第38話 頭脳派二人の意趣返し
何とか続きを書いております。
前回は、地の利を活かした小鬼のやらしさ。
今回は、それにお怒りの頭脳派二人によるやらしい立ち回りをどうぞ(`・ω・´)
居並ぶ数十体の小鬼と、一体だけ見られる人間の大人相当の個体――
それらを前にして、セルヴァはようやく口を開いた。
「ウィル君、ルイ君、じゃあ、冷静さの担当をよろしく。」
セルヴァの言葉に、ルイが返した。
「いやいや……冷静さ担当って……」
「君たちに仮眠を取ってもらっていてよかったよ、本当に。」
ルイの返しを意に介さず、淡々とセルヴァは言った。
そして、ウィルが恐る恐る尋ねた。
「セルヴァ、もしかして……頭に来てるか?」
ウィルの言葉に、セルヴァは声を低くした。
「もしかして?――それは当然だよ。」
一拍置いて、セルヴァは続けた。
「こっちは、完璧にしてやられたわけだからね。見事な作戦だよ。わかっていても乗るしかない。朝まで待つしかない。本当に、見事だったよ。」
「――で、どうするわけ?」
ルイが努めて淡々と尋ねると、セルヴァは隣のアルトに目配せした。
そして、アルトが頷いてルイに答えた。
「オレとセルヴァで突っ込むよ。」
アルトの言葉に、ルイが声を上げた。
「そんなの無茶ですよ!?」
「どちらにしても、向こうには弓を扱う個体もいるみたいだからね。」
セルヴァの言葉を受けて、ルイは小鬼たちに目をやった。
そして、弓を構える5体の小鬼の姿を認めた。
「――つまり、セルヴァ君の中級魔法で先制はできない、ってことだね。」
ルイが肩をすくめると、セルヴァが頷いた。
「そういうことだよ。――だとすると、まずやるべきことは射手を除くこと。」
「そのためには、素早く切り込めるヤツが突っ込む、ってこと。」
アルトが補足して、セルヴァが不敵に笑った。
「僕は、中級魔法を軸に戦術を組み立てていないよ。――何より、そんな運用だと青銅の第一位になるまで生き残れやしないから。」
「でも、あの大きいのはどうする気だ?」
ウィルが尋ねると、セルヴァが言った。
「君たちに任せるよ。他の小鬼よりは脅威度は高そうだけど、変異種でもなさそうだから、一対一なら順当勝ちの相手だと思う。」
「じゃあ、オレとルイであいつを相手にするってこと?」
ウィルの言葉に、ルイは首を横に振った。
「臨機応変に対応すればいいと思うな。指揮官を倒しても、残りの小鬼が逃げると決まってるわけじゃなさそうだし。」
「あっ、確かにそうだよな。」
ウィルがポンと手を叩いた。
そして、ルイはふわっと笑って言った。
「要するに、アルトさんとセルヴァ君で切り崩す。できるだけ早く、射手を除く。でも、基本方針は地道に殲滅していく、と。」
ルイの言葉を受けて、セルヴァが頷いた。
「そうだね。邪魔になるようなら君たちで抑えておいてほしいな。」
「わかったよ。」
ルイがそう言って、ウィルが無言でうなずいた。
不意に、セルヴァが前方に手を突き出した。
「――『尖風の投杖』」
光を帯びて可視化された風が、収束してゆく。
細めの柱ほどの太さに収束したそれが射出され、小鬼たちの群れの並びを崩した。
「やっぱり、下級魔法の詠唱を省略しても威力は出せないね。仕留めた手応えがない。――ま、こけおどしには十分だろうけれども。」
セルヴァがニヤリと笑うと、ルイが言った。
「え、セルヴァ君、下級魔法の詠唱も省略できたの……?」
「いや?これが初めてだけど?」
セルヴァがこともなげに言うと、ルイはジト目をセルヴァに向けた。
「なんでこんな状況でぶっつけ本番なのさ……」
「まあ、冷静さを手放してよければ、試せることもあるし。――ダメでもともと、成功すれば安定しなくても相手は警戒するしかない、ってね。」
セルヴァが頷くと、アルトが肩をすくめた。
「悪いやつだよなぁ。」
「問題はないよ。バレた頃には向こうは死んでいるから。」
肩をすくめた後、セルヴァは言った。
「それじゃあ、アルトさんと僕は先行するよ。二人は二人の判断で動いてよ。」
「そういうこと。――あんまり足踏みしてると、出番が残ってないかもな?」
アルトがニヤリと笑ってみせた。
そして、セルヴァと並んで小鬼の群れに突き進んだ。
そのすぐ後に、ルイが言った。
「ウィル君、少しだけボクを守ってくれる?――飛んでくる矢から。」
「――おう、任せろ!」
ウィルが片手剣を抜くと、ルイは片手を突き出した。
そして、声を張って詠唱を始めた。
――遍く光よ映し出せ、仲立つ風、災禍の招来――
――一つの杖、曲がることなき一つの道――
そこまでを詠唱したときに、5本の矢がルイに降り注いだ。
そのうち3本をウィルが斬り払った。
ルイは詠唱を中断して、残る2本の矢を躱した。
それから、槍を手に取って、ウィルと互いに頷き合った。
そして、二人は先行したアルトとセルヴァに続いて、地面を蹴った。
アルトに斬り伏せられた小鬼の断末魔が響き渡った。
「じゃあ、今度は通るかな――?」
前方に走りながらルイは詠唱を始めた。
――舞い踊れ遍く光、仕える火、災禍の招来――
――一条の帯、疾く走る火、這い寄る禍――
――集え、立て、奔れ――
ルイに矢が飛んでくることはなかった。
「――『走火』!」
敵陣に向かって、炎が地面を走った。
敵対関係において、こけおどしは立派な駆け引きです。
セルヴァも冒険者――ぶっつけ本番、あえて危険を冒してナンボの生業。
そして、「いるだけでやらしい作戦」の元祖ルイ。
相手が竜だろうが、小鬼だろうが、頭を使うことに手は抜きません(`・ω・´)




