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第11話 わたしの時間。
買う日が来た。
正確には、“買う話をする日”。
現金一括は無理だと分かっていたから、父に相談した。
父は最初、驚いた顔をした。
でも、すぐに“分かった”顔になる。
たぶん、父は私の時間の変化に、とっくに気づいていた。
「欲しい時計があるんだ」
私が言うと、父は「見せて」と言った。
そして一緒に、時計店に行った。
父が店のベルを鳴らすのは、なんだか妙に新鮮だった。
店長は父を見るなり、にこっと笑った。
「お帰りなさい」
父は少し照れたみたいに「どうも」と言う。
そのやり取りだけで、私は胸が温かくなる。
私は、例の時計を指さした。
白い文字盤。グレーのベルト。
NOMOS Club Campus 36。
父はしばらく見て、「いいね」と言った。
短いのに、ちゃんと重い言葉。
ローンの説明を聞くと、私は頭がこんがらがった。
でも父が横で、必要なところだけ確認してくれる。
私は、その背中に甘えた。
「ローン、残るの?」
買ったのに、終わりじゃない。
むしろ、ここからが始まりだ。
【登場時計ミニ紹介】
・NOMOS Club Campus 36:カジュアルな機械式。色や針のアクセントが柔らかく、制服にも私服にも合わせやすい。




