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恋をするなら腐れ縁  作者: 名無しの権兵衛
序章 『恋をするなら』
1/4

0-1 『ヤケ酒』

 ピコン!


 メッセージアプリの通知音に、微睡(まどろ)む意識が引き戻される。

 ある日の休日は、カーテンの隙間から覗く日差しが心地よい、昼下がりのことだった。


 こんな時間に一体誰だろうかと思いつつも、いや今はまだ昼間の筈だったと思い直して、重い瞼を持ち上げ、すっかり根の張った身体を起こした。

 そうして覗き込んだ、机上に置いた開きっぱなしにしていたノートパソコンの画面には、よくよく見知った、けれども久方ぶりに見る名前が表示されていた。


「ん、(こずえ)?」


 瞼を擦りながら開いたメッセージの内容は、


『ヤケ酒』


 と、シンプルな三文字だけが綴られた短いもの。しかし、


「あー……」


 そういうことか、と俺は事態を飲み込んだ。

 メッセージを送って来た相手、幼馴染で腐れ縁の木埜下(きのした)梢は、折に触れて自分のことを呼び出す。中でもこの『ヤケ酒』の文言だけで送って来る時は、文字通りの内容ではあるのだが、徹夜だろうか梯子だろうかと、それなりの覚悟をこちらも決めなければならない。


 とは言え、


『いつでも』


 俺の方も別段、それが嫌な訳でもなくて。

 何を思うでもなくそれだけ短く返して、あとは向こうから仔細が届くのを待つのだった。


「ふわぁ、ぁ……」


 大きく伸びをして一気に覚醒を促しつつ、スマホを手に、前回のヤケ酒からどれくらいの期間が空いていただろかと遡る。


「あれは……うわ、十ヶ月も前なのか」


 口にして、そういえばと思う。

 今は十月。前回呼び出されたのは、寒い寒い、大粒の雪が降る日だった。


(――さて、どっちだろうな)


 今回の要件は、思い当たるものの内、どちらだろうか。

 或いは全く異なる、新しい内容での呼び出し、ということも、こと梢にいたっては有りそうなものではあるが、はたして――。


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