第33話 覇気と熱意と喧騒と
さてさて、治療術で体力を回復しながら無事にたどり着きました。
まだ、作戦は始まったばかり。
比較的、小鬼と遭遇しにくい段階だったのかもしれません(`・ω・´)
ルイたちは天幕の中で座っていた。
落ち着かない様子のアルトと、目を閉じて沈黙するセルヴァが対照的だった。
ルイは、ウィルに話しかけた。
「ねえ、ウィル君。――王国軍の指揮官さんは働き者なんだね。」
「そうだな。てっきり、リックみたいに座ってると思ったんだけどな。」
ウィルがそう返すと、ルイはうなずいた。
「うん。本当にね。――いつまで待てばいいんだろう。」
「もう夕方だし、そろそろ帰ってくるんじゃないか?」
そんな話をしていると、天幕の外から声がかかった。
「エテルナ冒険者ギルドの皆さん。第三部隊長が戻りました。ご案内します。」
「ありがとうございます。」
アルトが返事をして、それからうなずいて立ち上がった。
残りの三人も、アルトに続いて立ち上がった。
四人は天幕の外に出た。
軍服を纏った栗色の髪の青年が、天幕を出たルイたちに一礼すると、背を向けた。
「それでは、ついてきてください。」
「はい。」
ルイたちはアルトを先頭に、軍服の青年に従った。
すぐに、周囲と比べて特別であるとわかる、旗を掲げた天幕にたどり着いた。
そして、青年に続いて天幕の中に入った。
天幕の奥では、鎧を纏ったままの造形が整った金髪の青年が机を見つめていた。
ルイたちの姿に気づくと、爛々と輝く瞳を向けて、声をかけた。
「やあ、ご苦労さま。君たちがエテルナ冒険者ギルドからの伝令だね。」
アルトをはじめとして、まず、ルイたちが名乗った。
それに、エテルナ王国軍の二人が応えた。
金髪の青年はジェイル、栗色の髪の青年はキース――
それぞれ、この場所を本陣とする指揮官と、その副官だった。
互いの名を伝え合った後、アルトは言った。
「こちら、我々の指揮官より預かった進撃計画です。」
「ああ、感謝するよ。本当はこちらから伝令を飛ばすのが筋だろうけれど。」
ジェイルが微笑しながらアルトから丸められた地図を受け取ると、すぐに開いた。
その内容を見て、微かに表情が固まった後、すぐに微笑を湛えた。
「――なるほどね、なかなか慎重な指揮官殿だね。」
ジェイルの言葉に、アルトは苦笑して応えた。
「はい。王国軍ほど、士気が高いとはいえないものですから。」
「他意はない――いや、本音を言えば、もう少し積極的な進撃計画を望んではいるけれども――」
ジェイルはそう言って、それから頭を振った。
「指揮系統が違うことは弁えているつもりだよ。――また、第一部隊の進撃計画を踏まえれば、我々がもう少し足並みを合わせるべきだろうね。」
新しい地図を取り出したジェイルは、三つの×印をつけて、日付を書き込んだ。
その地図をアルトに差し出しながら、ジェイルは苦笑した。
「我々はこう動くことにするよ。最初に伝えた計画よりも消極的だけど、側面や背後を突かれてはかなわない。この地図を指揮官殿に渡してほしい。」
アルトが地図を受け取ると、一礼した。
「承りました。」
アルトがそう言うと、ジェイルは微笑した。
「ただ、指揮系統が違っても、夜の森を走れと追い立てることはしないよ。君たちを待たせていた来客用の天幕で一晩を過ごしてもらいたいな。」
「取り計らいに感謝します。」
一礼したアルトに続いて、他の三人も頭を下げた。
それから、ジェイルはキースに言った。
「キース、彼らを案内してくれ。――それから、食事や寝具の手配も。」
ジェイルの言葉に、キースはうなずいた。
「承知しました。――それでは皆さん、行きましょうか。」
キースに従って、天幕に向かう途中でルイが口を開いた。
「――あの、キースさん……でいいですか?」
「ええ、そう呼んでください。」
キースがそう応えると、ルイは言った。
「本当に、士気が高くていいですね。熱気があると言いますか。」
「ええ、そうですね。」
陽が落ちかけてなお、兵士たちの喧騒はやまなかった。
しかし、それを讃えたルイの言葉に対するキースの反応は鈍かった。
続ける言葉を失ったルイは、そのまま黙ってしまった。
天幕に着くと、キースは周囲を見渡した後、声を落として言った。
「実を言えば、あの地図を運んできてくれて助かりました。」
「――今のは、聞かなかったことにしておきますね。」
アルトが苦笑して首を横に振ると、キースは肩をすくめた。
「そうしていただけると助かります。――よい指揮官をお持ちのようで。」
「うーん……ま、まぁ……いい指揮官……なのかもしれませんね。」
アルトが言い淀む様子にキースは首をかしげて、それから言った。
「後で、食事や寝具などを運ばせます。」
「いろいろと、ありがとうございます。」
アルトが礼を言うと、キースは微笑してうなずいた。
それから、キースは一礼すると踵を返した。
キースの後ろ姿を見送った後、アルトは言った。
「じゃあ、オレたちは天幕の中でくつろごうか。」
ルイたちが互いにうなずいた時、王国軍兵士の一人が走ってきた。
その人物を見て、アルトが息を呑んだ。
「――っ。」
黒髪の少年兵士は、ルイたちの目の前でアルトの手を取った。
「アルト!やっぱり、アルトだろ?久しぶりだな!」
「マリウス――無事だったんだな?」
アルトは、嬉しさと戸惑いの入り混じった表情で、そう言った。
ええ、さすがに毎回、名乗りのために紙面は取りません(ーー;)
名乗りもキャラの個性を見せる大事な場面ではありますが――
主人公まわりの名乗りを何度も繰り返したところで、紙面を圧迫するだけです。
さて、それはそれとして、ここでアルトの過去をもう少しだけ開示です。
ああいうキャラになった理由の説明がつくかどうかは知りませんが(`・ω・´)




