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03

 帰りの馬車の中で、僕は両親に彼女…サマンサ嬢がどうなるかとても気になって尋ねると、逆に彼女が好きな事を問い詰められてしまい、しぶしぶそうだと白状(返事)した。


 両親はやはり…とつぶやくと、そても残念そうな顔を僕にした。


「まさかとは思ったけれど、ヒューゴが興味を持った令嬢はリンゼイ侯爵家のご息女だったとはね。」


「リンゼイ侯爵家はなにか問題があるのですか?」


「リンゼイ侯爵家自体に問題があるわけではないよ、ただ、リンゼイ侯爵家の領地はライツァッスル、昔はルーカッスルとも呼ばれていた場所さ。北部運河の河口(洋梨の右側のくぼみの上)から南に下ったところにある港町を中心とした領地(洋梨の右側のくぼみの下)で。北部運河…そして運河沿いの街道が整備されるまでは王国東側の主要港の一つだった。今も港として活用されているし栄えていない訳ではないけれど、運河ができたことで港としての需要(価値)が揺らいでしまったことは否定できない。昔のこととは言えその原因であるコリンズ公爵家に好意的かは難しい所だ。サマンサ嬢も自家や自領の歴史は深く学ぶだろうからね。」


「…もしかしたらコリンズ公爵家(僕たち)を恨みに思っているかもしれないって事ですか?」


 父上は少し困った顔で頷いた。


「といってもあちらも中央の歴史ある…直接の婚姻・降嫁はないとはいえ王家の血がそれなりに流れる…貴族だ。表立って不快な態度を取られることはないだろう、ただ遠い昔のことではあるけれどそういった過去がある事は覚えておきなさい。最もそれはリンゼイ侯爵家相手に限った事ではない。特に学院に通う時にはね。」


 そして、軽く咳をすると僕の目をじっと見ながら話をつづけた。


「それからヒューゴいいかい?しっかりよく聞いておくれ。今日のパーティーの目的であるアンソニー王子の側近候補と婚約者選びの事だが、恐らくリンゼイ侯爵家のサマンサ嬢がアンソニー殿下の婚約者となられるだろう。」


「ブライス公爵家の双子のご令嬢の方の…たしかガブリエラ嬢でしたっけ、その彼女ではないのですか?」


 僕は驚いて思わずそう尋ねてしまった。


「えーとなんて言えばいいかな。ブライス公爵のガブリエラ嬢はアンソニー殿下とは従兄妹同士になるから、血が近くなってしまう事が懸念されるからね。」


「でも、父上。……王家の血は濃い方が良いのではないですか?」


「うーん…そういう場合もあるけれど、ヒューゴも大人になればわかるさ。」


 と父上は困った顔をしなたら僕の頭を撫でて言った。これ以上聞いてもどうしようもない事を悟った僕はこのことについて尋ねる事をあきらめた。きっと僕の顔はとても不貞腐れていただろう。


「ごめんな、ヒューゴ。こればかりはどうしようもない事なんだ。その、それに…サマンサ嬢はアンソニー殿下に好意を持っている様だしね。」


 言い淀みながらもはっきりと言った父上の言葉に、とうとう僕の涙腺は決壊した。



              ◇◇◇◇◇◇◇◇



 王宮で行われたパーティー(顔合わせ会)から数日後、王都のコリンズ公爵家のタウンハウス(王都別邸)に滞在していた両親と僕は、王家からの使者を迎えていた。


 なんでもアンソニー王子の友達として、ひいては将来の側近候補として出仕しないかという誘いだった。アンソニー王子はサマンサ嬢との婚約が調い次第、王太子となられるらしい。というのも4歳年下の弟殿下がそろそろ公務に参加なされる…といっても公式行事に姿を見せる程度からである…為、二人の間に余計な争いが起こらないように後継者として定め、婚約者と傍仕え(将来の王妃と側近)を選定し共に教育を施していくのだそうだ。


 婚約者がサマンサ嬢(中央貴族東端の令嬢)に決まったことで、派閥や各貴族家の権勢を踏まえてアンソニー王子の将来の側近候補(お友だち候補)を現在選定しているのだそうだが、ブライス公爵家の双子の兄であるガブリエル令息が「なんだかめんどくさいから」と言って側近候補を辞退したため、同じ公爵家であるヒューゴ()にはどうしても受けて欲しいようだった。


 複雑な気持ちを隠せない僕に父は


「ヒューゴ、断っても構わないんだよ?ブライス公爵家が断ったのならコリンズ公爵家(ウチ)が断ったって誰にも文句は言わせないさ。」


 と、僕の両肩を手でつかみしっかりと目を見ながら穏やかに話してくれた。

 けれど僕は、悩みながらもしっかりと答えた。


「いえ、僕はこのお話を受けます。アンソニー王子殿下…いえ将来の王と王妃になられる方を、公爵家の嫡男としてしっかり支えたいと思います。」


 父上も母上もちょっと困った顔をしたが、少しでも良いからサマンサ嬢を傍で見ていたかったし、彼女が笑顔になれる様に努力し支える気持ちに嘘偽りはないからだ。


 あの、素直で真面目で気遣いの出来る彼女を、裏表のある世界にたった一人で向かわせるのはとても胸が苦しかったからだ。彼女が臨んだ場所で彼女には笑顔でいて欲しい、そもそも僕と彼女の家はあまり関係が良いとは言えない、けれどこういう形でなら彼女を支えることに難しい顔をする人はいないだろう。たとえ彼女が僕に振り向く事は無くても。




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