二話 求婚
「……求婚? 私にですか?」
「あぁ、書状にもハッキリと『シルヴィア』と書かれている。それも、ルディントン侯爵家の嫡男から、だ」
父がニコニコと微笑みながら書状を渡してきた。確かにそこには、モニカではなく私の名前が書いてあった。
____けれど、理由がわからない。
だって、ルディントン侯爵家の方とお話しした記憶なんて、私にはないもの。
「……何かの間違いではないでしょうか。こんな身分の方がモニカではなく、私に求婚だなんて……」
私が困惑しながらもそう告げると、モニカが少し拗ねたような表情で私に話しかけてきた。
「もう、姉さんは自信が無さすぎよ! でもすごいわ、侯爵家の跡継ぎの方から求婚だなんて!」
「モニカはこの方を知らないの?」
「私? えーと、名前は……セオドア様というのね。私の記憶ではお話ししたことはないわ」
モニカと間違えているのでは、と思ったけれど……。人の顔と名前をすぐに覚える彼女がそういうのなら、本当なのだろう。
それでもまだ信じられない私に、母がほっとしたような表情で告げた。
「よかったわねぇ、シルヴィア。モニカではなくあなたにこんな縁談が来るなんて、びっくりだわ。もちろん、受けるわよね?」
「え……」
……母に悪気はないのだろう。けれど、その言葉からは確かな安堵と圧が伝わってきて……。
「……はい、私、この方と結婚いたします」
____私は、大人しく頷くことしか出来なかった。
それに、ほんの少しだけ期待していたのだ。
だって、初めてだったから。
モニカではなく、わざわざ私の方を選んでくれた人なんて、今までいなかった。
だから、これからはモニカと比較されることなく幸せになれるんじゃないかって……。
私もモニカのように愛されることを、一人静かに祈っていたのである。




