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鉛色
鉛色の空が広がっていた。
眼下には街が広がり、その先には蒼い海がどこまでも続いている。
「ここはどこだ?」
見渡してもここがどこなのか判らなかった。
冷たい北風が背中から吹き抜けていく。
ザワザワと背の高い葦のような草が生い茂り。
真綿で出来たような、亜麻色と言えば良いのだろうか。
背の高い草から穂が出ていて北風に揺れている。
その先には田んぼだろうか、畦で囲まれていて水が溜まっている。
恐らく稲を刈った後に水が溜まったのだろう。
眼下の畑と田の間の細い道で数人の女の子が言い争っている。
どこかの高校の生徒なのだろう一人は道にしゃがみ込み、その周りで数人が騒いでいる。
騒いでいるというより、一方的にしゃがみ込んでいる女の子に罵声を浴びせて鞄の中の物を道にぶちまけていた。
「俺には関係ない……」
そう思った瞬間、どこからなんとも言えない様な香りがする。
思わず喉が鳴った。
自分でもはっとして我に返る、未だにこの感覚が残っているのかと。
振り返り、この高台の公園まで来たときの車に乗り込み車を出した。
なぜか彼女の事が気になり始めていた。