練習試合
試合は短縮してあります。中西毅義は勿論打ちました。
今日は練習試合。
秋の大会に向けての総仕上げだ。
相手は奈町という高校だ。
奈町・加美・高部で『大阪三大弱小』と言われる。
しかし夏の予選で加美が準決勝までのしあがったので、『大阪三大弱小』の枠から外れようとしている。
高部は10〜25年前はそこそこ強く、練習試合で度々PL学園を負かしていた(公式戦での対PL戦未勝利だが)。しかし最近はめっきり弱くなった。高部は元々勉強の方に力を注いでいる。高部が強かったのは一時期であり、たまたま才能のある選手が入ってたまたま強かっただけとの見方が強い。今は万年初戦敗退の弱小である。
一方の奈町はずっと弱い。
野球部の歴史は名門に負けない程長いのに最高記録は『三回戦突破』。
しかも相手高校の複数選手が腹痛を訴えたための不戦勝であり、やってたら負けてた可能性が高い。大した功績を残していないながらも創立109年、野球部創部85年の歴史を持つ府内屈指の長寿野球部である。監督は代々『狩野』という一族がやっている。最近13年間一回戦を突破した事が一度も無く、『大阪一の弱小』との呼び声も高い。今の監督は『狩野酉三』だ。3代目らしい。
「良いか、相手のピッチャーはエースの軽沢だ。言っとくが奈町には勿体無い大型本格派だ。持ち球はナックル、カーブ、高速スライダーだ」
高速スライダー&ナックル!?凄いぞそれは。高校生じゃ無いだろ実は。
「軽沢の弱点は今のところ見付かっていない。しかしこちらもエースの川山賢士をぶつけるので恐らく投手戦になる。守備でミスをしなければ勝てる。健闘を祈る」
しかし監督の『投手戦』予想はあっさりと外れた。
クリーンヒットで出た1番・佐々田を皮切りに村山・中西(俺)が連打。4番田無馨の満塁弾で一気に4点先制。これで火が付いた加美打線は奈町の誇るエース・軽沢敏葵をボコボコに打ちまくり、48―0で3回コールト勝ち。弱小加美打線に滅茶苦茶に打ち込まれた軽沢は一人寂しく悔し涙を流していた。
まあ当たり前だろ。
田無にナックルをレフトスタンドまで運ばれると、中野に自慢の高速スライダーを左中間に持ってかれ、俺に片手でカーブをホームランにされ、村山に楽々セーフティバントを決められ、暴投、一塁エラー、死球、挙句の果てに野比に渾身の直球を場外に放り込まれ降板。
58球の悲劇であった。しかし野比に打たれるとは思ってなかったらしく、奈町ナインは唖然とし、監督はビックリして目薬をさして確認していた。野比はこの試合5打数5安打10打点1本塁打2盗塁の大暴れで、田無と共に打点の3割を稼ぎ出し、3盗を楽々決めていた。矢垣則生監督は呆然としている。
まあこんな訳で奈町に大勝した加美高は波に乗り、奇跡的に組めた大阪桐蔭との練習試合で18―0のボロ勝ち、更には山本とやって65―1と打ちまくり、加美ナインは大騒ぎ。しかし無理矢理突っ込んだ練習試合だけに疲労は並大抵の物ではなく、秋の大会直前一週間我ら加美高の選手達は筋肉痛と疲労で休養する事になりました。