第19話 洞窟の奥にいたモノ
洞窟探検と言えば、ダンジョンRPG。
作者は大好きです。
まあ、本作では地図生成もなければ、数値的メタ認知もありません。
ちゃんと不便ですし、それらがあってもたいして便利になりません(`・ω・´)
ルイ達三人は、洞窟の中に足を踏み入れた。
彼らの進む道は、携帯光源で照らされていた。
そして、洞窟には光源の動力を得るための、取っ手を回す音だけが響いていた――
それは、魔物が潜む場所で、自分たちの位置を知らせているようなものだった。
しかし、それにもかかわらずルイ達は、躊躇いなく進んでいた。
魔力感知による索敵情報が共有され、不意打ちがほぼ成立しない――そんな状態だったからだろう。
洞窟を進む途中で、ルイがレティに言った。
「――あの、レティさん。光源持ち、替わりましょうか?」
「あ、ずるいぞ、ルイ。オレもやりたい!」
と、少しずれた横やりを入れたウィルを含めて、レティは苦笑して言った。
「私はあなたたちに冒険者として、護衛として同行してもらっているつもりなの。あなたたちはあなたたちの仕事に専念なさい。」
レティの言葉に、ルイとウィルは各々の反応を返した。
「はーい。」
「ちぇっ。」
そんなやり取りをしながら、三人は洞窟の奥へと進んでゆく。
分かれ道の前に立つと、レティは地図を取り出して眺めた後、進む方向を決めた。
「地図なんてあるんですね。」
ルイがそう言うと、レティはうなずきながら言った。
「ええ。冒険者に依頼して作ってもらうのよ?入り組んだ洞窟だと、地図は必需品だから。」
「冒険者の仕事って、いろいろあるんですね……」
感心したようにうなずいたルイに、レティは微笑した。
「ええ。王国とはいえ国土のすべてを公的に調査なんてしないわ。だから、こんな場所は各々の領主の裁量で調査するってわけ。――さて、ところで。」
レティが少し声を低くすると、ルイとウィルはうなずいた。
そして、踵を返してレティの背後に立ち、それぞれが槍と短剣を取り出した。
レティもまた、踵を返して光を今まで歩いてきた方向に向けた。
3匹の大蛇が三人に迫っていた。
しかし、三人が振り返った時にはまだ、十分に近づこうとしていただけだった。
その結果、ルイ達は先手を取ることができた。
まず、ルイの槍による刺突で正面から1匹が貫かれた。
一方でウィルは素早く滑り込むと、器用に1匹の首を切り落とした。
「――『目隠しの霧』」
レティの発声に応えて、大蛇の頭部が濃霧に包まれる。
大蛇がひるんだところで、ウィルは最後の大蛇の首を切り落とした。
すべての大蛇が動かなくなったことを確認して、レティは言った。
「よくやったわね。なかなか手際がいいじゃない。」
レティの言葉に、ウィルは得意げに答えた。
「へへっ、任せといてよ。」
対照的に、ルイは少しだけ考えて、ウィルの背の片手剣を見ながら言った。
「――そっかぁ。槍だけが得物じゃ、こういう時に苦労するね。」
レティは微笑した。
「問題意識が芽生えたなら結構。今回は私がいきなり連れてきた形になったけど、今後、狭い場所での戦いに対応できる得物を持つといいわね。」
「短剣にするか?オレも付き合えるぞ?」
ウィルの言葉に、ルイは笑った。
「ありがとう、ウィル君。」
「任せとけって。」
そんなやり取りをしながら、回数こそ少なかったものの、分かれ道の直後に受けた襲撃を、危なげなく捌きながら三人は進んでいった。
そして、その名前の由来でもある洞窟の奥にたどり着いた。
その場所は大きく開けており、天井が割れており、陽の光が差し込んできていた。
湖の色は、青みがかった透明色だった。
レティは、携帯光源の取っ手を回す手を止め、荷物にしまい込む。
そこで待ち構えていたものを見て、ルイとウィルは茫然とした。
「なっ、何あれ……?」
「は、花?……いやいや、大き過ぎるだろ!?」
人間の優に数倍はありそうな高さの、大輪の花が、咲いていた。
そして、花に繋がる太い茎、茎から伸びる葉と蔦、それらが獲物を探しているかのように蠢いていた。
そして、さらにはその足元に群がる大蛇と小型の同じ花――
ルイは明らかに忌避感と嫌悪感が入り混じった表情で言った。
「うわぁぁ……気持ち悪いぃ……」
ウィルはレティの方を向いて言った。
「レティさん、どうする?――逃げるなら後ろは受け持つよ。」
「見当はずれなことを言わないの。」
レティははっきりと言い切って、それから続けた。
「今回は妖花……ね。――魔石を産むような場所だもの。場に当てられた何らかの個体が台頭することは織り込み済み。」
レティがそう言うと、ウィルは食い下がった。
「でも!――オレやルイじゃ、あんなの捌ききれないよ……」
「私がいるじゃない。」
レティのその言葉に、ルイとウィルの声は同時に裏返った。
「「へ?」」
そんな二人をしり目に、レティは微笑した。
「ウィル君、ルイ君。ちょっと囮になりなさい。1分でいいわ。決して私の邪魔をさせないで。」
「ど、どういうことですか……?」
ルイがこわごわとたずねると、レティは肩をすくめた。
「時間をかけるとこちらの被害が大きくなる。――私が使える最大の魔法で一気に終わらせるから、私が詠唱する時間を稼ぎなさい。」
レティの言葉に、ウィルはあっさりとうなずいた。
「わかったよ。」
「わかったのっ!?」
ルイが悲鳴を上げると、ウィルはルイを見ながら苦笑した。
「自信があるみたいだからな。――だったら、攻めた方がいいじゃん。」
「任せなさい。期待は裏切らないわよ。」
レティが不敵に笑うと、ルイも腹をくくったのか槍を強く握って前に進み出た。
「――じゃあ、ボクが前に出る。これだけ開けてるなら、槍の方が牽制して時間を稼ぐのに向いてるはず。――ウィル君はレティさんをお願い。」
「おう、任せとけ。」
ウィルは臆病者というわけではありません。
実は、黒鉄階位からのたたき上げなので、性格が陽気でも生存能力が高いのです。
対照的にルイは経験が足りないけど、思考は鋭いです。
今回は教義ではなく、単純に知性でねじ伏せて最前列を引き受けましたが。
さて、次回は「強い魔法でドーン!」回。
詠唱を、憧れにして、苦行にして、恥と言っていた作者。
どうやら、作者は恥を捨て去ることに成功したのかもしれません。
それが成長なのかは知りませんが(`・ω・´)




