第36話 休養明けて、戦況変わる
さて、二日間の休みを終えて、ルイたちは前線に復帰しました。
いい加減に、戦況よ変われ。
変わらないと、いつまでも悪だくみばかりで進んでしまう(`・ω・´)
ウィルが森の中で周囲を見渡していた。
それから、頭上も見上げた後、ルイたちに向き直った。
「今のところは、問題ないぜ。」
ウィルがそう言うと、ルイたちはうなずいた。
ルイは、前方を見やりながら苦笑した。
「……この二日で、ここまで状況が変わるなんて。」
ルイの視線の先には、小さな天幕と四名の人影があった。
セルヴァが肩をすくめて応えた。
「四日間は予定通りに進めた。だけど、それは小鬼の抵抗があまりにも小さかった結果だね。」
セルヴァの言葉に、アルトが息を吐いた。
「ああ、いつまでも続くわけがないよ――って、後付けでわかったようなことならいえるんだけどね。」
「そうだね。――そして、この距離なら。」
セルヴァがルイと同じ方向を見て、それから肩をすくめて続けた。
「すぐに、最前線を助けに行けるってわけだね。」
「状況はどうだ?」
後方から声をかけたヒューズに、アルトが振り返って首を横に振った。
「最前線も止まったままで、ここから見ても小鬼の姿はありません。」
「わかった。引き続き頼む。――横と後ろを警戒してやってくれ。」
アルトがうなずくと、ヒューズは踵を返して後退した。
そして、ウィルが指を指して言った。
「みんな、向こうで小鬼が動いてるぞ?4、5体くらいかな。」
ウィルの言葉に、セルヴァが応えた。
「どうやら、僕らも狙われているらしい。同じく4、5体。」
「オレとウィルで前の集団を、セルヴァとルイで残りを頼むよ。」
アルトはそう言うと、ウィルの肩を叩いて駆けだした。
ウィルも一拍遅れて、アルトに続いた。
その様子を見送りながら、セルヴァは肩をすくめた。
「――やれやれ、狂犬というよりあれだと――まあ、余計なお世話だね。」
「それより、どうするの?ボクが前でセルヴァ君が後ろ?」
ルイが槍を手にして自分たちに向かってくる集団を睨みながら言った。
すると、セルヴァは黙ってルイの隣に立った。
「――え?」
ルイがキョトンとしてセルヴァの顔を見ると、セルヴァは苦笑した。
「魔法の使い手を固定砲台とでも思ってないかな?ルイ君だって、移動しながらの詠唱くらいするだろう?」
「いや、得物ないじゃん。」
ルイがそう言うと、セルヴァはニヤリと笑った。
そして、刻印が所狭しと刻まれた鋼の旋棍を左手に握ってみせた。
「冒険者の身だからね。護身用の体術くらいは心得ているよ。」
セルヴァの旋棍を見たルイは、呆れ気味に言った。
「いや、それでどうやって戦うのかまるで想像がつかないんだけど?」
「まあ、そこは見てのお楽しみってことで。」
それから、セルヴァは小鬼たちの方を向いて言った。
「それじゃあ、やろうか。」
「わかった。」
ルイが槍を構えて、セルヴァが軽快にその場で足踏みを始めた。
すると、五体の小鬼が横一列になって駆けてきた。
「来るなっ!」
ルイが大きく槍を振り回すと、三体の小鬼はのけ反った。
そして、両端にいた小鬼がそれぞれルイの両側面から飛び掛かった。
「『炸光』」
小鬼の片方が中空で小さな爆発を受けて吹き飛ばされた。
一拍遅れて、セルヴァがルイと、もう片方の小鬼との間に割って入った。
セルヴァは旋棍で小鬼が振り下ろした棍棒を受け止めた後、回転させて小鬼の手を打った。
手を打たれた小鬼が棍棒を取り落とし、慌てて棍棒を拾おうとした小鬼の頭頂に、セルヴァの手の平がかざされた。
「さて、少し残酷な気もするけど――『火球』」
小鬼の頭頂で、火の球が爆ぜた。
小鬼がその場に膝から崩れ落ちた。
動揺する小鬼のうち中央に立っていた一体の胸部を、ルイがその槍で貫き通した。
セルヴァが地面を蹴った。
小鬼は目の前に迫ったセルヴァに棍棒を振るうが、例によって旋棍に阻まれた。
そして、セルヴァは右手の指を二本伸ばし、小鬼を斬るように振るった。
「――『風刃』」
光を帯びて刃の形で可視化された風が小鬼の上半身を斜めに切り裂いた。
小鬼は、その場に崩れ落ちた。
最後の一体が、ルイに突き進んだが、石突きで棍棒を叩き落とされた。
ルイは、柄を握る手の位置を入れ替えると、下から上に小鬼を切り裂いた。
その後、刃物を持ったルイが、すべての小鬼に確実に止めを刺した。
セルヴァがルイに言った。
「お疲れ様。」
「――え、旋棍って防具なの?」
ルイが首をかしげると、セルヴァは肩をすくめた。
「立派な打突武器ではあるけどね。僕が防御に特化して運用しているだけ。」
「で、わざわざ近接戦のフリをして詠唱を省いた初等魔法……」
ルイがジト目でセルヴァを見ると、セルヴァは苦笑した。
「人聞きが悪いな……近接戦闘でも立ち回れるように訓練したんだよ。」
それから、セルヴァは一息置いて続けた。
「まあ、制御性の悪い初等黒魔法は、結果的に精度が上がるとはいえるけどね。」
「なるほどねえ……まあ、初等魔法の詠唱を省けないボクにはできないけど。」
ルイがそう言って肩をすくめると、ウィルの声が聞こえてきた。
「おーい!無事かー?」
「――向こうも無事に終わったようだね。」
セルヴァがそう言うと、周囲を一瞥してうなずいた。
ルイは、ウィルとアルトに手を振っていた。
セルヴァ、まさかのトンファー。
たしか、トンファーを使う魔法アタッカーも記憶のどこかにはいたはずです。
(多分、妄想ではないはずです。)
いや、それはいいのです――盾として使うな、盾として(`・ω・´)




