第34話 残された過去と今の仲間
思いがけない再会ってあります。
この場合、元王国軍兵士が現王国軍兵士と再会することがどの程度、思いがけないことかという話ではありますが(`・ω・´)
ルイとウィルとセルヴァは、突然目の前に現れたマリウスに困惑していた。
アルトは苦笑して、ルイたちに顔を向けながら言った。
「紹介するよ。こいつはマリウス。オレが兵士だった時代の同期で――同じ部隊の生き残りなんだ。」
アルトの言葉に、ルイが目を丸くした。
「生き残り……?」
「おいっ、アルト。」
マリウスがアルトを肘で小突くと、アルトは首を横に振った。
「大丈夫だから。――で、お前にも紹介しておくよ。オレの冒険者仲間で、右からセルヴァ、ウィル、ルイだよ。」
アルトがそう言うと、ルイたちはかわるがわるマリウスに名乗った。
「セルヴァです。よろしくお願いします。」
「ウィルっていうんだ。よろしくな!」
「ルイといいます。よろしくお願いします。マリウスさん。」
ルイたちに応えて、マリウスはうなずいた。
「あぁ……マリウスだ。よろしく。」
そして、マリウスはアルトに向き直って言った。
「それにしても、お前が冒険者になっていたなんてな。……もう、あの時のことは折り合いがついたのか?」
「そんなわけないだろ。――ただ、じっとし続けていられなかっただけだよ。」
アルトが苦笑すると、マリウスはため息をついた。
「はぁ……俺とお前くらいだよ、あれが初陣だった同期の中で、今も荒事がらみで仕事してるのは。」
「そうだな。……オレも全員と連絡を取り合ってるわけじゃないけど。思い出してしまうから、会うのも辛いってやつも中にはいたし。」
アルトが頭を振ると、マリウスは肩をすくめた。
「――まあ、あの直後に一番滅入ってたのはお前だったけどな。」
「……本当に、感謝してるよ。オレを心配して、何回も会いに来てくれたよな。」
アルトが微笑すると、マリウスはニヤリと笑った。
「そこは、あの体験を共有した同期のよしみってやつだよ。」
「なんでもいいよ。オレにとってはあの時の支えになったのは確かなんだから。」
アルトが肩をすくめると、マリウスは言った。
「――そういえば、冒険者っていってたけど、どれくらいの階位なんだ?」
「青銅の第一位――まあ、中堅どころだよ。」
アルトの言葉に、マリウスは微笑した。
「そいつはいいな。――俺も四、五人くらいは部下を持ってる立場だよ。」
「おめでとう――でいいのかな?……で、こんなところで喋っていていいのか?」
アルトがそうたずねると、マリウスは首を横に振った。
「もちろん、上司に見られたら叱られるよ。――ま、お前の姿を見つけたからな。つい話に来たけど、今から部下や上司と打ち合わせなんだ。」
「そっか。――じゃあ、作戦が終わった時にお互いに生きてたら会おうぜ。」
アルトがそう言うと、マリウスは黙ってニヤリと笑ってうなずいた。
そして、ルイたちに言った。
「――アルトのこと、頼むよ。」
マリウスは、その返事を待たずに、ルイたちに背を向けると走っていった。
その後ろ姿を見送ったアルトは、ルイたちの方を向いて、頬をかいた。
「あー……その、あんまり見られたくないところを見られちゃったな。」
どこか気まずそうに言うアルトに、セルヴァが切り返した。
「察して余りある内容だったけど、野暮な詮索はしないよ。――まあ、話をしたくなれば聞くよ。」
「ははっ、そうしてくれると助かるよ。」
苦笑するアルトに、ルイとウィルは言葉を探していたのか、曖昧にうなずいた。
二人の様子を見て、セルヴァは息を吐くと肩をすくめた。
「ただの狂信的な向こう見ずってだけで、狂犬の渾名がついていたわけじゃない――ってことだね。」
セルヴァの言葉に、アルトは首を横に振った。
「うーん、それとこれとは関係ないかな?――オレが、キリル先生の役に立ちたい理由や動機はね。」
「……そう願うよ。キリル先生のためにもね。」
セルヴァがそう言うと、ルイが口を開いた。
「――そういうことだったんですね。あの時の言葉は。」
「あっ……」
アルトはルイを見ながら気まずそうに絶句した。
すると、ルイは言った。
「確かに、アルトさんと比べると頼りないのは認めますけど――自分の身くらいは自分で守りますからね?」
ルイが微笑すると、ウィルも頭の後ろに手を組んで言った。
「そうそう、オレたちが簡単にやられるわけないだろ。」
「いや、ウィル?本当に、わかってていってる?」
アルトがそうたずねると、ウィルは口を尖らせた。
「ひっでえ!オレのこと、バカだと思ってない!?」
「そこまでは思ってないけど……ね。」
アルトが苦笑しながらセルヴァの方を見ると、セルヴァは不敵に笑った。
「やれやれ、僕も君と同じ青銅の第一位。――舐めてもらっては困るね。」
「いや、キミに対してそういう心配はしてないよ。」
アルトがそう言うと、セルヴァは肩をすくめた。
「そいつは光栄だね。――とはいえ、先走ったり、抱え込んだりしないようにしてもらいたいものだね。」
「ははっ、そっちは保証できないな。」
笑って返したアルトに、セルヴァは言った。
「やれやれ。――まあ、心にもない相槌を打たれるよりは、正直な方が好ましい。一緒に動く限りは、そのつもりでいることにするよ。」
「そこは頼りにしてる。――いや、頼りにさせてもらうよ。」
そして、ルイとウィルにも微笑を向けて、アルトは言った。
「明日は早いからね。ゆっくり休もうか。」
生存者の罪悪感――そんな記号づけは下世話でしょうな(`・ω・´)
やむにやまれぬことへの理解は、受け止めるための余白であれば、それでよろしいのです。
王国軍に残ったマリウス、残らなかったけど別の道を歩いているアルト。
彼らが他人とつながって生きている――それで十分かと。




