第22話 依頼を選ぶ、その前に
報酬の配分とか、それを前提にした依頼選びとか――
ゲームだと、悩む機会がなかった気がします。
……まあ、そういうゲームを作者が知らないだけかもしれません(`・ω・´)
エテルナ冒険者ギルドの受付で、ルイとウィルは唸っていた。
「うーん……」
「む、難しいぜ……二人で受ける依頼って。」
二人の前に座っているクラリスは、微笑を湛えたまま二人を見守っていた。
その一方で、ルナークはこめかみを押さえていた。
「な、なるほど……これは確かに、ぼくは過保護になりかけていました。」
ルナークが苦笑すると、クラリスは肩をすくめて言った。
「そういうこと。依頼の幅は広がるけど、難度が上がるから勘が働かない。報酬も分けるから、値踏みも始まる。」
「ええ、そうですね。」
ルナークが相槌を打つと、クラリスは微笑した。
「そういえば、ルナーク君は、一人で活動していたわね。」
「ええ。もう、三年近く前のこととはいえ、懐かしいものです。」
過去を想って目を細めたルナークをしり目に、クラリスは言った。
「――二人とも悩むのはいいけど、お互いができることを知ってるかしら?」
「「あ。」」
見事に声が重なったルイとウィルに、クラリスは苦笑した。
「息は合ってるみたいだけど、不安になる合い方ねえ……」
「いやはや……勉強になります。」
ルナークが納得したように、何度もうなずいた。
そして、クラリスがパンパン、と手を叩いた。
「はーい。それじゃあ、まずはお互いにできることを伝え合いましょうか。」
クラリスの言葉を受けて、ルイがウィルに言った。
「じゃあ、ボクからでいい?」
「おう、いいぜ。」
ウィルがゆったりとうなずくと、ルイはニッコリ笑った。
「ありがとう。――青水の洞窟で見てもらった通り、得物は槍。――あと黒魔法を下級魔法まではだいたい使えるよ。」
「そっか。――あー……黒魔法。」
ウィルが何かを思い出したかのように顔を引きつらせると、ルイは察したのか頬をかいた。
「う、うん。――レティさんのアレを見た後だとちょっと恥ずかしいな。」
「あれ、何だったんだ?……一瞬で全部凍って、あっさり終わったけど……」
ウィルがそう言うと、ルナークが口を挟んだ。
「ああ、それは『氷の世界、終わりなき夢』ですね。水属性の高等魔法――つまり最上級黒魔法のひとつですよ。」
「こ……高等魔法っ……」
絶句するルイに、ルナークは微笑した。
「なかなか貴重な体験をしましたね、二人とも。高等魔法など、なかなか見られるものではありませんから。」
「はーい。それじゃあ、次はウィル君の番ね。」
クラリスが半ば強引に流れを切ると、ウィルに話を振った。
ウィルは、クラリスの言葉に応えてルイに言った。
「あ、そうだな!オレの武器は、片手剣、短剣、投擲剣。……あと、初等白魔法が使える……かな。」
なぜか、気まずそうにルナークの方を見ながら言うウィルに、ルイが声を上げた。
「すごい!白魔法、使えるの!?」
「あ!ちょっとだけだぞ?ちょっとだけ。」
照れくさそうに言うウィルに、ルナークは言った。
「――ウィルくん、後回しにしましたね。」
「うっ……ご、ごめん……」
ルナークに謝るウィルに、ルナークは苦笑した。
「怒る気はありませんが、下級白魔法の体得をお勧めしたはずです。近いうちに、ぼくが直々に手ほどきします。今度は逃がしませんよ?」
「わ、わかったよ……」
そこに、クラリスが口を挟んだ。
「まあまあ、初等白魔法を使えるなら、体力の回復ができる――あるかないかで、継戦能力は大違いよ。」
「それはそうですが、傷の治療もある程度できるようになってくれるとさらに安定しますからね。老婆心ながら。」
ルナークがそう言うと、クラリスはうなずいた。
「老婆心って歳かしら?――まあ、そこはお任せするわ、ルナーク先生。」
「ええ、この際ですからウィルくんにしっかり下級白魔法を叩き込みましょう。」
ルナークの言葉に、身震いするウィルと、ウィルの肩に手を置くルイ。
そんな二人に目を細めながら、クラリスは言った。
「そういうわけだから、適当に依頼を決めてちょうだい。」
クラリスがそう言うと、二人して声が裏返った。
「「て、適当!?」」
「決め手は弱いけど、二人合わせれば、荒事はだいたいこなせるでしょ。お互いをよく知るためにも、生活が成り立つ範囲で依頼を数こなしたら?」
ルナークがジト目でクラリスを見た。
「クラリスさん……あなたも誘導してるじゃないですか……」
「あら、親睦と反復は大事よ?言葉にできなくても、経験の形で積み重ねたものはいざって時に効いてくるわよ?」
ルナークは頭を振った。
「あなたが言うと、素直に受け取れないぼくの心は汚れているのでしょうか。」
「そう言い切れないのは事実だけどね。でも、二人でできることが多いなら、方針くらいは言わないと、いつまで経っても決まらないわよ。」
ルイとウィルは、お互いにうなずいた。
そして、ウィルが依頼内容が書かれた冊子をめくり始めた。
やがて、めくる手を止めると、二人で同じ依頼を指差して、うなずきあった。
ウィルは言った。
「クラリスさん。受ける依頼、決めたよ。」
クラリスは、満足そうにうなずいた。
「あらあら、今度は、いい意味で息があってるわね。」
まさかのウィル、サブヒーラー。
それを言えば、ルイも(元)司祭なのに黒魔法使いですが。
そもそも、僧侶系が白魔法というイメージはどこから来たんでしょうかね(・・?)
……まあ、踏み込んでもいいことなさそうですね。
正統だとか異端だとかの話になるとめんどくさいので(`・ω・´)




