第15話 昇格を目指して、評価を求めて
ようやく、正式な単独依頼処理が始まりました。
ここは、人が生身で強くなれる世界なので、魔物退治の報酬は、現実の害獣駆除と比べると安いかもしれません。
現実だと、人は生身で最弱なので、道具と準備が生命線ですが(`・ω・´)
エテルナ冒険者ギルドから、そう遠くない位置にある農村にて――
今、ルイの前方には5匹の狼が散開して、ルイに向かって唸っていた。
ルイは、槍の柄を長く持って構え、狼たちの動きを牽制していた。
そして、槍を構えたままに詠唱を始めた。
――舞い踊れ遍く光、仕える火、災禍の招来――
狼たちは、じりじりとルイに迫ろうとするが、飛び込めない。
――一条の帯、疾く走る火、這い寄る禍――
――集え、立て、奔れ――
ルイは口元をつり上げた。
「――『走火』!」
そして、ほぼ同時にルイは地面を蹴った。
横一文字に、炎が走る。
3匹の狼が、走る炎に巻かれて、苦痛のためなのか吠えた。
2匹の狼が難を逃れたが、1匹は眼前まで迫ったルイに一振りで両断される。
反射的にルイに飛び掛かったもう一体の狼は、槍の柄で跳ね飛ばされた後で、斬り伏せられた。
3匹の狼を包む炎が収まり始めたころには、2匹が貫かれて止めを刺された。
最後の1匹は逃げようとするが、背を向けた直後に、やはり両断された。
5匹の狼すべてが確実に動かなくなったことを確認して、ルイは踵を返した。
村の中央で待っていた、責任者らしき男性のそばに行くと、言った。
すでに、報告がされていた様子で、男性は安堵の表情を浮かべていた。
「見ての通りです。――依頼は完了と言うことでよろしいですか?」
ルイの言葉に、男性はうなずいた。
「はい。――それでは、こちらをどうぞ。」
男性は、ルイに一枚の判と署名入りの紙を手渡した。
ルイは、その紙を確認してうなずいた。
「ありがとうございます。――それでは、失礼しますね。」
* * * * *
エテルナ冒険者ギルドの受付にて――
ルイは、農村で受け取った紙をリックに手渡しながら言った。
「これで、依頼完了だよね?」
リックが受け取って、その紙を確かめる。
「――うん。確かに、これで完了だね。」
それから、紙を横の棚に置いて、ルイに報酬の大銀貨2枚を渡した。
ルイは報酬を受け取りながら、満足げにしながらも苦笑した。
「それにしても、狼5匹で大銀貨2枚、ね。」
「ルイと相性がいい依頼だったね。」
リックが肩をすくめると、ルイは首をかしげた。
「どういうこと?」
「狼5匹が同時に襲ってくれば、一人で捌ききれる保証はないってこと。」
リックの言葉に、ルイは納得したようにうなずいた。
「言われてみれば、対集団戦で、各個撃破は誰でも取れる戦術じゃないね。」
「僕だって魔法の心得はない。とすると一斉に襲い掛かられて――」
リックがニヤリと笑うと、ルイは頭を振った。
「どうせ、全部、のらりくらりと捌いて倒しちゃうんでしょ?」
「まぁね。身体強化と細剣の技術でどうとでもなるかな、狼5匹なら。」
リックがそういった後、一息置いて続けた。
「つまり、ルイはわりと売れ残った依頼を処理するのに向いてる。」
「人を残飯処理班みたいに言うの、やめてくれる?」
ルイがジト目でリックを見ると、リックは苦笑した。
「これは失礼。――素直に言えば、ギルドにとってはありがたいってことだよ。」
「評価、上がるかな?」
ルイがそういって首をかしげると、リックはうなずいた。
「断言は避けるけど、貢献度は高いと思う。こういう依頼、避けられがちだし。」
「そうだと嬉しいな。」
ルイが相槌を打つと、リックは苦笑した。
「狼5匹。繰り返すけど、一人だとそれなりに危険。だけど、他の冒険者と組めば実入りが少ない。」
「つまり、痒い所に手が届く、ってわけだね。」
ルイがそう言って苦笑すると、リックは肩をすくめた。
「ただし、残りがちな依頼にはいわくつきの依頼も少なくない。今後のためにも、そういうのを判断できる感覚を養っておいた方がいいよ。」
「そ、そうなんだ……」
ルイが少しだけ引き気味に言うと、リックは微笑した。
「昇格のために評価を稼ぎたいのはいいけど、足元を掬われないだけの価値判断は大事だよ?――まあ、君に、価値判断についての説法はいらないと思うけど。」
「う、やっぱりバレてる?」
ルイが少しだけ照れ臭そうに頬をかくと、リックは苦笑した。
「君は、頭が切れる割には素直だからね。――じゃあ、次の依頼はどうする?」
「そうだね。次の依頼を選ばなきゃ。」
ルイは受付台に置かれた冊子に書かれた依頼の一覧に目を通し始めた。
そして、一つの依頼に目を留めた。
「――これ、残ってるけど大丈夫なやつ?」
ルイが指差した依頼を見て、リックは眉をひそめた。
それから、頭を振って、言った。
「これはハズレ。――期限ぎりぎりでルナークが処理する。」
リックの言葉に、ルイが首をかしげた。
「え?これって普通の街だよね?」
「一度依頼を受けた冒険者が二度と受けない依頼者だからね。だから、ルナークが実態調査のために出張る予定だから。」
リックがそう言うと、ルイは瞑目した。
「――わかった。じゃあ、これで。」
ルイが指定した依頼を見て、リックは微笑した。
「うん。余計な詮索をしないことまで含めて賢い選択だと思う。」
「青銅の第三位のボクに解放されてる依頼を、ルナーク君が調査する事情なんて、聞かない方がいいかなって思ってる。」
ルイがまじめくさった表情でそう言うと、リックはうなずいた。
「そこまで大事件じゃないよ。せいぜい、お客様が一覧から消えるか消えないか、ってだけだからね。――じゃあ、人狼の討伐、頼んだよ。」
「……前半は聞かなかったことにするけど、任せといて。サクッとやってくる。」
前線をある程度張れる上、黒魔法の使い手だと便利ではあります。
ある意味では、器用貧乏でもありますが。
まあ、そのあたりはルナークが何か対策してくれることでしょう(`・ω・´)




