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レアチーズケーキ・2

あれから少し街をブラブラしてからファーストフードでお昼を食べて。

ショッピングセンターで買い物をして帰ってきた。

どこを歩いてもなんだかすれ違う人が振り返って恥ずかしくって凄く疲れた気がした。

ハルトさんは、なんにも気にならなかったみたいで。

今はキッチンで何かを作っていた。

「何を作っているんですか?」

「お菓子」

「お菓子って色々あるじゃないですか」

「レアチーズケーキ」

「でも、これ林檎ですよね」

「林檎のコンポート」

「それじゃ、林檎のレアチーズケーキなんですね。ハルトさんって林檎好きですよね」

「べ、別に」

うふふ。今、少し動揺した。お婆ちゃんの言ってた通りだ。

女の子の髪の毛を勝手に切った罰です。

昨日の夜、お婆ちゃんと寝る時にお喋りしながらハルトさんの事を教えてもらたの。

「林檎入りのレアチーズケーキかぁ。白くってスベスベで柔らかくって林檎の香りがして美味しそうですね」

クリームチーズが入っているボールを覗き込みながら言うとハルトさんが手を止めて私を睨みつけた。

「雫、婆さんに何か言われただろう」

「別に」

「却下」

ハルトさんがそう言ったと思ったら冷蔵庫から何かを取り出して林檎の入った鍋に注ぎ出した。

「な、何を入れたんですか?」

「赤ワイン」

「白くなくなちゃった。そう言えばハルトさんは何でカプセルを赤ワインに入れて飲むんですか?」

「あのカプセルは血の代用品だ水に入れれば血液と同じ様になるが、そんな物をゴクゴク飲まれたら気持ち良いか?」

「うげぇ、ゴメンなさい無理です」

「冗談だ、ただ俺がワインが好きなだけだ」

「意地悪」

「お前もな」

うぅ、やっぱりハルトさんには敵わない……

ハルトさんはコンポートを作っている間にビスキュイ生地を焼き上げてしまった。

隣で見ているととっても手際が良かった。

「どこで料理を覚えたんですか?」

「世界中、色んな場所で」

答えになってないけれどそれが本当なのかもしれない。

ハルトさんは何百年も世界を回っているのだから。

それに私はハルトさんが料理をするのを見ているだけで楽しかった。

林檎のコンポート2個分を8等分にして、3個分をピューレにしてから鍋に入れて温めてゼラチンを溶かしている。

「見ているならこれを人肌に冷ましてくれ」

「えっ、良いんですかお手伝いして」

「構わない」

私がピューレを冷ましている間にハルトさんはクリームチーズをホィッパーでクリーム状にしていた。

その中に少しずつ冷ましたピューレを合わせていく。

今度は生クリームを少量の砂糖を入れて6分立てにした。

「生クリームはどうするんですか?」

「クリームチーズとあわせて型に流すだけだ」

型にビスキュイ生地を敷き詰めて半分くらいチーズの生地を流し込んで、8等分にカットしたコンポートを綺麗に輪になるように並べてその上に残りの生地を流し込んで冷蔵庫に入れた。


すると今度は、コンポートの煮汁に赤ワインを入れて煮詰め出した。

「今度は何を作るんですか?」

「ソースだ、林檎の赤ワインソース」

しばらくするといい匂いが部屋に立ち込めた。

ハルトさんは片づけを済ませてリビングのソファーに倒れこむように座った。

「紅茶飲みますか?」

「ああ」

私が紅茶を入れて2人で飲み始めると、ハルトさんはカップをテーブルに置いてソファーで眠り始めてしまった。

ハルトさんの寝顔って凄く可愛んだ。

私は髪を切った事などすっかり忘れていた。


夕方になり私の家には雪乃ちゃん、奈々枝ちゃん、ミコちゃんが来てて。ハルトさんはキッチンで紅茶を入れていた。

何でこんな事になっているかと言うと。

ハルトさんの寝顔を見ながら私も寝てしまい、何かの電子音で目が覚めたの。

私が目を覚ますとハルトさんは先に起きて何かを弄っていたの。

「なんの音ですか?」

「携帯の目覚ましだ」

「どこかへ行くんですか?」

「雫と一緒に学校へ、あいつ等に元気な姿見せないと心配しているだろうからな」

「へぇ? あっ! はい!」

ハルトさんの車で学校に向かい下校してくる雪乃チャン達を私は校門で待っている。

なんだか周りの視線が怖かった。

みんなが遠巻きに私を見ている気がした。

雪乃ちゃんを見つけて小さく手を振ると不思議な顔をして近づいてきた。

「も、もしかして雫なの?」

「そうだよ」

「えっーー!」

雪乃ちゃんの絶叫が校舎にこだました。

「どこかの雑誌のモデルさんかと思っちゃった。凄く可愛いよ、めちゃ似合ってる」

「そ、そんなに驚くほどなの?」

「うん、びっくり」

しばらくすると奈々枝ちゃんとミコちゃんがお喋りをしながら歩いてきた。

雪乃ちゃんに言われた通り何も言わないで小さく手を振ると怪訝そうな顔をしていた。

「奈々枝ちゃん、ミコちゃん。無視しないで」

「へぇ? 雫?」

溜まらずに声をかけると奈々枝ちゃんは雪乃ちゃんと変らない反応だった。

ミコちゃんは唖然として口をパクパクしていた。

そんな事があってハルトさんの車に乗って家に皆で帰ってきたの。

「もう、みんな酷いよ。1日で私の顔を忘れちゃうんだから」

「酷いのはどっちだか、1日でそんなにイメージチェンジしてモデルさんみたいになったのは誰?」

「うぅ、奈々枝ちゃん。仕方が無いじゃん、ハルトさんに無理矢理美容院に連れて行かれたんだから」

「それで、無理矢理服も買ってもらってデートしてたんだ。私達は心配してたのに」

「雪乃ちゃんの意地悪……」

「でも、雫たん。今の方が似合ってるよ。大人ぽいし」

「ミコちゃんまで」

何でこんなに責められないといけないんだろう、全部ハルトさんの所為なのに。

「で、私達になんか一言無いのかな?」

「ゴメンなさい、心配かけて」

「仕方が無いか、許してあげよう。月城先生も元気になったみたいだしね」

そんな事を話しているとハルトさんが紅茶を入れて運んで来てくれた。


それは、アップルティーとあのチーズケーキだった。

「これは、先生からのお詫びのしるしだ。心配かけてすまなかったな」

「うわぁ、こんなアップルティー飲んだ事が無い、凄くいい香り」

奈々枝ちゃん驚きすぎ。

でも本当に良い香りがして美味しいかも。

「先生、このケーキは何のケーキですか?」

「これは、赤ワインと林檎のレアチーズケーキだよ。ソースは赤ワインと林檎のソースだ」

「このケーキも美味しいよ。ミコもたべてみな」

「うん、本当に美味しい」

「本当に、奈々枝とミコは仲が良いよね」

「何を言ってるかな雪乃も雫もみんな仲がいいじゃん」

ハルトさんを見ると嬉しそうに優しい視線で私達を見ていた。

いつまでもこんな幸せが続いたらいいな。



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