第30話 奇妙な手応え
SLGとダンジョンRPGの合わせ技みたいな状態(ーー;)
冒険者の個性、フットワークの軽さが一番活かされないパターンですね。
まあ、お付き合いってありますからね(`・ω・´)
――解き放て遍く光、あるがままに、災禍の招来――
セルヴァが高らかに詠唱を始めた。
それに呼応するように、ルイとウィルはアルトの両隣に進み出た。
小鬼たちに動きはなく、ルイたちを見据えていた。
――仇なす万物、表象する雷光、力への渇望――
――臨め、廻れ、集え――
詠唱が進んでも、小鬼たちは最前列のルイたちを見つめて動かない。
――禍の地、幾多の槍、代償たる放縦――
――散れ、降り注げ、打ち砕け――
セルヴァは、小鬼たちがその場に留まっていることを確認して――
「――『降り注ぐ雷』!」
小鬼たちの上方、中空で火花が散った。
頭上を見上げた小鬼たちは、そこで走る電撃に足をすくませた。
やがて、それは雷光のように小鬼たちに降り注いだ。
10体の小鬼のうち、6体がその雷の直撃を受けた。
その6体は、各々が感電したかのように激しく痙攣した。
やがて、そのまま倒れて動かなくなった。
残りの4体が立ち尽くしているうちに、アルトが声を上げた。
「行くよ!逃がさないようにね!」
「お、おう!」
アルトが残った小鬼たちに突き進んだ直後に、ウィルもアルトに続いた。
「えっ!?あ、はいっ!」
それから、さらに一拍遅れて、ルイも前に出た。
残る4体の小鬼たちが身構えた頃には、アルトが踏み込んで長剣を振り下ろす。
1体の小鬼が肩口から反対側の腰まで――いわゆる袈裟斬りのように――斬られて崩れ落ちた。
次の1体をアルトが見下ろすと、その小鬼はそれだけで体を硬直させた。
ウィルがアルトの視線とは反対の方向に立っていた小鬼に片手剣で斬りかかった。
小鬼は、棍棒でウィルの斬撃を捌こうとして打ち合い始めた。
しかし、二合してウィルは小鬼の棍棒を大きく弾くと、そのまま斬り伏せた。
その頃には、アルトに見入られた小鬼は、硬直が解ける前に斬られていた。
3体の味方を失って、ようやく最後の1体が背を向けた。
「逃がさないよっ!」
勢いよく突進したルイが、背を向けた小鬼に後ろから槍を振り下ろした。
背中を深く斬り裂かれた小鬼は、そのまま動かなくなった。
それから、三人で倒れたすべての小鬼たちの死を確定させた。
その後、ルイたちは小鬼たちの亡骸を地面に埋めた。
作業が終わった後に、セルヴァがアルトにたずねた。
「葬る必要はあったのかい?」
すると、アルトはうなずいた。
「こんな森の中に隠れてるんだ。群れの一部だと考えておきたいから。――少しは発見を遅らせたいってわけ。」
「なるほどね。」
セルヴァが相槌を打つと、アルトは続けた。
「あと、ここで野営を張るのに死体と一緒は嫌だよ。」
「そうだよなぁ……」
ウィルが苦笑すると、セルヴァが肩をすくめて言った。
「それじゃあ、総指揮官殿の指示通り、ここで野営にしようか。」
* * * * *
ルイが小さな天幕の中から這い出して来た。
すっかり夜になっていた。
周囲を確かめるためには、微かに差し込む月明かりだけが頼りになっていた。
三人は焚き火を囲んでおり、ウィルがルイに気づいて声をかけた。
「起きたか?ルイ?」
「うん、思ったよりぐっすり眠ってたみたい。」
ルイは、焚き火を囲んだ輪に加わった。
セルヴァが言った。
「よく眠れたならよかった。――これで、夜襲に対して万全の態勢で臨めるよ。」
セルヴァの言葉に、ウィルが眉をひそめた。
「夜に襲ってくることって、あるのか?」
「……小鬼たちの立場に立てば、今は泥棒に入られている状態だからね。できれば追い出したいだろう?」
セルヴァがそう言うと、ウィルはうなずいた。
「そっか。そうだよな。」
「ふぅ……それにしても、一筋縄じゃいかないね。」
セルヴァがため息をつくと、ルイが首をかしげた。
「どういうこと?」
「ほら、僕が詠唱を始めたとき、小鬼たちは反応しなかっただろ?」
セルヴァの言葉に、ルイがハッとした様子で絶句した。
「――あ。」
「さすがルイ君。小鬼を相手にした経験を持ってるだけあるね。」
セルヴァがそう言うと、ウィルがルイにたずねた。
「ルイ、何が引っかかったんだ?」
「小鬼には、魔法を使える個体もいるんだ。――ボクも、そんな個体と直接戦ったことは一度もないけどね。」
ルイが苦笑すると、ウィルは言った。
「え?じゃあ、あいつら魔法を知ってるのに邪魔しにこなかったのか?」
「知ってるのに向かってこなかったのか、彼ら自身は知らなかったか。」
セルヴァが二つの可能性を口にすると、ウィルが唸った。
「ん?……なんかおかしくないか?小鬼は知能があって、これは群れだよな?」
「うん。――だから、ウィル君の言う通り、ボクもおかしいと思う。」
ルイがそう言うと、セルヴァは頭を振った。
「やめておこうか。――僕たちにとって大事なことは、詠唱する際は必ず、味方に安全を確保してもらう――この鉄則を守り続けることだから。」
「でも……まるで、組織的に動いてるような気配がするけど。」
ルイが食い下がると、セルヴァはうなずいた。
「そうだね。ただ、それについては単純明快だね、アルトさん?」
「うん。オレたちのまとめ役に伝えて、それからルナークに伝言しておくだけ。」
アルトがそう言うと、ウィルが首をかしげた。
「アルトさん?片方だけじゃだめなのか?」
「ルナークだけだとまとめ役の人を無視してしまうし、逆だとリックに伝わらないかもしれないからね。」
アルトの説明に、ウィルが相槌を打った。
「そっか。」
そして、話が途切れると、セルヴァは肩をすくめて言った。
「――まずはこの夜を超えて、交代するまでここを守るだけだね。」
戦闘の方は、まだまだ順当勝ち。
作戦も始まったばかりですし、ルイたちもたまたま遭遇しただけですし。
ただ、夜の会話はなかなか難儀なものです。
どこまで行っても、彼らの主観と仮説と想像の域を出ないので。
的中するかもしれないし、考えすぎかもしれないし(`・ω・´)




