4 連絡
眠い目を擦りながら寝室を出ると、相変わらずの目の毒な光景が広がっていた。白いタンクトップに白いショートパンツ。白い太ももが眩しい。
「おはようございます。よく眠れましたか?」
最高に可愛いセイレーンが僕に笑顔を向ける。
あの状況で眠れるわけがない。眠れる事は出来なかったけど、レネの柔らかさを充分に堪能できました。
「まあ、よく眠れたよ」
嘘です。
「よかったです」
レネの笑顔が夏の太陽以上に眩しい。こんな笑顔を向けられて、その上あんな甘美な経験もさせてもらえたんだから、眠れないくらいどうって事ない。
レネは朝からオムレツを焼いていた。ここは孤島の割に、電気もガスも通っている。
綺麗に焼いたオムレツを皿に盛る。うん、焦げもなくうまく焼けています。
レネは冷蔵庫からケチャップを取り出す。それでハートマークとか描いてくれないかなぁ、と思っていると、
「きゃあ」
容器を強く掴みすぎたのか、中身がとびだしてレネの顔にかかる。
「あーあ」
言いながら、僕はレネの顔にかかったケチャップをティッシュで拭いてあげる。ちょっとくすぐったそうにしているレネが可愛い。
「すみません」
少し赤くなっているのも可愛い。
それから二人でオムレツを食べる。濃すぎない、自然で優しいレネの味はいくらでも食べられる。
「食欲もあるようで嬉しいです」
自分の事のように喜んでくれるレネ。その笑顔を見るともっと僕は嬉しくなるよ。
そんなレネの笑顔をずっと見ていたくて、なるべく時間をかけてオムレツを食べる。永遠に食べていられる方法が何か無いかなぁ。
そうは言っても永遠んい食べている事は出来ないので、名残惜しいながらも食べ終わってしまう。
レネがお皿の片付けなどをする中、僕はスマートフォンを眺める。今まで無視していた訳ではないが、メッセージアプリには様々なメッセージが送られて来ている。
『これを見たら連絡くれ』
『無事だと信じてる』
『皆んなが心配している』
等のメッセージ。あまり実感はなかったけど、僕を心配してくれる人は少なくないんだ。
当然、僕の両親からもメッセージがある。それも毎日。
僕が無事である事を信じているんだろう。そう考えると涙が出そうになる。
そもそも、ニュースなどで行方不明とだけ言われているだけだろうから、僕が無事なのかどうかも分かっていないだろう。もしかしたら大規模な捜索活動なんかもされているかもしれない。
であるならば、無事である事くらいは知らせておいた方がいいのかも。
「皆さん心配してると思いますよ」
レネの優しい声。僕は黙って頷いて、メッセージを書く。
『皆さん、心配かけてごめんなさい。僕は無事です。ある親切な人に助けられて、お世話になっています。だから、心配しないで下さい』
いつ帰るとか、どう帰るとかは後で考えよう。とにかく、僕が無事である事を知らせて安心させたい。
「あ、そうだ」
僕は思い立って、レネと一緒の写真を撮る。写真があった方が安心出来るだろう。
うむ。いい写真が撮れた。少し戸惑い気味でピースするレネが可愛い。待ち受けにしようかな。レネの格好はちょっと刺激が強いかもしれないけど、レネはどう撮っても刺激が強いのでこれでいいだろう。
そう思いつつ写真をメッセージと共に送信。
・・・ちょっと待てよ。
何かが引っ掛かり、送信を止めようと思ったがもう遅い。
そこから鬼のようにメッセージが返って来る。
『誰?』
『誰?』
『遭難してたんじゃないのか?』
『そういう店?』
『すごい美人』
『心配かけといてこれかよ』
『帰って来たら覚えとけよ』
『ヤったの?』
『おっぱい見せて』
怖くなってスマートフォンを閉じる。未だに受信を示す振動が止まらない。
そう、薄着の女性とベッドに腰掛けている場面——まるで情事の後みたいじゃないか!それを自慢しているみたいに・・・
そして両親からのメッセージ。
『帰って来たら、お話があります』
ぎこちなくレネの顔を見る。
「皆さん安心していましたか?」
「少なくとも、心配はしてないみたい」
やっぱり帰るのもうちょっと後にしようかな。身の危険を感じる。




