表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

TとUの理不尽クイズ

メールでプレゼント<問題編>

作者: フィーカス

 時間が過ぎ去るのは早いもので、もう長袖を着ている人をちらほら見かける。

 休日の街並みと言うのはとにかく人が多く、まるで軍隊アリの活動を横から見ているような感じだ。

 太陽は必死に熱を与えようとするが、絶妙な距離がその熱さを緩和させ、地面の温度をわずかばかり上昇させるにとどまる。

 それさえも、冷たい秋風に吹き飛ばされ、天気以上の肌寒さを感じさせる。

「上着、着てくればよかったかな」

 長袖のシャツを着たTはそう言いながら、近くにあったファミレスへと駆け込んだ。

 自動ドアが開くと、入店時のピンポーンという音が鳴り、店員が出てきて「何名様ですか?」と尋ねてくる。

 Tは「一人、禁煙席で」と伝えると、店員が適当な席を選んで案内をしてくれた。

 案内された席に向かおうとすると、その席の近くに、コーヒーを飲みながら携帯電話をいじっている友人Uの姿を見つけた。

「お、U、お前もファミレスかよ。珍しいな」

 Tは店員に「ここでいいです」と伝えると、Uの向かい側の席に座った。

「Tこそ、どうしたんだ? 今日は休みだろ」

「ああ、さっきまでゲームセンター行ってきたんだ。電子マネー切れたからそろそろチャージしないといけないな」

「どんだけゲーム好きなんだよ」

 はぁ、とUがため息をついている間に、Tは呼び出しボタンを押し、チョコレートケーキとドリンクバーを注文した。

「いいじゃないか、休みの日ぐらいゲームセンターで廃人になるくらい」

「お前ゲーセンマニアかよ」

「といっても、音ゲーだけだけどな。あ、そうだ。俺の友人が、俺へのプレゼントって言って送ってきてくれたものがあるんだ。ちょっとコーヒー取ってくるから、その間これが何か考えて置いてくれないか?」

 そういうと、Tはスマートフォンをいじり、Uの前に置いて席を立った。

「ん、なんだ? どれどれ?」

 Uがスマートフォンをみると、どうやらTの友人からのメールらしい。

 内容は以下の通り。


「Tへ

 誕生日おめでとう。誕生日プレゼントだ。受け取ってくれ。


 よさいよちひゆらそおせちあやうのえく

 しきなちかんきなくなけりましひくはせ

 とけもむほそせらんひゆやふすてらなえ」


 Uが謎の文章に頭をひねっていると、Tがホットコーヒーを持って戻ってきた。

「U、わかったか?」

「いや、てかこれ、暗号?」

 Tは席に座ると、スティックシュガーをコーヒーに入れ、スプーンで溶かした。

「暗号、ねぇ」

「いやいや、暗号だったら紙と筆記用具いるじゃないか」

「一応、あるにはあるが」

 そういうと、Tは持っていたカバンからA4サイズの紙とボールペンを取り出し、Uに手渡した。

「お前、いつも持ってるけど何なのそれ」

「ああ、小説のネタ練るときにいつでも書けるようにと思って」

 Uは早速受け取った紙に、ボールペンで何か表を書き始めた。

「ん、なんだそれ」

「よくあるじゃん。こういうのって、パソコンのキーボードのひらがなをアルファベットに変換するってやつが」

「キーボード配列全部覚えてるのかよ」

「まあ、俺パソコンには詳しいから」

 全部の配置を書き終えると、今度はそれに合わせてアルファベットを書き始めた。

「えっと、この文字をアルファベットに置き換えると、9xe9av8oc6pa374k5h……って、全然文章にならねえじゃねえか」

「いや、うん、まあ、考え方が間違ってるんじゃないのか?」

「なるほど、っていうことは、逆に一旦アルファベットに変換してそれをひらがなにすると、yosaiyotihiyurasoosetiayaunoekuは、んらとちにんら……ってやっぱり文章にならん」

「キーボードから離れたらいいんじゃないのか?」

 ちょうど店員が、Tの頼んだチョコレートケーキを持ってきたので、Tはそれを受け取り、フォークで一口切り分けた。

 それを口に入れようとしたとき、Uは「あっ」と声を出した。

「わかった。これはパソコンのキーボードじゃなくて、携帯かスマホの入力方法を使うんだ。それで、ひらがなからアルファベットに変換するのさ」

「ほぅ?」

「つまり、これを携帯の入力機能でアルファベット入力をすると、vd@vh……あれ、やっぱり文章にならない」

 Uは頭を掻きながら、自分の携帯電話とTのスマートフォンを見比べる。

「いや、Tはスマホだから、きっとスマホのフリック入力で変換するんだ。てことは、8d@8hn……って大して変わってねえよ」

「どうやら違うみたいだな」

 Tは苦しむUを眺めながら、ホットコーヒーをすすった。


 時折、入店や退店時のチャイムの音が鳴るほかは、ゆっくりとしたBGMが流れる程度の店内。

 UはA4の紙にあれこれと書いていくが、まったく見当がつかないようだ。

「だ、ダメだ。暗号系は結構得意なはずなんだが、まったくわからん」

「さすがにUでもダメだったか」

「てか、お前が誕生日だったってこと自体しらなかったぞ。いつだったんだ?」

「おとといだが?」

 Tは三杯目になるコーヒーを飲み上げると、席を立とうとした。

「なんだ、教えてくれれば何かおごってやったのに」

 が、Uが声をかけたので、立ち上がるのをやめた。

「お、おごってくれるのか? じゃあ、今日飲みにでも行くか」

「いや、それは別にいいんだが、まずはこれを解きたい」

 そういって、Uは再びA4の紙と向き合った。内容はすでに紙に移しており、スマートフォンはすでにTに返している。

 かなり空白が埋まってきたのを見て、Tはもう一枚A4の差し出した。

「そういえば、もちろんTはこれ、わかってるんだろ?」

 Uが例の文章をボールペンで差すと、「もちろん」とTは答えた。

「結局これって、Tが欲しかったものなの?」

「ん、まあ、そうだな。欲しかったといえば欲しかったかな」

「なんだ、煮え切らない答えだな。ヒントになると思ったのに」

「ヒントが聞きたかったのかよ。まったく、俺はヒントなしで一瞬でわかったというのに」

「な、一瞬、だと!?」

「もっとも、Uにはもしかしたら縁がないかもしれないな。使うことが無いかもしれないし」

 そういうと、Tは残ったケーキを平らげ、席を立った。



「さて、毎度おなじみのUへの問題。

 私の元に送られたメール。内容は以下の通り。


『Tへ

 誕生日おめでとう。誕生日プレゼントだ。受け取ってくれ。


 よさいよちひゆらそおせちあやうのえく

 しきなちかんきなくなけりましひくはせ

 とけもむほそせらんひゆやふすてらなえ』


 なんとなく暗号にも見えるこの文章。果たして、私への誕生日プレゼントとは一体何なのだろうか。

 最近ではこういうものをよく見かけるので、使ったことがある人はピンとくるかもしれない。しかし、使ったことがない人にとっては何のことかさっぱりだろう。

 一つヒントを与えておくと、この文章自体に意味はないが、この文章を変えてしまうと、意味がなくなってしまう。

 わかった人は、感想欄やメッセージにでも解答を残しておいてくれ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ