後日談:王太子殿下から婚約破棄された侯爵令嬢は小公爵様の愛に応えたいようです?01(サマンサ視点)
「ひ、姫様ぁ、お待ちくださいませぇー!」
礼儀正しくメイド服を着た私は、大きなお屋敷の片隅にある用具室からホウキとはたきとちりとりを持って颯爽と廊下を歩いていると、後ろからメイドの大先輩であるマーサさんが私に向かって何やら叫んでおられます。
マーサさんはこのお屋敷に大変長く仕えていて、現在の小公爵様であるヒューゴ様や御父上の公爵様のおしめを取り換えていらっしゃったとか。それもあってかヒューゴ様や公爵様もこの方の事をばあやと呼び、信を置いていらっしゃいますわ。
「さすがにその頃にはもうお乳なんて出なかったですからねえ、乳母は別の者がお役を務めておりましたが、夜中明け方昼日中と時をかまわずお泣きになった坊ちゃまを何度あやしたことか。」
と懐かしそうにお話になる姿を見て、私もより一層頑張らねばと気が引き締まる思いです。
「マーサさん、私は王女でもなんでもないのですから、お姫様ではありませんわ。」
「ぼ、坊ちゃまの特別なお方なのですからっ、その、将来は公爵家の奥の方になられる…ハア…坊ちゃまは姫様を放っておいて何をなさっているんだか。マァ、それはともかくとして、姫様は姫様です!」
息せききりながら話されるマーサさんに、途中の言葉は聞かなかったことにして、私は若干頬を赤らめながら、そんなに急いで走って何かあったのかしら?と視線をそらし、いえまあその…ともごもごと答えるのでした…。
学院の卒業祝賀会で許婚であったアンソニー殿下から婚約破棄を言い渡されたのが約二ヵ月程前。このコリンズ公爵家の領地屋敷に到着してから一ヶ月と少し。コリンズ公爵家の嫡男であられるヒューゴ様からは「ここでしばらく自由に過ごしてくれて構わない。」とおっしゃられたので、かつて耳にしたムクロジ交易の交易商人が言っていた言葉を思い出し「働かざる者食うべからず」という事で、現在メイド見習い(自称)として私サマンサは頑張っていますわ!
「ですから姫様、坊ちゃまはそういう意味でおっしゃられたのではないと思いますよ!」
あ、勿論、到着してすぐは移動疲れがありましたので…二週間と少しの馬車旅なんて生まれて初めての経験でしたわ!…ですので恐縮はしましたけどゆっくりと休ませていただきました。
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