第10話 名もなき岩礫の山地にて
ルイはお金が絡んだ時の豹変ぶり――
ノエルは何かにつけた自己陶酔的発言――
とはいえこちら、自称・ハイファンタジーです(`・ω・´)
エテルナ冒険者ギルドから、馬車で三日。
そうしてたどり着いた辺境の町から、さらに徒歩で進んだ先――
ルイとノエルの目の前には、岩だらけの低山地が広がっていた。
辺りを見回したルイは、肩をがっくりと落として、ため息をついた。
「はぁ……竜が、ここに居るんですよね……」
そんなルイの様子に、ノエルは相変わらず微笑を湛えてうなずいた。
「まあ、町でも被害が出ていたからね。」
「できれば、遭遇したくないんですけど……」
ルイがジト目でノエルを見ると、ノエルは肩をすくめた。
「滞在期間と、自前の宿泊費が嵩むだけだよ?」
「わかりました、行きましょう。逡巡ごときのためにお金を捨てられません。」
ルイは、あっさりと前言撤回して、目の前の地形を睨みつけた。
ノエルは肩をすくめた。
「やる気があるのはいいことだよ。――じゃあ、行こうか。」
ノエルは大剣を抜くと、変わらずに鎧の重量を感じさせず、軽やかに歩き始めた。
ルイも槍を手に持って、ノエルに従った。
ルイは、それを言わずにはいられなかったのか、言った。
「雅客って名乗っておいて、得物は大剣なんですか……」
「僕が扱えば、大剣だって絵になるからね。」
ノエルが、さも当たり前のように言い切ると、ルイはジト目になった。
「反論できないのが頭にくる……」
二人は、周囲と比較して均された――何者かが通った跡を進んでいた。
すると、ノエルは不意に立ち止まって空を見上げた。
その直後に、ルイは身体をこわばらせて、反射的に身を引いた。
その様子を見て、ノエルはルイに微笑を向けた。
「……あ、驚いた?」
「な、何なんですか……上空の魔物たちへの威嚇なんですか?」
ルイが口を尖らせると、ノエルはうなずいた。
「うん。適度に警戒させた方が、こちらの危険度も下がるからね。」
「どういうことです?」
ルイが首をかしげると、ノエルは肩をすくめた。
「高い場所にいるってことは、速さに変えられるってことだよ。」
「――なるほど、急降下された方が性質が悪い、と。」
ほどなくして、巨躯の禿鷲が、ゆっくりと降りてきた。
そして、二人を囲んで様子を窺うように飛び回る。
その数は、七体。
ルイが槍の柄を長く持って構え、禿鷲の動きを目で追う。
「ルイ君、背中合わせになって、前だけに気を付けて。」
「えっ?」
ルイは怪訝な顔をしながらも、ノエルの指示通りにした。
ノエルと背中合わせに、前方だけに注意を配りつつ、槍の構えを崩さなかった。
「このままで進むよ。」
そう言って、ノエルが歩を進める。
ルイは、少し戸惑いながら、禿鷲を見据えながら後ずさる。
――禿鷲の絶叫が響き渡る。
そして、禿鷲たちが戸惑うように動きを鈍らせた。
ノエルが踏み込んで、一体の禿鷲を両断していた。
一歩遅れて、動きの鈍った一体の禿鷲の翼を、ルイは槍を振るって切り落とした。
そして、地面に落ちた禿鷲に突きを繰り出して、その脳天を打ち抜いた。
さらに、三つの落下音。
残った二体の禿鷲は、我に返ったように鳴き声を上げながら飛び去った。
辺りが静かになると、ノエルはルイの方を振り返った。
「怪我はないかな?」
「ええ、問題ありません。」
ルイがうなずくと、ノエルは微笑した。
「さすがに、青銅の第三位を与えられただけあるね――思った以上に慣れてる。」
「ありがとうございます。」
ルイが硬い声で言うと、ノエルはうなずいた。
「しかも、しっかり止めまで刺してるし。」
「……最初に思い知らされましたから。対人戦の無力化とは違う、って。」
そう言って肩をすくめると、ルイは言った。
「でも、あの二体、仲間を連れて戻ってこないでしょうか。」
「逆だね。逃がした方がかえって寄り付かない。」
ノエルの言葉に、ルイは首をかしげた。
「そういうものなんですか?」
「危機感を伝えてくれるからね。生存本能に忠実だとやりやすい。」
ノエルが微笑すると、ルイは感心したようにうなずいた。
「勉強になります。」
「もちろん、力量の差を見せつけておく必要はあるよ。――血を流した場合、逆に数を増やして戻ってくるだろうね。」
ノエルはそう言って肩をすくめると、続けた。
「進もうか。――まあ、これ以上進めば、もう大丈夫だろうけどね。」
「えっ?」
ノエルの言葉に、ルイが目を白黒させた。
ルイの様子に、ノエルは微笑した。
「生命は惜しいんだから、わざわざ竜に近づいたりしないってこと。」
すると、ルイは苦笑した。
「禿鷲たちにとっては、ボクたちの方が倍率が低いんですね。」
「当然だよ。僕らは立ってるだけなら弱々しいから。」
――その後、二人が再び禿鷲に襲われることはなかった。
生物の気配すら希薄になった場所を、二人は進み続けた。
そして、激しい咆哮が響き渡る。
ルイは、身体を強張らせた。
それから、頭を振って瞑目した。
そして、大きく息を吐いた。
そんなルイに、ノエルがたずねた。
「さてと、そろそろだね。――心の準備はできたかな?」
ルイは、両手で自分の頬を思い切り叩いて、咆哮が響いてきた方角を睨みつけた。
「ええ、行きましょう。――半分以上やけくそですが。」
「やけくそ極まって、捨て鉢になるのはやめてくれよ?」
ノエルがそう言うと、ルイは言った。
「当たり前です。この身がなければお金を使えませんから。」
禿鷲、いわゆるヴァルチャー相手でもルイはきちんと仕事ができます。
まあ、現時点での出演者の中では文句なしに最弱なのですが。
それはそれとして、ルイの信仰心(?)はたいしたものです(`・ω・´)




