Episode.03 クラスメイト
俺達Bクラスの教室は、昇降口から左の廊下を突っ切った先の曲がり角のすぐ手前にあるAクラスの一つ隣奥に位置する。そして職員室は曲がり角から階段を一つ上がった二階の二年教室の近くにある為、先生達の通りは悪い。
だからという訳じゃないが、Bクラスの教室に向かってドタバタと走る友哉に追いつくため、俺は仕方なく早歩きで着いていく。微かに教室内から喧騒が漏れる扉をバタンと大きな音を立て、その勢いのまま声を張り上げて挨拶をした。
「おーっす!」
「お、おはよう」
先程まで騒がしかった教室の中が一瞬で静寂に包まれる。クラスのみんなの視線が集中する。さっき走って出ていたのとは違う別の汗が全身に噴き出すのを感じる。
「なになに、俺の顔になんかついてる?」
友哉はこの空気が読めてないのか顔をぺたぺたと触り出す。そして何もついてなかったのを確認すると一言。
「なあ羽々音、最近思うことがあるんだ。俺って実は黙ってれば格好良いんじゃないかって」
「知らねーよ! 空気読め馬鹿!」
瞬間。俺達のやり取りを聞いていたクラスのみんなは、湧き出すようにわっと笑いだした。
入学したてとは思えないほどの喧騒の中、四方あちこちから弄られて自分の席に中々辿り着けないでいる友哉を無視して、俺は早足で横切り窓側の後ろから二番目の隅にある自分の席に座った。ぐったりとして机に顔を突っ伏せて深い溜息をつく。
「おはよう、憂。それにしてもお前が友哉と一緒なんて珍しいな」
顔を上げると前の席で座っていた長身の男が椅子に肘を乗せ半身をこちらに向け楽しそうに笑っていた。クラスメイトの加賀誠だ。俺が初めてこの学校に来て仲良くなった友達、とまでは呼べないかもしれないが学校の中ではよく話すようになった相手である。
「通学中に友達詐欺にあってな。見事に騙されたよ」
「はは。なんだよそりゃ」
他人事だと思って誠が楽しそうに笑っていると、クラスメイトとの挨拶を終えた友哉が俺の後ろの席に座る。そう。残念な事に友哉の席は俺の後ろになる。
「今日やっと俺ら友達になったんだよ。な、憂!」
友哉は俺の背中をグーでうりうりと押し付ける。
「ああまあ、うん。そうだな」
「なんだよその微妙な反応っ!?」
俺の反応に抗議するよう友哉は机をバシバシと叩く。
そんな俺たちの反応を見て笑っていた加賀がそうだ、と声を弾ませた。
「」