奥様と私といろいろ
旦那様と私といろいろの続きのようなものです。
ベットに伏せブツブツと呟く女性。
「…やれば出来る、大丈夫……」
この女性こそ、私がお仕えするお嬢…奥様マリア・カーディ様で御座います。
長年の片思いを実らせ、ジュデ・カーディ国軍将軍様に嫁がれた、私の主人兼幼なじみのお方です。
もともと私はマリア様のご実家である、男爵家に母と共に仕えておりました。その際に年が近いからと言う理由で、私が7歳お嬢様が6歳の時にお嬢様付きメイド兼遊び相手になったのが最初のお顔合わせになりました。
そのころからお嬢様はすでに旦那様にメロメロになられておりました。なんでも、国主催のお祭りの際に将軍様に助けられたとか?暇さえあれば昔から旦那様のすばらしさはよくお話になりますが、出会いについてお嬢様はあまりお喋りになりません。
その時にあまり思い出したくない出来事があったとお伺いしていますが…。
こちらのお家にはご子息様のアルフ様、ジェイ様がいらっしゃいます。お嬢様が嫁がれた際にはぎこちない様子もありましたが、一人娘になりますユリア様がお生まれになってからは、皆様仲良く過ごされております。
…ああ、そういえばお一人少し残念な方もおりますが。
誰とは言いません、誰とは。
例をあげれば、お嬢様の足下が滑って危ないからと抱き上げては怒られ、お嬢様の笑顔が余りにも可愛らしかったのを誤魔化すために、私が丹誠込めて結い上げた御髪を崩しお嬢様に怒られ、義理とは言え母とは呼べず名前を呼び捨てにしては怒られ…あげればきりがない、そんな一方的に愛情を送り全く気づかれていらっしゃらないお方のお名前は、旦那様のの次男ジェイ様と申します。
…ああ、言わないつもりが言ってしまいましたわ、別にあの方にいい加減イライラしたという訳では御座いません。けっして。
そんなジェイ様は今日もめげずに、マリア様に間違いではないが正解でもない優しさを捧げていらっしゃるのです。
言葉で愛してるとは言えないあたりが、町ではやりのへたれなるものにみえますが。
その優しさが今の奥様の状態を招いてしまった訳ですが。
「奥様…」
「嫌がらせ?違うわ、愛は世界を救うんだもの、うふふ」
「奥様、落ち着いて下さいませ」
「今日の嫌がらせは凄いのよ、私旦那様に頑張ると言った手前、誠心誠意挑んだけれど駄目だったの。もう、もう…」
そう仰ると奥様はまたベットに伏してしまわれました。
…なにを今日はなされたのでしょう。
おそらくこの奥様の状態を見た旦那様にジェイ様はお叱りを受けるんでしょう。
奥様はあまり理解していない部分もありますが、旦那様は奥様を目一杯愛されております。
既にご息女のユリア様がいらっしゃるので言うことはないと思うのですが、旦那様一直線で今まで過ごされた奥様には、まだまだ不安に思う部分があるようで時折暗い顔をなさってます。
そんな奥様も全て愛している、と旦那様は私に仰いますが、私ではなく奥様に言って下さい。面と向かって言えないのであればジェイ様と同じ…げふんげふん。
そう言うと旦那様はにこにことお笑いになります。
私はあの笑顔があまり好ましく無いので仕事に戻ります。
そうして私は今日も奥様を慰め、ささいな出来事を拝見し仕事に励むのです。