第32話 王国軍部隊の本陣へ
伝令とは言いますが、敵地を横断することになったルイたち……
馬なし、リスクあり、目的地(王国軍部隊の本陣)は大雑把――
まあ、頑張ってもらうしかありませんね(`・ω・´)
ルイたち四人は、森の中を走っていた。
先頭を走るアルトに、ルイとウィルが続いていた。
そして、セルヴァが最後尾を走っていた。
喋る余力を残しながら走っているのか、ルイが口を開いた。
「これって、小鬼と遭遇したらどうするの?」
「隊列通りだよ。オレが切り込むから、ウィルとルイが横を固めてほしいな。」
次に、ルイは後ろに目をやった。
「セルヴァ君は?」
「相手の数によるけど、できるだけ魔法を温存させてほしい。」
セルヴァの言葉にルイが返そうとすると、アルトが長剣に手をかけた。
「前に小鬼が5体いるよ!」
アルトの声で、ルイたちの前を進んでいた5体の小鬼が振り返った。
セルヴァが素早く木の上を含めて、辺りを見渡した。
「――こちらの死角にでも潜んでいない限り、見た通り、5体だけだよ。」
セルヴァが声を張り気味にそう言うと、アルトはうなずいた。
「向こうも移動中だったんだろうね。――じゃあ、一気に片をつけるよ!」
アルトが地面を強く踏み込んで、小鬼の集団に切り込んだ。
一拍遅れてウィルが、そしてルイが詠唱を始めながら続いた。
――舞い踊れ遍く光、仕える火、災禍の招来――
切り込んだ勢いのままに、アルトは小鬼を1体、力任せに両断した。
残った小鬼たちが、4体でアルトに殺到する。
――放縦の一投、炸裂する炎――
返す刃で、アルトはもう1体の小鬼の脇腹から反対の肩口まで斬り上げた。
「――『火球』!」
炎の球が、山なりの軌道を描いて小鬼たちの目の前に投げ込まれ――爆発した。
2体が怯んで足を止めると、ウィルが躍り出て、1体の小鬼を片手剣で斬り伏せた。
怯まなかった1体は、なおもアルトに向かって突き進んだ。
――アルトはその小鬼を蹴り飛ばした。
最後に立っていた小鬼は、アルトの陰からルイが繰り出した槍に胸部を貫かれて、その場に倒れた。
アルトは、蹴り飛ばした小鬼に突き進んで、長剣を突き立てた。
それから周囲を見渡して、アルトは首を横に振った。
「――よし、これで全滅だね。」
* * * * *
時間は、前日まで遡り、本陣の天幕にて――
口笛を止めたリックは、アルトに目をやって微笑した。
「じゃあ、王国軍への伝令の話をしますね。」
リックがそう言うと、アルトはうなずきながらたずねた。
「何を伝えるんだい?」
「僕たちの本陣の位置ですよ――明日以降、三日分の予定を。つまり、この地図を渡せばおしまいです。」
リックは地図を広げてみせた。
その地図を見ながら、セルヴァが眉をひそめて口を挟んだ。
「印の間隔を見ると、ずいぶん消極的な進撃計画だね。しかも、日を追うごとに間隔が狭くなっているけど……」
セルヴァの言葉にリックは苦笑して、別の地図を開いてみせた。
先ほどの地図とは対照的に、間延びした印が打たれた地図だった。
「――いや、この間隔って……」
絶句するアルトに、リックは言った。
「正直なところ、最初は目を疑って、それから頭を抱えました。」
「こんな速さで進み続けるなんて、耐えられるわけないだろ。」
アルトが眉をひそめると、リックはうなずいた。
「そうですね。まあ、そのあたりに口出ししても仕方のないことです。指揮系統が違いますから。」
「……」
アルトが沈黙していると、リックは肩をすくめた。
「子供の使いと思って地図を押し付けてくればいいんですよ。――ただし、絶対に言質を取らせないこと。何を言われても指揮官が判断すると言ってください。」
「それで、大丈夫なのかい?」
神妙な顔でたずねたアルトに、リックは珍しく真顔で答えた。
「妥当と言えない進軍速度には付き合わない――そういうことです。」
「ずいぶんと気まずい役割だなぁ……」
アルトが苦笑すると、リックは肩をすくめた。
「まあ、憎まれ役は引き受けますよ――ルナークとかギルド長とかが。」
アルトがルナークに目をやると、ルナークは微笑した。
* * * * *
ウィルがルイに触れていた手を離した。
「ふうっ……どうだ?ルイ?」
「ありがとう、ウィル君。疲れは十分に取れたよ。」
ルイがウィルに微笑を向ける一方で、セルヴァがアルトに触れていた手を離した。
「こんなところだね。」
「あぁ、助かったよ、セルヴァ。――やっぱり、走り詰めだと疲れるのはどうにもならないからね。」
アルトがそう言うと、セルヴァは苦笑した。
「確かに。これじゃ、まるで高速馬車の馬だね。」
「白魔法で治療されてこき使われる立場に、自分がなると思わなかったなぁ……」
アルトが肩をすくめると、セルヴァはうなずいた。
「――とはいえ、ウィル君も白魔法を使えてよかったよ。」
「初等白魔法だけだけどな。」
ウィルが苦笑すると、セルヴァは首を横に振った。
「体力を回復できるだけで、本当に助かるよ。白魔法、特に治療術は精神的に消耗するからね。」
「へへっ。」
ウィルが照れくさそうに笑うと、アルトは腰を浮かせた。
「それじゃあ、全員の身体の疲れが取れたところでもう一走りしようか。」
その場の全員がうなずき合って、立ち上がった。
そして、再び森の中を走り始めた。
ウィルのサブヒーラー宣言がようやく回収。
そして、セルヴァ、お前もサブヒーラーか。
まあ、便利過ぎるのは問題ですが、配分の問題があるので無双にはなりませんし。
ルイとウィルの魔法の上位互換としてもちょうどいい感じだと思ってます(`・ω・´)




