中西毅義
野球から話が少し逸れてます。コメディーでボツになった奴の名残が残ってコメディー風になりました。
とうとう大会が始まった。俺達加美高は明後日の3日目に奈町と戦う。矢垣監督は1回戦っているので余裕だ。
「今度の相手は楽そうだな」
「そうですね」
他の連中も油断しまくりだ。
「しかし楽そうだからと言って油断していてはいかん!勝って兜の緒を締めろとはこの事だ!」
お、良い事言う。
「明日猛特訓を行う!」
明日!?
「1時間だけ」
おい!!「じゃあ今日は奢りだー!ラーメン屋行くぞラーメン屋!」
おお、良いねえ。
「じゃあ俺チャーシュー!」
「俺味噌!」
「あ、なら俺も味噌ラーメン!」
「俺――ラーメン!」
言え!
「おい、それは《ピー》の方が良くね?」
田無ー!!
「いや、――だ!」
「僕は○○派だな」
野比ー!!
「いやぁここは《ピー》だろ」
「いやここは《ドルパソロン》だろ」
川山ー!!
「おぉ」
どこが『おぉ』だよ!
「じゃあ《ドルパソロン》に決まりだな」
何が!?
「何がだっけ」
おい。
「よし着いた」
歩きながらの会話でした。
「おい!」
川山は看板を見て即座に突っ込んだ。
ラーメン屋の看板に『岸川弁当屋』、隣の文具屋の店名『うどん屋』、向かいの印刷屋みたいな店のテントに赤字で小さく右上に『古川不動産』、そして挙句の果てに幼稚園の門看板にデカデカと『崎留工務店』とそれぞれ書かれていた。
『古川不動産』は下に大きく『渡邉印刷』(古川じゃないの!?)と書かれてあるが、『岸川弁当屋』なんざ書かれたら信じるだろ。1番気になるのが幼稚園。『崎留工務店』とデカデカと看板に書かれ、門は灰色。ちなみにここの地名は『田無』である。田無に『崎留幼稚園』はおかしい。多分創立者の名字だな。
『岸川弁当屋』の中に入るとすぐに、【看板に書かれる『○○工務店』などのものは地名か創立者の名字】説は崩れ去った。そして同時に【看板に書かれるのは店名】と言う説も崩れ去った。ついでに【この店の店長は多分変人】と言う説も崩れた。
「らっしゃい、岸川弁当屋もとい中西ラーメンです」
「な、中西ラーメン?」
「あ、お客さん私の名字が岸川だと思ってましたね?あの看板は『崎留工務店』もとい『意味不明な怪しすぎる幼稚園らしき物』の園長の浜田さんらしき人が勝手に付けてったんです。看板もテントも。何か理由が有るのかもしれませんし、外すのに金が掛るんで外してません」常人だった。滅茶苦茶常人だった。
「じゃあ本名は・・・・・・」
「中西毅義と申します」
何とまさかの同姓同名!!その瞬間、親近感が沸いてくる。これはコメディーでは有りません。
「中西毅義ですか」
「はい」
「おい中西、良かったな同姓同名だぞ」
「え、同姓同名?」
「はい。この機会に今度からこき使って下さい」
何故!?
「何故!?」
同姓同名のオッサンが俺と同じツッコミを入れる。
「へー、君が中西毅義君」
「はい」
「こんちは」
「こんちは」
「君野球好き?」
「ええまあ野球部員ですし」
「俺もだ」
「へー」
「で、中西君の夢は?」
「プロ野球選手」
「へーやっぱりね」
「まあ難しいですけど」
「へー、まあ頑張れ」
「出来る限りは頑張りますよ」
「で、プロ野球選手としてもし指名されるならどこが良い?」
「んー・・・・・・どこでも」
「へー」
「へー」
「君は僕と一緒の口癖を持つね」
「へ?」
「《へー》って」
「あっそうか、気付かなかった、へー」
「又出た」
中西ラーメンの中西毅義さんとの話は面白かった。色々聞かれて色々聞けたし。あの中西毅義さんは俺に似てるな。