第17話 面倒なお得意様?
魔石――ついに出てきました。
使われ方は作品によっていろいろですが。
……まあ、本作での位置づけは、そのうち語られることでしょう(`・ω・´)
人狼の討伐を終え、エテルナ冒険者ギルドに戻ってきたルイは、翌日の朝にギルド受付に顔を出した。
受付台の前に立ったルイに、リックは気さくに声をかけた。
「やぁ、ルイ。人狼相手に本当にサクッと片付けるとは思ってなかったよ。」
ルイは頭を振った。
「喜んでいいことじゃないけどね。――少なくとも一体をすぐに始末できたのは、村長さんの犠牲の上に立ってるから。」
「――なるほどね。呼び鈴の回数を使ったわけだ。確かに残念だね……」
リックも神妙な顔になって、それから肩をすくめた。
「感傷的になるのを忘れちゃいけないけど、仕事は仕事だから進めよう。」
「うん。――これ。」
ルイは、リックに依頼の完了を証明する紙を渡した。
例によってリックはその紙を確認すると、うなずいて、横に置いた。
それから、大銀貨を5枚、ルイに手渡した。
ルイは報酬を受け取って、声を漏らした。
「うわぁ……冒険者って、もしかして割がいい仕事なのかな?」
「バカ言うなって。人狼なんて、大抵は不意打ちを食らうのが前提の相手だから、できれば受けたくないんだよ。」
リックがそう言って苦笑した。
すると、ギルドの入り口の扉が開いた。
リックは、入ってきた人物に目をやると、言った。
「げっ!?レティさん!?」
「??」
ルイが首をかしげて、入口の方向を振り返った。
意匠を凝らした黒地の実用軍服を着こなした、短めの黒髪の女性が歩いてくる。
ルイは思わず口にしていた。
「美人さんだなぁ……」
リックがレティと呼んだ黒髪の女性は、すれ違いざまにルイに微笑を向けた後で、受付台に手をついた。
「ちょっと、リック君?人の顔を見るなりどういうつもり?」
「聞こえてたんですか……」
それから、赤い髪の少年に対応中のルナークの方を向いて、レティは言った。
「ルナーク君?ここの受付は躾がなってないわよ?」
「レティさん、躾は子供か愛玩動物にするものです。せめて教育と。」
ルナークが肩をすくめると、レティはくすくすと笑った。
「あら、リック君はルナーク君の愛玩動物じゃなかったのかしら?」
「時折、猿の真似をしているのか、盛ることはありますが……ぼくは彼を人間だと見なしていますのでその指摘は不適切ですね。」
リックは受付台に突っ伏した。
ルイは不憫な人を見る目で、突っ伏したリックを見ていた。
「ボクの感性がおかしくないのなら、キミたち、仲はいいはずだよね……?」
そんな二人をしり目に、ルナークは言った。
「いずれにせよ、あなたの扱いはあなたの日頃の行いによります。従って、ぼくの教育の問題とは考えておりません。」
「わかってるわ。ちょっとした冗談よ。――じゃあ、本題に入っていいかしら?」
レティがそう言って髪に手をやると、ルナークは言った。
「では、こちらのウィルくんとルイくんをお付けしましょうか。」
ルナークの前に立っていた赤い髪の少年・ウィルとルイの声が同時に裏返った。
「「へ?」」
レティは首をかしげた。
「階位は?」
「共に青銅の第三位、ノリと勢いで適当なことは言いませんのでご心配なく。」
完全に当事者を置き去りにしたまま進むやり取りに、ルイとウィルは当然のように抗議の悲鳴を上げた。
「いやいやいや、ボクとの合意は!?」
「ちょっと待てよ、ルナーク!?誰だよ、この人!?」
悲鳴を上げる二人をしり目に、ルナークは言った。
「それでは、レティさんに紹介しましょう。赤い髪の彼がウィルくん、銀髪の彼がルイくんです。二人とも、青銅階位になったばかりですが、推薦に値しますよ。」
「なるほど、悪くないわね。」
レティがルイ、ウィルの順に微笑を向けると、二人は反射的に紹介を始めた。
「あ、ルイです。よろしくお願いします……?」
「ウィルです。よろしく…?お願いします…?」
困惑気味に名乗る二人をしり目に、ルナークは言った。
「ウィルくん、ルイくん。この人はレティさん。エテルナ冒険者ギルドのお得意様です。ついでにいうと、これでもエテルナ王国の侯爵令嬢です。」
「よろしくね、ウィル君、ルイ君。レティ・アークスよ。」
ルナークの言い草を流して目を細めるレティに、ルイがたずねた。
「ええと……レティ…様?」
「冒険者ギルドに来ているのに貴族に対する礼なんて要求しやしないわよ。レティさんでもレティお姉さんでも、好きに呼んでいいわよ。」
それから一息置いて、続けた。
「――でも、さすがにおばさん呼ばわりしたら殺すわよ?」
「そんな命知らずがいるかよ……」
ため息をつきながら身体を起こしたリックは、続けてたずねた。
「それで?いつもの材料集めですか?」
「ええ、そういうこと。アークス侯爵領の青水の洞窟から、そろそろ魔石を回収しておきたいの。」
レティの言葉にリックはうなずいて、自分で確認するように言った。
「洞窟、レティさんが同行、青銅の第三位が2人――死にそうにはないね。」
「当然だよ。ぼくが決めたことなんだから。」
ルナークがそう言うと、ルイとウィルは互いに歩み寄って手を差し出し合った。
「えっと、ウィル君だね?ボクはルイ。よろしくね?」
「おう、オレはウィル。よろしくな、ルイ。」
その様子に目を細めながら、レティは受付に言った。
「じゃあ、二人を借りるわね。丁重に扱う保証はしないけれども、死なせるつもりはないわ。」
そして、ルイはため息をついた。
「……あれ?これってこの前の竜のときと同じなんじゃ……?」
「ギルドの評価は上がりますよ?見ての通り、面倒なお得意様を引き受けてくれているわけですから。」
ルナークが微笑すると、ルイはこめかみを押さえた。
「……これ、苦情を言っていいよね……?」
「ええ、ルイ君の正当な権利です。――なお、反映される保証はしません。」
作者に「貴族の令嬢」などという高貴な人物を描けるはずがありません。
……というわけで、こんな感じでご容赦願います。
ルイは巻き込まれ役が板についてきました――まあ、今回は道連れがいますが。
もはやルナークは「暴君」呼ばわりを「心外」とは言えませんね(`・ω・´)




