第7話 冒険者登録の完了
階位に金属が使われているので、無粋な注釈をひとつ。
金属・元素など、物理科学に属する話題は、現実世界に準拠しておきます。
まじめに考えれば、異世界の物理法則が現実世界と同じ保証はありませんが――
物理法則から組み上げたら作者が発狂しますので(`・ω・´)
わずかの間、ギルドの受付は静まり返った。
――やがて、ルナークは口を開いた。
「それでは、正式な登録の証として、ルイくんの階位を伝えましょう。」
ルナークの言葉を受けて、ルイは首をかしげた。
「冒険者にも、階位ってあるんだ。」
「……まあ、勉強不足を咎めるのはやめておきましょう……」
ルナークが苦笑すると、ルイは口を尖らせた。
「仕方ないじゃん。とりあえず、生計立てなきゃって思ったんだから。」
「ええ、計画を立てられる状態ではなかった、と。」
ルナークは相槌を打ち、それから続けた。
「――まあ、すこしは権限に差がありますが、主に依頼の割り当て基準です。」
「ふーん……それで、ボクの階位は?」
ルイがたずねると、ルナークは緑色の札を取り出して、言った。
「青銅の第三位とすることになりました。」
ルイは、緑色の札を受け取ってうなずいた。
「青銅の第三位、ね。でも、この札は青銅製じゃないんだね?」
ルイが軽口をたたくと、ルナークは苦笑した。
「それでは、黄金を冠すると純金製の札を用意することになりますからね。」
「あはは、もったいない上、身の危険を感じちゃうね。」
ルイはケラケラと笑って、それからたずねた。
「ちなみに、ボクはどのあたりに位置づけられてるの?」
「十二階位の中で、下から数えて四番目です。」
ルナークがそう言うと、ルイは言った。
「4×3ってところかな?――まさか、2×6じゃないよね?」
「ええ。4×3です。四の方は黒鉄、青銅、白銀、黄金。それらで計十二位。」
ルナークが答えると、ルイは何度かうなずいた。
「卑金属から貴金属に変わっていく、って理解しておいて大丈夫?」
「ええ、問題ありません。」
満足そうにうなずくルイに、ルナークはポンと手を叩いて、言った。
「ちなみに、白金階位もありますので、あることだけ知っておいてください。」
ルナークの言葉に、ルイは首をかしげた。
「どういうこと?」
「大雑把には、体制側の人の掛け持ち枠――つまり、後付けの非正規枠です。」
ルイは苦笑した。
「知らずに揉め事を起こさないように、ってことだね。」
「ええ。まあ、ある種の名誉階位みたいなものですよ。」
ルナークはそう言って、それから苦笑混じりに続けた。
「ちなみに、大きな分類の中での昇格・降格は、月一の実績評価で決まります。」
「ふーん……」
ルイは、見るからに気のない相槌を打っていた。
その様子に肩をすくめて、ルナークは言った。
「なお、大きな分類の降格は、中長期的な活動空白がある場合のみです。」
ルナークの言葉に、ルイは首をかしげた。
「懲罰的な降格はないの?」
「そこが、階層構造を持った組織との違い、つまり、立場が秩序に直接的な影響を与える場合との違いです。」
ルナークが肩をすくめると、ルイは苦笑した。
「――ところで、ボクが青銅の第三位になった根拠を、聞いてもいいのかな?」
「五芒星教団の元司祭ということで、黒鉄の第一位以上は決まっていました。その上で、リックくんからの報告を受けて上申、承認が下りたと。」
ルナークの言葉に、ルイは口を尖らせた。
「五芒星教団の元司祭だってこと、関係あるじゃん。」
「課題を免除する理由にはならない、と言っただけです。」
ルナークが苦笑すると、ルイはうなずいた。
「そういうことかぁ……ちなみに、最初から白銀階位、ってことはある?」
「ぼくが知る限りでは、リックくんだけです。」
ルナークがそう言うと、リックはせき込み、ルイは意外そうにリックを見た。
「え、意外。」
「ルイ?……君、僕のことをわりと、舐めてない?」
リックがジト目でルイを見ると、ルイは言った。
「ボクより格上なのはわかってるけど……リック君って、実はすごい人なの?」
「いいえ。基礎能力に加えて統率能力が水準以上だっただけです。」
ルナークの言葉に、リックはボソッと言った。
「いいえ、って言うなよ。いいえ、って……」
そんなリックの言葉を流して、ルイはルナークにたずねた。
「統率能力……ってどういうこと?」
「青銅階位までは、編成を前提とした依頼を割り振りませんから。」
ルナークがそう言うと、ルイは首をかしげた。
「え?好きに他の冒険者と組んじゃダメなの?」
ルイの言葉を受けて、ルナークは肩をすくめた。
「誤解させましたね。――まあ、そこは明日から実践を交えて説明します。」
「えっ?」
ルイが目を丸くすると、ルナークは微笑した。
「明日からは、白銀の冒険者と組んでもらいますよ。こちらで手配しますが。」
「えっ、ちょっと……」
見るからに困惑した様子のルイに、ルナークは言った。
「理屈で教わるより、実践した方が手っ取り早いですから。」
「いや、こっちにも心の準備ってものが。」
ルイが口を尖らせるが、ルナークはうなずいた。
「大丈夫ですよ。死なないことに全力を注いでいれば。」
「いや、それ大丈夫って言わないからね!?」
悲鳴を上げたルイに、ルナークは首をかしげた。
「三つ以上の階位の冒険者と組むのですから。戦力になるはずがありません。」
「だったらやめてっ!?」
ルナークはニッコリと笑った。
「大丈夫です。最初はみんな、使い物にならないものですよ。」
「だから、大丈夫じゃないんだって……」
ルイはこめかみを押さえた。
無事、ルイのチュートリアルを完了できました。
次は、ルイの実地研修です(`・ω・´)