第29話 森の中を歩いて
さて、小鬼の巣窟(?)に乗り込むルイたち。
しかも王国軍と共同戦線――でも、扱いは遊撃隊で傭兵ごっこ。
冒険者ギルドって便利な言葉です(`・ω・´)
ルイは高木が生い茂る森の中を歩いていた。
木漏れ日が差し込んできていた。
隣を歩くウィルが、ルイと共に周囲を見渡しながら歩いていた。
二人の後ろを歩いていたセルヴァが、苦笑交じりに言った。
「そこまで警戒しなくても、これだけ開けた視界なら、見てわかると思うよ?」
「いいじゃん、楽しいし!」
ウィルがそう言って気楽そうに笑うと、セルヴァが肩をすくめた。
「――そうはいっても、気を張り過ぎるよりはいいのかな?」
「まだ、小鬼と遭遇することもないだろうね。気楽に行こうよ。」
最前列を務めるアルトが、振り返らずにそう言った。
セルヴァは周囲を見上げながら、独りごちた。
「あの枝の高さは――難しいね。高所からの不意打ちの可能性を無視できない。」
セルヴァの独り言を、アルトが拾った。
「そうだね。――今はまだいいけど、奥に踏み込むほど、警戒が必要になるね。」
「――そういうことなら、今のうちに気を楽にしておこうかな。」
――少しの間、全員が無言で歩き続けた。
やがて、ルイが誰にともなくつぶやいた。
「それにしても――リック君って、総指揮を執っても変わらないなぁ……」
「そうだよな?全体に言うから敬語を使ってた、くらいだし。」
ウィルが相槌を打つと、セルヴァが笑った。
「あはは、彼らしいと言えば彼らしいね。」
「笑いごとじゃないよ……あんなに大雑把な指示でいいのかなぁ……」
ルイが呆れ気味に言うと、アルトが口を挟んだ。
「むしろ、動きやすいし、わかりやすいと思うな。」
「同感だね。僕らは冒険者、あまり細かく言われても軍隊みたいに統制を取れないからね。」
セルヴァの言葉に、アルトはうなずいた。
「そういうこと。――まあ、前線を押し上げる。伝令役になる。補給を担当する。休む。これを持ち回りで、ってすごくうまい指示だと思うよ。」
「むしろ、変わらないから違和感なく受け入れられてる気さえするなぁ……」
セルヴァがアルトに同調すると、ルイが口を尖らせた。
「でも、あんまり頑張るな、って気が抜けちゃうよ。――まあ、リック君が大演説する姿の方が想像できないけど。」
「あはは!そうだな!」
ウィルがケラケラ笑って相槌を打つと、セルヴァが苦笑した。
「あれは彼の独特の言い回しだね。血気に逸るな、功を焦るな、ってこと。」
「だろうね。基本的に、小鬼の討伐は王国の仕事だからね。むしろ、冒険者の活躍なんて期待されてない――かもね。」
アルトがそう返すと、ルイがうなずいた。
「アルトさんがそういうなら、そうなのかもしれませんね。」
「なんで?」
ウィルがすぐにたずねると、ルイが気まずそうに言い淀んだ。
「えっと……」
「――オレ、エテルナ王国の兵士だったんだよ。すぐにやめたけどね。」
アルトが口を添えると、ウィルは驚いたように言った。
「えっ!?そんなの聞いたことなかったけど!?」
「――なるほど。アルトさんが索敵用増幅器を知っていたわけだね。」
ウィルとは対照的に、納得した様子でセルヴァはうなずいた。
そして、アルトは続けた。
「――この作戦の主役はエテルナ王国軍。だけど、リックがああいえば、いつものこととしか思わないからね。」
アルトの言葉に、ルイは唸りながら言った。
「うーん……二人の言葉を聞いてると、リック君が、実は思慮深い人かもしれない気がしてくるんだけど。」
「……ルイ君。実は思慮深いって、それは彼を甘く見過ぎだと思うよ……」
セルヴァはこめかみを押さえて、それから続けた。
「確かに彼は、一見して冗談だけで形成されている男に見えるけど……」
「セルヴァ君もなかなかの言い草だと思うけど?」
切り返すルイの言葉を流して、セルヴァは言った。
「少なくとも、白銀の第一位まで上がっていて、ルナーク君やクラリスさんの隣で当たり前のように仕事している事実があるからね。」
「はぁ……すごいならすごいなりに、もう少し格上っぽく振舞ってほしいよ……」
ルイがため息をつきながらそう言うと、他の三人が同時に応えた。
「「「それはそう。」」」
そして、奇妙な沈黙を挟んで、アルトが言った。
「思ったよりも、早かったね。」
――ルイたちの前方には、十体の小鬼が群れて陣取っていた。
やがて、小鬼たちが、ルイたちの姿に気づいて、一斉に目を向けた。
しかし、小鬼たちは動かなかった。
アルトが小鬼たちを見据えたまま、ウィルに声をかけた。
「ウィル?どう?」
「周りと上を見たけど、あいつらだけだよ、アルトさん。」
ウィルの答えに、セルヴァが応えた。
「それじゃあ、ここは僕に任せてもらっていいかな?」
「ははっ、気合が入ってるなぁ。」
アルトが苦笑交じりに返すと、セルヴァは言った。
「この隊列で、向こうに見た通りの数しかいないなら、一番消耗しない方法を提案しているだけだよ。」
「――ま、リックからは接敵したらそこで止まるように言われてるんだ。そういうことなら、素直に任せるぜ、セルヴァ。」
セルヴァは不敵に笑った。
「任せてよ。――さぁ、人語を解するかどうかは知らないけど、睨めっこはお勧めしないよ?」
戦闘描写がまだないアルトとセルヴァ。
アルトの方が先に出てますが、今回はセルヴァに出番を譲りましょう。
1対1か、1対多か、相性もありますし(`・ω・´)




