表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セイレーンと漂流Days  作者: みつつきつきまる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/53

35 責任とって下さい


「おいしいですねぇ〜」


 レネはテーブルに山と積まれたドーナツを頬張っている。


 粉砂糖がまぶされたものや、チョコレートのかかったもの、生クリームが挟まったものなど様々な種類のドーナツが揃えられている。僕が朝から作ったんだけどね。


 昨日海で遊び疲れて一眠りしている時に、水着姿のレネが甘いものを食べたそうな寝言を言ったので張り切って作ってみたが、レネは朝からしっかりと糖分を摂取している。


 ちなみに今は、いつものタンクトップにショートパンツ。あの刺激的な水着姿ではない。また今度着てもらおう。


「よかった。やっぱり甘いものが食べたかったんだね。そんな寝言言ってたからさ」


 僕は言って、コーヒーを飲む。僕は甘いものは作るけども、あまり食べない。


 レネの食べる姿を見るだけでお腹いっぱい。


「そんな・・・そんな寝言を言っていたとは、恥ずかしいです・・・」


 そんな事を言ってドーナツで顔を隠すレネ。全然隠れてないですよ。


 それに、それよりも恥ずかしい、それよりも甘い事を言って、僕の頬に唇攻めしてきた事を僕は忘れない。レネは覚えていないだろうけども。


 心の思い出アルバムに刻み込まれました。


 ちなみに昨日のシャワールームでの一件もしっかり刻み込まれてます。


 どちらもいろいろあったけどいい思い出。


 ・・・何か、思い出を心に刻み込み始めてるような気がするな。もう時間が残り少ないって事を自覚しているのかもしれない。


 時間が来たら——夏休みが終わったら、僕は自分の世界?国?に帰る事になるのだろうか。そうしたらレネは?またこの島で一人?


 僕はまだレネと一緒にいたいけど、レネはどう思っているのだろうか。案外、さっさと帰れと思ってたりして。


「ふわふわで甘くて美味しいです〜ショウさんにはずっと側で作っていて貰いたいです〜」


 おっと。少なくとも甘いもの担当として側にいる事は許された模様。僕もその役割だけだったとしても嬉しい。


 だったら何らかの理由でここに留まらざるを得なかった場合、レネの専属のパティシエとして働くのも悪くない。


 毎日甘い物を食べてもらって、距離の縮まった二人の間にはいつしか愛が芽生えて——なんて、妄想するのは自由だよね。


「でも、ショウさんにいつも甘い物を食べさせてもらっているので、太ってしまわないか心配です。太って美味しくなって、ショウさんに食べられてしまいます」


「その言い方は何かなぁ・・・」


 誤解を生みそうな言い方。


 そもそも、セイレーンは人を食べるのかという話から始まり、弱っているよりも元気な方が美味しいのではないかという理由から、レネは僕を元気に、美味しくして食べようとしている。という設定。


 実際にセイレーンは人を食べないらしいけど、レネはそう言って僕の体調を戻させてくれた。


 ところが今はレネを美味しくしようとしてるなんてね。僕が作るものをいつもニコニコと平らげるから、無理もない話かもしれないけど。


 でも太ってるって言うのは女の子にしてみては大事件かも。


「レネ、太ったの?」


 我ながらなんてデリカシーの無い事を言う。水着姿を見る限り、太った感じはしないからだけど。


 レネはさほど気にした様子もなく、


「少し太ったような気がします。胸がなんだかキツいです」


 まだ成長してるんだ。その胸。リンさんとセラさんに教えてあげないと。


「こんなに美味しいからいけないんです。ショウさんのせいです。責任とってください」

 

 責任って言ったって。ダイエット付き合えって意味かな。


「責任を取って、ずっと私に甘い物を作って下さい」


「それじゃ何の意味もないよ」


 ははっと笑う僕。


 そう出来たらいいんだけどね。 





「今日はお仕事に行きます」


「お仕事?」


 ドーナツも食べ終わり、クリームや粉砂糖のついたレネの口元をハンカチで拭ってあげていると、レネがそんな事を言い出した。


「セイレーンにも仕事があるんだ」


 知らなかった。レネはいつも家にいて、水浴びしたり昼寝したり、おやつを食べたりとスローライフを楽しんでいるので、仕事とは無縁だと思っていた。だけど、考えてみれば仕事もせずにどうやって生計を立てているのか。確かに疑問ではあった。


「ありますよ。お仕事。毎日ではないですけど、時折呼ばれます。最近は翼の調子が悪かったので出来ていませんでしたけど」


「もう翼は治ったの?」


 レネの翼は海に投げ出された僕を助けるため、ボロボロになってしまっていた。


「はい。もうすっかり良くなりました」


 言うとレネは得意げに翼を広げる。シンクに置いてあった鍋に翼の先があたり、床に落ちて大きな音を立てる。


 だからここで広げちゃダメだって。


 レネは床でくわんくわんしている鍋を眺めて、翼をしまった。


 被害が鍋だけでよかった、と言っておこう。


 僕とレネは顔を見合わせて笑う。


「で、仕事で翼を使うんだ。どこかに行くの?」


「はい。遠くの島まで。私が行けない間はリン達が代わりに行ってくれていたのですが、どうしても私が行かないといけない仕事もありまして」


 レネがいかなければならない仕事。何だろう。レネご指名なのかな。まさか、いかがわしい仕事じゃないよね。


「この後リン達と向かうのですが、ショウさんも一緒に行きませんか?」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ