の教室 >>
ポナ子「『ポイんっ』てダッサいよねー」
ポム代「だよねー、『ポイんっ』とかするヤツって自己主張つよすぎぃー」
ポナ子「やっぱり時代は『無ゴーんっ』だっつーの!」
ポナ子・ポム代「「 ギャハハハハ!! 」」
◇
他者をはばかることのない笑い声が放課後の教室に響く。
しかし彼女たちはなぜこんなにも強気でいられるのだろうか?
◇
その理由は単純明快。
なろう高校において『無ゴーんっ』派の方が圧倒的に多いからだ。
『ポイんっ』を行ったことのある者はごく少数派というのが現実。
◇
ポム代「『ポイんっ』とか言ってないで『無ゴーんっ』の侘び寂びを感じろ!ってね!」
ポナ子「わびーんwww! さびーんwww!」
ポム代「無ゴーんっ、無ゴーんっ、ンゴゴゴゴォ!!!」
ポナ子・ポム代「「 ギャハハハハ!! 」」
第三者から見ればよく分からない女子高生特有のノリだが、この二人の自信は『多数派に所属していることで得られる圧倒的な安心感から生じている』ということは想像にかたくないだろう。
そんな二人の視界に教室の隅で一人スマホ読書をするポイ美の姿がうつった。
さっそく絡んでいく二人。
◇
ポム子「あれあれあれー? ポイ美はそんなじゃないって感じぃ?」
ポイ美「…………」
ポム子「えーまじでー? でじまー? もしかして『ポイんっ』とかやってんのー?」
ポイ美「…………」
ポム代「やめなよポム子ーwww まさか優等生のポイ美様が『ポイんっ』なんて、くっそダッサい、少数派の所業なんて行ってるわけないじゃーんwww」
ポナ子・ポム代「「 ギャハハハハ!! 」」
ポイ美「…………」
迷惑な二人をシカトするポイ美。
◇
ポナ子とポム代は、ポイ美が多くの作品を『ポイんっ』したことのある『ポイんノリティ』であることを当然把握していた。
なぜなら、なろう高校において全ての生徒の『評価をつけた作品一覧』は誰でも見ることができるからだ。
◇
そんな時、ポナ子のスマホの通知が鳴った。
すぐさま確認するポナ子。
ポナ子「あっ! ムゴキンの新しい動画がなろーチューブにアップされてる!」
ポム代「えっ! ほんと!? 見よう見よう!」
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タイトル:
『 ムゴキン、本日より”ぽいキン”に改名します! 』
内容:
むごむごー
ハロー、なろーチューブ!!
わたしムゴキンは本日より『ぽいキン』に改名することにしました!
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ポナ子・ポム代「「 え!? 」」
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いやー、やっぱり「作品を評価する姿勢」って大事だと実は前々から思ってたんですよねー
ランキングにしても、ポイんっする人がいて初めて成り立ってるわけですしー
『ポイんっ』が作者さんのモチベーションアップにつながるのも間違いないですし。
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ポナ子・ポム代「「 ………… 」」
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『無ゴーんっ』の侘び寂びも悪くはないけど、何ていうか『色んな選択肢がある』って方がいいかなーと思ったりしたわけですよー
みんなが選択肢を持っているってことをお互いに認め合った上で、自由に謙虚に『ポイんっ』したり、しなかったりしたらいいんじゃないかなっと、わたしそんな風に思うわけですよー
というわけで今日からは『ムゴキン』あらため『ぽいキン』として活動していこうと思います!
◇
ポム代「」
ポナ子「ムゴキン……、いや、今はもう『ぽいキン』か……。」
意気消沈の二人。それもそのはず、有名なろーチューバーのムゴキンが『ぽいキン』に転向してしまった今、『無ゴーんっ』派が今後削られていくことは明白っ……!
いつ多数派が少数派に逆転するか分からない状況となってしまったのだ……。
◇
ポイ美「ぱたん(スマホ」
ポイ美「アンタたちも好きな様にしたら?」
ポイ美「『無ゴーんっ』でも『ポイんっ』でも、謙虚にやってる分には別に誰も何も言わないよ」
ポイ美「それを他人に押し付けるのは違うと思うけど! ねっ!」
ポイ美「ガッ(立ち上がる音」
意気消沈の二人に背を向け、ポイ美は放課後の教室を去っていったのだった。
◇
ポナ子「どうする……」
ポム代「どうしよっか……」
放課後の教室に取り残された二人。
これからどうするべきなのか……、正解を教えてくれる人はいない。
いや正解などおそらくないだろう……。
自分たちの未来は……自分たちで決めなくてはならないのだ。
◇
でもとりあえずポイ美にうざ絡みしに行ったことは反省した二人であった。