第27話 誰かへの憧憬
作劇上は、安心感のための哨戒なんて見栄えしませんが(ーー;)
この期に及んで、地味さを気にしても仕方ありません。
それはそれで、使い道はありますし(`・ω・´)
ルイたちは、エテルナ冒険者ギルドから高速馬車で三日の位置にある山村の哨戒を行うことになった。
山村に到着すると、警備をしていた兵士たちと入れ替わるように引継ぎを行った。
兵士たちが設営していた天幕が、そのままルイたちの活動拠点になった。
天幕には、ルイ、ウィル、アルト、そしてもう一人、薄紫色の髪の長衣の少年が机を囲んでいた。
「――さてと、この場は僕が仕切らせてもらっていいのかな?」
薄紫色の髪の少年がそう言うと、アルトがうなずいた。
「うん。セルヴァが仕切ってくれると助かるなぁ。オレ、仕切るような柄じゃないから。」
「じゃあ、そうさせてもらうよ。ウィル君とルイ君もそれで構わないかな?」
セルヴァが二人にたずねると、ルイとウィルはそれぞれ答えた。
「ボクに異存はないよ。」
「オレも!セルヴァならこういうのも強そうだからな!」
全員の支持を得たセルヴァはうなずいて、言った。
「ありがとう。じゃあ、まずは哨戒の体制を決めようか。」
「ん?二人ずつ、二交替じゃないのか?」
ウィルが首をかしげると、セルヴァはうなずいた。
「素朴に考えればそうだね。――だけど、今回は変則的にしようと思う。」
「え?どういうこと?一人と三人とか?」
ルイがたずねると、セルヴァは微笑して、手の平を覆う程の大きさの鈍色の球体を取り出した。
「実は、ルナーク君からこれを借りてきているんだ。」
「――索敵用の増幅器、だね。」
アルトがそう言うと、セルヴァは相槌を打った。
「そういうこと。」
「……あっ!アレか!レティさんの時の!」
一拍遅れてウィルが声を上げ、ルイが続いた。
「え?本当はそんな大きさだったんだね?」
ルイの問いに、セルヴァは苦笑した。
「僕は比べる対象を知らないけど、これの機能を全員が知っているなら、わざわざ説明する必要はないかな?」
セルヴァは肩をすくめて、それから続けた。
「僕は感応術式に特化しているわけじゃないけど――この村の規模の五倍くらいの距離は把握できるよ。」
「ご、五倍……」
ルイが思わず言葉を失うと、セルヴァは言った。
「ルイ君、驚いてくれるのは悪い気がしないけど、この村の五倍だからね?奇襲を避けるには十分な索敵範囲でも、皆を楽にできるわけじゃないんだ。」
「そうなんだ。」
ルイが相槌を打つと、セルヴァはうなずいて、増幅器に手を触れた。
少しの間、セルヴァは目を閉じていたが――
やがて、目を開いて肩をすくめた。
「――うーん、今のところ、小鬼らしい反応はなし、と。」
セルヴァが苦笑すると、ウィルが言った。
「じゃあ、天幕はオレが面倒見るから、アルトさんとルイで行ってきてよ。」
ウィルの言葉に、セルヴァは微笑した。
「そういうこと。昼は、僕が休んで一人が天幕の防衛。夜は、僕が「これ」で索敵しながら、他二人が警戒して、一人が休む――ってことでどうかな?」
セルヴァがそう言うと、三人はうなずいた。
* * * * *
ウィルに促されて、昼の哨戒を担当することになったルイとアルトは、村の裏手に立っていた。
二人は、遠くを眺めながら注意を払っていたが、何も起こらなかった。
やがて、少し気が緩んだのか、ルイがアルトにたずねた。
「そう言えば、アルトさん?――索敵用増幅器をご存じだったんですね。」
「えっ?あー……うん。実は、エテルナ王国の兵士だったからね。……ま、すぐにやめちゃったんだけど。」
アルトが少しだけ気まずそうな様子で答えると、ルイはうなずいた。
「納得しました。――ボクは五芒星教団、いわゆる拝金教の僧兵だったのですが、索敵用増幅器のことは、つい最近知ったばかりでしたから。」
「へえ!ルイは僧兵だったんだね?」
相槌を打つ、ことさら声を弾ませるアルトに、ルイは苦笑した。
「ええ。わけあって――というよりも、わけもわからず破門されて、今はエテルナ冒険者ギルドのお世話になっています。」
「えっと……ちょっと、返しに困る話はやめてほしいな……」
アルトが苦笑すると、ルイは慌てた様子で言った。
「あ!ごめんなさい!――ボクと似てるなって思ったので、勝手に親近感を持ってましたから。」
「似てる?オレとルイが?」
アルトが首をかしげると、ルイはうなずいた。
「はい。――もちろん、表面的な話なんですけど、アルトさんがキリル先生の役に立ちたいのと、ボクの動機は、人が動機だから同じかな、って。」
「ルイの動機って?」
無邪気にたずねるアルトに、ルイは微笑した。
「いつか、一緒に冒険させてもらいたい人がいるんです。――正直なところ、今の目標はそれだけなんですよ、ボク。」
「……眩しいなぁ。」
アルトがこぼした言葉に、ルイは首をかしげた。
「えっ?」
「――なんでもないよ。」
アルトは瞑目して、頭を振った。
それから、目を開けると、人懐っこい笑顔で言った。
「だったら、ちゃんと生き残らないとね。――死なせないよ。オレの手が届く限りはね。」
アルトの言葉に、ルイは少しだけ引き気味に言った。
「い、いや。そこまで言ってもらわなくても……ボクだって冒険者ですから。」
「ちょっと!?そこで引くかな!?」
悲鳴を上げるアルトに、ルイは吹き出した。
「あはは!ごめんなさい!」
「こ、これでもまじめに言ってたのに……!」
――結局のところ、哨戒は、何事もなく終わった。
警戒対象である小鬼は、その気配が索敵にかかることすらなかった。
数日後に、この山村にエテルナ王国の兵士たちが再配置された。
ルイたちは状況を共有して、引継ぎを済ませた。
そして、エテルナ冒険者ギルドへと報告のために戻った。
今回は、哨戒にかこつけてアルトの過去のほんのり匂わせる回です(`・ω・´)
「薬師に入れ込んで新薬の開発のために傷ついて帰ってくる狂犬」――
みたいなクセのあるキャラクターって、扱いが難しいんですよね……(ーー;)
その点、ウィルや新顔のセルヴァみたいな、癖がなさそうな子は清涼剤です。




