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第10話 それぞれの時間。
バイトを続ける理由が、少し変わった。
修理代のためじゃなくて、
“自分の時計”のため。
でも、その言葉を口に出すのは、まだ恥ずかしい。
店の片付けをしながら、三人で駄弁る時間が増えた。
時計の話だけじゃない。
テストの話、体育の話、コンビニの新作、先生の口癖。
どうでもいいことで笑って、時計で真顔になる。
いとが言う。
「時計ってさ、結局、生活の中にあるんだよね」
ひよりが頷く。
「だから、似合うのが一番」
私はその二人を見て、少しだけ思う。
同じ“時計好き”でも、熱量も方向も違う。
それでいい。
違うから面白い。
ある日、いとが自分の腕時計を少しだけ持ち上げた。
「これさ、私、バイトして買ったんだ」
さらっと言う。
自慢じゃなくて、事実の報告みたいに。
私は思わず「すごい」と言ってしまう。
いとは笑う。
「うん、がんばった」
ひよりが小さく言う。
「私も、がんばってる人、好き」
いとの頬が少し赤くなる。
「……それ、照れる」
私はその二人を見て、笑った。
三人の時間は、同じ速さじゃない。
でも、同じ店で回っている。
【登場時計ミニ紹介】
・SEIKOPresage:レディース寄りの小ぶりケース(約30mm)もあり、機械式の入門として選びやすい。




