0-1 『ヤケ酒』
ピコン!
メッセージアプリの通知音に、微睡む意識が引き戻される。
ある日の休日は、カーテンの隙間から覗く日差しが心地よい、昼下がりのことだった。
こんな時間に一体誰だろうかと思いつつも、いや今はまだ昼間の筈だったと思い直して、重い瞼を持ち上げ、すっかり根の張った身体を起こした。
そうして覗き込んだ、机上に置いた開きっぱなしにしていたノートパソコンの画面には、よくよく見知った、けれども久方ぶりに見る名前が表示されていた。
「ん、梢?」
瞼を擦りながら開いたメッセージの内容は、
『ヤケ酒』
と、シンプルな三文字だけが綴られた短いもの。しかし、
「あー……」
そういうことか、と俺は事態を飲み込んだ。
メッセージを送って来た相手、幼馴染で腐れ縁の木埜下梢は、折に触れて自分のことを呼び出す。中でもこの『ヤケ酒』の文言だけで送って来る時は、文字通りの内容ではあるのだが、徹夜だろうか梯子だろうかと、それなりの覚悟をこちらも決めなければならない。
とは言え、
『いつでも』
俺の方も別段、それが嫌な訳でもなくて。
何を思うでもなくそれだけ短く返して、あとは向こうから仔細が届くのを待つのだった。
「ふわぁ、ぁ……」
大きく伸びをして一気に覚醒を促しつつ、スマホを手に、前回のヤケ酒からどれくらいの期間が空いていただろかと遡る。
「あれは……うわ、十ヶ月も前なのか」
口にして、そういえばと思う。
今は十月。前回呼び出されたのは、寒い寒い、大粒の雪が降る日だった。
(――さて、どっちだろうな)
今回の要件は、思い当たるものの内、どちらだろうか。
或いは全く異なる、新しい内容での呼び出し、ということも、こと梢にいたっては有りそうなものではあるが、はたして――。




