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翼持つ者たちの唄  作者: はぐれイヌワシ
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翼持つ者たちの唄

「―――夢を見たのだ!!ヤマドリは何処だ!?」

目を覚ますなり、姫様はそう叫んで寝室を飛び出しました。

士官も、それに続いて姫様を追いかけました。


もう、新婚初夜の余韻など御座いません。

半狂乱の姫様と士官は、とうとうあの城壁から身を乗り出しました。


目の前の海には、ヤマドリがいつも身につけていたピアスが浮いているばかりでした。


「嗚呼、私はたった今この国に最大の忠誠を捧げた男を喪った!!

誰かあのピアスを引き上げろ、あれの魂は我らが鎮めるべきだ!!」


直ちに船が出され、ピアスは回収されました。

水夫の手から姫様に手渡されようとした其の刹那、一陣の風が其れを奪い去りました。


見上げれば、雷鳥がピアスをその手にしていました。

そして、世にも恐ろしい声で歌い始めました。


ようくきけ、鴎のばけものたちよ

貴様らが喪ったものこそが

嘗て我々が喪ったものと同義であると


貴様らに 最早かれを祀る権利なぞない

今は只、翼たちの裁きを座して待て


「あのハーピーを殺せ!!」

『ハーピー』とは、セイレーンに対する蔑称です。

鴎の軍は、雷鳥に向けて矢を向けました。


しかし、雷鳥はピアスを携えたまま瞬く間に山間へ消えていきました。


***


それと同じ頃、森の一軒家では、白い翼の魔法使いが慟哭していました。


「嗚呼…俺は、お前の魂を欲していたわけではない…あの国が、絶望に沈む瞬間を見たかっただけだ

……愛しい女王よ…私は許されざる事をしてしまったのでしょうか…?!」


***


遠く、鴎の国で。

姫様とその夫君は今でも、ヤマドリの武勲を語り継いでいます。

ほら、聞こえるでしょう。

最早償える筈もない者に、許しを請い続ける彼女の声が。


遠く、深い森の奥で。

魔法使いは今でも、白い翼の歌を語り継いでいます。

ほら、聞こえるでしょう。

ただ亡き白い翼の女王を愛し、尚も魔術を他国に売る彼の歌が。


遠く、雷鳥の郷で。

雷鳥は今でも、ヤマドリの歌を語り継いでいます。

ほら、聞こえるでしょう。

ヤマドリの想いを受け取り、尚故郷で戦う彼の歌が。


されど、ヤマドリの魂の行方は、誰も知りません。



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