第24話 理不尽の三重奏
理不尽の三重奏――
今まで、ルイが理不尽に晒されなかったことがあったでしょうか……
なかったと思います(`・ω・´)
ルイは、クラリスの目の前で大きく肩を落とした。
受付台に置かれていたのは、大銀貨2枚、中銀貨と小銀貨が1枚ずつだった。
報酬をウィルと半分に分けた結果だった。
「うん、わかってた。わかってたけど、改めて見ると辛い……」
大げさに嘆くルイとは対照的に、ウィルは気楽に笑っていた。
「ま、こんなこともあるって。」
そんな二人に、クラリスがたずねた。
「ねえ、ウィル君、ルイ君。聞いていいかしら?」
「ん?何?クラリスさん。」
ウィルが首をかしげると、クラリスは言った。
「今回、探索したっていう雑木林――小鬼が隠れているかもしれなくても、二日で探索しきれる広さだった?」
「え?あー……それは……」
ウィルが返事に困っていると、ルイが口を開いた。
「理屈の上ではできます。――ボクが慎重になって、ウィル君が付き合ってくれたんです。」
「ルイ……」
ウィルがルイの方を見ると、クラリスがうなずいた。
「ええ、そういうこと。――もちろん、組織だって動く小鬼を知るルイ君の判断は間違ってない。ギルドとしては、いい仕事に感謝しているわ。」
「感謝……ですか。」
ルイがクラリスの言葉尻を拾うと、クラリスは微笑した。
「ええ、あくまでも感謝。あの依頼を受ける冒険者の対応の見立てと比べると――今回の二人の対応は慎重すぎたわ。……丁寧な仕事ではあるけどね。」
「……」
ルイが黙っていると、クラリスは小さくうなずいた。
「ギルドとして依頼を受ける以上、実績から見込まれるよりもいい仕事をするってことで、価格交渉はできないわ。」
それから、一息ついてクラリスは続けた。
「わかってとはいわないわ。わかるべきでもないと思うわ。――けれども、耐えてちょうだい。」
「――はい。わかりました。」
ルイが瞑目してうなずくと、ウィルが横から言った。
「ルイ、無理してないか?」
「――大丈夫。分別くらいはあるつもりだから。」
すると、クラリスが言った。
「慰めになるかどうかはわからないけど、丁寧な仕事を続ける意味はあるわよ。」
「……どういうことですか?」
ルイが首をかしげると、クラリスは微笑した。
「仕事ぶりを気に入ってもらえれば、指名依頼や、ギルドを通さない依頼に繋がるってこと。」
「そうなんですね……え?でも、それってギルドへの貢献になるんですか……?」
ルイの疑問に、クラリスは微笑した。
「報告しておいてくれれば、ギルドへの貢献じゃなくても実績としては扱えるわ。――つまり、昇格の査定には使われるの。」
「よかった……」
ルイがホッとした様子で言うと、クラリスは歯切れ悪く言った。
「ま、まぁ……少なくとも青銅階位で指名は来ないから安心してちょうだい。」
「安心ではないんですが、それは……」
ルイはクラリスをジト目で見たが、クラリスは肩をすくめて、それから言った。
「ねえ?ルナーク君?そろそろ受付も営業終了だから、二人を労って、夕食会でもやらない?」
「いいですね。――それでは、経費で落としましょうか。」
ルナークがそう言うと、ルイはこめかみを押さえた。
「あ、あのねえ……」
「おや、横領ではありませんよ?受付の裁量で動かせるお金がありますから。」
肩をすくめるルナークに、ルイは口を尖らせた。
「いや、気持ちはうれしいんだけど、こんな理由で経費って……」
「あいにくと、ぼくが受付の規則ですから。だから、使い方はぼくが決めます。」
ルイとウィルは揃って頭を抱えた。
すると、ルナークは微笑した。
「まじめに言えば、いい仕事をした冒険者に、報酬で報いられなくても報いる方法を講じられるくらいの制度設計はされているのですよ。」
ルイは、いまひとつ納得いかない様子で唸った。
「うーん……」
「お金は潤滑油。本来ならば価値の交換を滑らかにするための報酬が、軋轢の起点になっては元も子もない――そういうことですよ。」
ルナークの言葉に、ルイは苦笑した。
「ぐぐぐ……まさか、ボクがお金の使い方で説法されるなんて。」
「ルイくんは、もう少し自分を客観視することをお勧めします。」
にべもなく言い切ったルナークに、リックが横から口を出した。
「じゃあ、どこに行く?」
「あれ、きみもついてくるの?」
ルナークの言葉に、リックが哀れを誘うように言った。
「そんなぁ……僕のことも労ってよ、ルナーク。」
「ああっ、もうっ!わかった、わかったから!鬱陶しいからやめて!」
その様子を見ながら、ルイはウィルに言った。
「……仲いいよね、この二人。」
「あぁ……やっぱり、ちょっと納得いかねーけど……」
ウィルの言葉に、ルイが首をかしげた。
「どういうこと?」
「リックって、冒険者の歴はオレより短いけど、これで白銀の第一位だから。」
ウィルがそう言うと、ルイは固まった。
そして、どう見てもルナークとじゃれ合っているリックに目をやった。
「……うん、心の底からウィル君に同意。世の中って、理不尽過ぎる。」
クラリスが、パンパン、と手を叩いた。
「はいはい、仲良きことは美しきかな――っていいたいのだけれど、まずは仕事を上がりましょうか。」
「あいにくと、ぼくが受付の規則です。」
――某短編以来、ようやく使えました(`・ω・´)
そして、リックの階位を知ったルイの心中を思うと夜しか眠れません。
ルイにとって「白銀の第一位」とはノエルの象徴だったのに……
それ自体は最初から決めていたので、ライブ感の産物ではありませんが(`・ω・´)




