幕間1 ルイの手紙
本作では、遠隔地に連絡する手段――いわゆる通信技術の類がまったく存在しないほどの文明水準ではありません。
とはいえ、それらの通信技術を利用できる人々は限られています。
……というわけで、ルイは手紙を出すしかないのです(`・ω・´)
親愛なるヨシュアへ――
元気にしているかい?
僕は、異国――エテルナ王国で元気にやっているつもりだ。
やっと身分が固まったから、手紙を出すことにした。
まずは、ごめん。
親友の君にさえ、何も告げずに国を出たことを申し訳なく思う。
言い訳にしかならないけれども――
さすがの僕も、破門を言い渡された時には目の前が真っ暗になった。
そのまま、国に居られない気がして、飛び出してしまった。
破門を言い渡された時の、大司教様のお言葉は、今でも残っている。
『君は、この教団に居て良い人間ではない。』
その意味を、かみ砕いて教えていただけることはなかったけれど――
そして、気づいてみれば、海を渡り切っていて、頭を抱えた。
海を越えた先に、伝手があるわけでもないし。
僧兵としての訓練はつけられていたから、冒険者にでもなろうと思った。
淡々と、机に向かう仕事をするには伝手がない。
荒事の経験を活かして、体制の正規の兵士に志願する――気にはならなかった。
異国の体制に、骨を埋めてしまう覚悟なんてないからね。
――ああ、仕事と言えば。
冒険者ギルド街の武器屋を手伝って、武器の価値を語って値切りを食い止めた。
値切るなんて信じられないような良品だったから、つい。
そのあと、販売させてもらえなくなったけど……
そういうわけだから、販売員もできそうにないや。
ギルドの受付職員の人は、冒険者として一線を退いたら、職員として営業をやってほしいなんて――たぶん、冗談で言ってたけど。
閑話休題――
そんなこんなで、エテルナ冒険者ギルドに仮登録して半月。
正式に階位をもらえた。
そして、明日から他の冒険者の人と一緒に仕事をすることになった。
だけど、限られた時間で、誰かに連絡しておこうと思った。
父母か、君か、迷ったけどね。
情けないけど、父母にはなんて書いていいのかわからないから。
もう少し、時間が欲しい。
それでも、何とか生きていることだけは伝えたかった。
だから、君にだけでも便りを書くことにした。
今度、君に会えるのはいつになるのかな。
偶然にも依頼があって、それにかこつけて帰れる――なんてことあるのかな。
そんな、都合のいいことはきっと、ないと思うけれど……
それでも、僕は僕でなんとかやっていくから。
君も、元気でいて欲しいな。
明日からも大変そうだから。
とりあえず、生存報告だけで許してほしい。
また、落ち着いて手紙を出せるときに、きちんと近況報告するから。
ルイ
ルイは感心ですな。
作者なら、翌日の準備が最優先で、手紙など書かないでしょうな(`・ω・´)