第23話 はぐれた小鬼
ええ、ついに小鬼の出番です。
戦闘力にせよ、性格にせよ、バリエーション豊かなので。
ある意味、妖精・精霊の習合表現といったところでしょうか(`・ω・´)
ルイとウィルは、エテルナ王国のとある町に隣接する雑木林の前に立っていた。
隅から隅まで探索するとなると、二日は必要になる規模だった。
人のための入口があることから、町の住人が立ち入ることもあるのだろう。
「――ここに小鬼が潜んでる、かぁ。」
ルイがいかにも嫌そうな顔で言うと、ウィルは首をかしげた。
「ルイは小鬼と戦ったこと、あるのか?」
ウィルがたずねると、ルイはうなずいた。
「うん。――冒険者になる前だけどね。これでも僧兵だったから。」
「そっか。――って、ルイ、僧兵だったのか!?」
今さらのようにウィルが驚いた。
すると、ルイは苦笑した。
「そういえば、お互いに身の上話をしてなかったね。」
ルイの言葉に、ウィルはケラケラと笑った。
「ははっ、確かにな!――ま、冒険者ってワケありなやつも多いからな。」
「そうだね。うん、ほんとそう。」
相槌を打った後で、ルイは続けた。
「話を戻すけど、小鬼ってめんどくさいんだよね。徒党を組むし、知能はあるから小狡いっていうか、小賢しいっていうか……」
「お、おう……え?なんで受けようと思ったんだ?」
ルイの嫌そうな物言いにウィルが首をかしげると、ルイは苦笑した。
「うん。小鬼って体制の側で監視しながら対処するけど――たまにいるんだよね。群れになじまないというか、折り合いがつかない個体が。」
「はぐれってやつか。」
ウィルが相槌を打つと、ルイはうなずいた。
「そういうこと。――で、はぐれ個体の場合、力自慢が多いからね。いるとしても数体だろうから、ちょうどいいと思ったんだけど……」
「あぁ……この雑木林かぁ……もう少し開けた林だと思ってたよな……」
納得したようにうなずいたウィルに、ルイは肩を落として言った。
「うん。いくら力自慢だって言っても、知能がないわけじゃないからね。こういう隠れられる場所に入られると、やりにくくなる。」
「そうだな。ん?……なあ、ルイ。……あれ。」
ふと、雑木林に目をやったウィルが、ルイに声をかけた。
三体の小鬼――身長は10歳前後の子供並で筋肉質という歪な体格と人に好まれない容姿を持つ者たちが、雑木林の中から歩いて出てきた。
「……え?」
ウィルに言われてそれに気づいたルイは、絶句した。
ルイとウィルに気づいたのか、三体の小鬼は雄叫びを上げると、走り始めた。
拳を振り上げている様子を見て、ウィルは片手剣を抜いた。
ルイは困惑していた。
「え?……ちょっと待って。知能がないわけじゃないって言った途端に……」
「ルイ!来るぞ!」
ウィルの声に応えて、槍を構えながらルイは言った。
「ウィル君!念のためだけど、投擲剣は投げないで!」
「んなっ!?なんでっ!?」
投擲剣を投げようとしたウィルを制して、ルイは言った。
「拾われて使われたら困るから!――まず、分断するよ!」
そう言って、ルイは詠唱を始めた。
――光醒めて今満ちる、覆える水、混沌への放縦――
――一つの標、眩む瞳、逃れ得ぬ責め苦――
――集え、漂え、覆え――
三体の小鬼が、二人に迫ろうとさらに加速した。
「――『目隠しの霧』!」
真ん中の小鬼の頭部が濃霧に覆われて、勢いを失った。
しかし、残る二体はそれに気づくことなく、二人の間合いに入った。
ルイが声をかけるまでもなく、ウィルはその片割れを迎え撃つ。
小鬼が繰り出す拳を躱しながら、ウィルは片手剣で着実に小鬼を圧倒してゆく。
ルイは槍の柄を長めに持って、もう一体の小鬼を近寄らせずに牽制する。
大振りに見えて踏み込んできた小鬼を柄で払い、そのまま石突きで追撃する。
しかし、小鬼はそれを巧みに躱しながらも、ルイに近づききれずにいた。
一方で、ウィルが小鬼を深く斬りつけると、小鬼は仰向けに倒れた。
そして、すぐにルイの加勢にまわった。
二対一になった小鬼は、すぐにウィルに斬り伏せられ、首を切り落とされた。
ルイは、ウィルの横を通り過ぎて、足踏みしていた最後の一体の前に突き進む。
霧が晴れようとしていた小鬼に、槍を思いきり振り下ろした。
小鬼は視界を取り戻す前に、ルイに斬り伏せられてその場に崩れ落ちた。
ルイとウィルは、それぞれ自分が斬り伏せた小鬼の胸部を得物で貫いた。
それから、二人は雑木林に再び目をやった。
「――どうしようか?」
ルイがウィルにたずねると、ウィルは言った。
「探索はしておこうぜ。――もちろん、気配を感じたらすぐ逃げる。」
「そうだね。この林を管理できなくて困る、って理由で依頼されてるからね。」
ルイがそう言うと、ウィルはうなずいた。
「そういうこと。――で、力自慢でも小鬼、なんだろ?」
「うん。はぐれ個体だからって……いや、ちょっと自信がなくなったけど……」
ルイは、先ほどの襲撃を思い出してこめかみを押さえて頭を振った。
それから、顔を上げた。
「――でも、油断していい理由にはならないから。」
ルイが肩をすくめると、ウィルはニヤリと笑ってうなずいた。
「そうだな。――じゃあ、行こうぜ。」
「うん。行こう。」
こうして、二人は雑木林に足を踏み入れた。
そして、二人は三日ほど、探索に時間を取られることになった。
小鬼の潜伏を警戒しつつ、慎重に進めた結果だった。
とはいえ、探索二日目に入った段階で、二人は内心では焦っていた。
特にルイは、滞在費が報酬を上回ることに苛立ち始めていたが……
ふたを開けてみれば、倒した三体のほか、雑木林に潜んでいる小鬼はいなかった。
「うぅ……何だろう、この、勝ったのに負けた感じは……」
帰途についたルイは、がっくりとうなだれていた。
ルイは、初めて依頼で損をした。
今回は、はぐれ個体でしたが。
そして、二人は相手が脳筋であったがために損をしてしまいました。
うーん、脳筋……恐るべし(`・ω・´)




