うつし絵
夜中の海沿いの道をバイクが音をたて、闇の中をかけてゆく。月に照らされ、バイクに乗った男は威嚇するように、主張するようにアクセルを強く踏みつける。波の音がそれに応えるようにさざめく。そんなやりとりをしながらただ前の道を進んでいく。
「竜次!なにつったってんだよ。こっちで勝負しねえか?」
「そんな気分じゃねえんだよ。」
「おい、みんな知ってるか?この日になるとあいついつも夜中にバイクで海沿いの道をバカでけえ音だしながら走ってるらしいぞ。」
と小さな声で竜次の仲間の一人が言った。
「てめえら!走りに行かねえか!そんなことしてないでいくぞ!」
竜次が痺れを切らし怒鳴り立てる。
一つの集団が群れを成して走る。その音は遠い方まで鳴り響き、それだけを作り上げていった。
夜のコンビニでいつものように仲間たちとさわいでいた竜次にドンッと何かあたった。
「チョットうるさくて邪魔なんすけど、どいてくれませんか?」
刈り上げの頭で睨みつけながら竜次をみていた。
「どうせ家族ともめて逃げ出しただけの臆病もんたちの集まりだろ?カッコつけてるつもりかしらねえけどみていて恥ずかしいんだよ!」
その瞬間竜次がその男に殴り喧嘩になった。
竜次の仲間はいつもの通りさしでやりあってるときはそれをただみつめている。
竜次とその男はほぼ互角だった。だが竜次の方が喧嘩慣れしていて最後は竜次の右ストレートで倒れこんだ。
しかし、竜次は喧嘩をして少しもスッキリしなかったし、逆にその男の言葉にイライラさせられていた。