第1話 冒険者登録
この世界では、聖職者でも刃物を使います。
拝金教とか言っておいて、今さら刃物禁止とか白々しいですが(`・ω・´)
受付台には、三人の受付職員が座っていた。
中央には、青い髪の中性的な少年。
そして、その左側に黒い髪の女性、右側には金髪の少年。
銀髪の少年は、槍を背負い、革製の軽鎧を装着し、五芒星の首飾りを下げていた。
少年が受付台の前に立つと、中央の青い髪の少年が微笑しながら尋ねた。
「エテルナ冒険者ギルドにようこそ。ご依頼でしょうか?それとも登録でしょうか?」
銀髪の少年は、一礼して答えた。
「冒険者登録をお願いします。名前はルイと言います。」
銀髪の少年・ルイがそう言うと、青い髪の少年はルイの首飾りに目をやった。
そして、小さくうなずいた後に、言った。
「これはご丁寧に。――ぼくはルナーク。向かって左がクラリス、右がリックです。」
青い髪の少年・ルナークがルイに答えた。
次いで、黒髪の女性・クラリス、金髪の少年リックがそれぞれルイに微笑を向けた。
ルイは、小さく頭を下げた。
それから、ルナークが登録用の紙を取り出して、言った。
「冒険者登録ですね。こちらの用紙に必要な情報を書き込んでください。」
「ルナーク、ちょっと待って?」
リックがルナークに制止をかけた。
「おや、リックくん?どうしたのかな?」
「無条件で登録を認めるほど、君の判断は甘かったかな?」
ルナークは、リックに微笑を返しながら言った。
「観察力が足りないね。彼、ルイさんの首飾り。」
「ん?」
リックがルイの首飾りに目をやって、首をかしげた。
「五芒星の首飾りがどうかしたのかい?」
ルイは、少しだけ気まずそうな表情を見せた。
すると、ルナークがルイの方を向いて言った。
「ルイさん?ぼくからでも構いませんが、ご自分で説明しますか?」
「あー……はい。」
ルイは小さくうなずいて、それから言った。
「実はボク、五……じゃなくて、拝金教の司祭だったけど破門されて、こちらでお世話になろうかな、って。」
その言葉を受けて、ルナークはリックに言った。
「そういうことだよ。五芒星教団の司祭なら、僧兵でもあるからね。少なくとも、荒事の心得はあるってわけ。」
「……なるほどね。」
リックは、肩をすくめて苦笑した。
それから、ルイに頭を下げた。
「悪かったね。最近、冒険者登録試験が中止になっていて、いろんな人が来るから。」
それを聞いたルナークは苦笑した。
「きみだって、冒険者登録試験が中止になって参入したよね。」
「僕は少なくとも、有象無象呼ばわりされる覚えはないぞ。」
リックが口を尖らせると、ルナークは肩をすくめた。
「きみの場合は、それ以前の問題だよ。」
「うっ……」
言葉に詰まるリックをしり目に、ルナークはルイに言った。
「それはそれとして、記入をお願いしますね、ルイさん。」
「あ、はい。」
そう言って、ルイは用紙に記入しながら首をかしげた。
その様子を見ていたルナークはたずねた。
「どうしました?」
すると、ルイは言った。
「これ……書き込むことが少なくありませんか?」
ルイの言葉に、ルナークは苦笑した。
「個人名と署名で、ほぼこと足りますからね。」
「そんな大雑把な……」
ルイが呆れ顔で言うと、ルナークは肩をすくめた。
「冒険者は身一つの仕事ですから。出身国くらいは、何かあった時や、特定の依頼に協力を要請するために、書いていただきますがね。」
「そういうものなんですね……」
ルイは、なんとなく相槌を打った。
それから用紙への記入を終えると、ルナークに差し出した。
「どうぞ。」
ルナークは、ルイから用紙を受け取り、それを一瞥してうなずいた。
「確かに。受領しました。」
そして、判子をついて、灰色の札にルイの名前を書き下ろして、ルイに手渡した。
「これは?」
ルイが首をかしげると、ルナークは言った。
「暫定的な身分証明ですよ。階位が決まれば、正式に発行します。」
それから、ルナークは微笑した。
「ルイさん。エテルナ冒険者ギルドへの参入を歓迎します。」
「あ、ありがとうございます!」
ルイは、元気よく言った後、安堵したように胸をなでおろした。
唐突に、クラリスが口を開いた。
「――でも、わざわざ冒険者になるのは珍しいわね。」
クラリスの言葉に、ルイは、気まずそうな表情を見せた。
「え、えーっと……」
ルイは、少しだけ目を泳がせた後、息をのんで、それから言った。
「五芒星教団は、祖国の国教なんです。と言うよりも……」
ルイは、ルナークやリックに助けを求めるように目配せした。
すると、ルナークが微笑して、クラリスの側を向いて言った。
「ルイくんの祖国、シルクフィールド神聖国は、事実上、五芒星教団の国です。」
「あぁ……なんかその……ごめんなさい。」
クラリスが申し訳なさそうにルイに頭を下げると、ルイも困ったように苦笑した。
そこに、リックが言葉を挟む。
「まあ、その……破門の経緯とかはわからないけどさ、こっちで頑張ってよ。」
「は、はい……」
ルイは困ったようにうなずいた。
時系列的に「学会を追放された僕は、冒険者になって座薬型の回復薬を宣伝することにしました。」からは少し時間経過があります。