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王太子殿下から婚約破棄された侯爵令嬢は小公爵様の愛に応えたいようです?09(後日談完結)

 コリンズ小公爵の結婚式から一年。


 王都では長らく病に臥せっていた第一王子アンソニー殿下が王太子の座を退(しりぞ)き、王位継承権を返上し王都から離れた静かな地で本格的な療養生活に入る事が発表された。


 ここ数年、アンソニー殿下が公の場に出席したことはなく、既にほとんどの公務を弟殿下が執り行っていたこともあってさして混乱もなく受け入れられた。


 弟殿下の立太子の儀ではなく王嗣宣明の儀(おうしせんめいのぎ)…これはアンソニー殿下が病で王太子の座を退いたとはいえ廃太子された訳ではない事と、突発的な事象による病やあるいは事故や怪我などによってさらに王太子の変更を余儀なくされる可能性を捨てきる事が出来ず、何度も王太子の変更(立太子)を行う事を避けた結果、弟殿下の王嗣宣明つまり王位継承権第一位であることを公に明らかにするだけにとどまったのである…が行われることになり、貴族をはじめとした王国中の人々がその様子の見物や祭りに参加しようと王都を訪れた。


 そしてその儀式(公式行事)への参加の為に数年ぶりにコリンズ小公爵夫妻が領地を出て王都に来ることになり、庶民街では…特に小公爵夫人であるサマンサ夫人に世話になった者達は湧き立った。


 彼女は王都で過ごしていた頃に、ムクロジという植物の実を使った簡易石鹸で平民・庶民街の衛生環境を引き上げ、それによって病や怪我の重篤化を防ぐことになり、重篤化や死亡者の減少に貢献した。そのことを身をもって体験した者が数多くいる。


 その為、彼らは王都にやってきた彼女がまた庶民街の衛生環境の向上(その事業)に携わってくれるのだと期待していたが、彼女は首を横に振り、その事業はこれまで通り王妃殿下と弟殿下の婚約者に任せたままで儀式(公式行事)が終わると領地へ帰っていった。


 人々は残念に思ったが、彼女は今は領地の人たちへ、自分たちが支援されたように支援していると知って彼女の活躍の成功を祈った。


 今では王都の様々な治療施設の庭には必ずと言っていいほどムクロジの若木が生えている。最近は治療施設以外でもその木を植え始める平民が増えてきているそうだ。


 一つの木に雄花と雌花が支えあうように咲き、やがて実を結ぶ。それは領地で仲睦まじく暮らし、そして領主夫妻として領民の暮らしを豊かにした二人に倣い、かつてサマンサ夫人が普及に努めたそのムクロジの木をバルチェスター王国では夫婦の木として末永く愛されることになった。





                 後日談END



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