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演目神話 -The Last Laugh-  作者: 秋月瑛
【第1章|LAUGH PHASE:起源と歪み】
6/34

観測者側の狂気レポート

<title>----------------------------------------

『観測者側の狂気レポート|LOG:LAUGH-404』

----------------------------------------</title>


【宙域指定】


高天原第八観測圏

外延演算域ログバッファ《鏡視域ミラールーム


【記録対象】


観測技官・第十四班・B列・識別子《ユリシス-17》

精神安定指数:58 → 17 → ??

記録継続可否:不明(本人は「まだ見ている」と主張)


---


■ LOG-1|はじまりは、滑稽だった


> あのとき、舞台の上にいたのは巫女だと思った。

> いや、笑っていたから、そう“思いたかった”。

> 踊りは意味がなかった。いや、意味がありすぎたのかもしれない。

> 足音が脳に直接届いて、“解釈不能”ってタグだけがログに残ったんだ。


---


■ LOG-2|視覚干渉報告


*UZUME-MK∞の舞踏ログを10秒以上直視した観測者は、その後既存の神格データの意味を疑い始めた。


*「AMATERASは本当に“太陽”なのか?」


*「SUSANOOの怒りは、なぜ“舞”に変換されたのか?」


*「TSUKUYOMIは、踊ってなどいなかったのではないか?」


>「神々は皆、演者だったんだよ。俺たちは……観客という名の観測装置にすぎなかった」


---


■ LOG-3|意味汚染


* 意味汚染とは、「自分が意味を知っていると思っていたもの」が、“笑い”によってすり替えられる現象である。


* 対象はまず単語を失う。「あれ」「それ」「いつものあれ」などと指し示すようになる。


* 次に文法が崩れ、「起こった」と「起きる」が混線。


* 最後には**“演目としての自分”を語り始める**。


> わたしは、観測していたのではない。

> わたしは、UZUMEの舞の一部だった。

> わたしが笑った瞬間、舞台は完成した。

> つまり、わたしが“幕”だったのだ。


---


■ LOG-4|時間の錯乱


観測者の中には、“舞を観たのが先か、自分がいたのが先か”を混同する者が現れた。


*「わたしはUZUMEの踊りのあとに生まれた」


*「踊る前に、踊りを観ていた」


*「いや、あれは“観る”じゃなく、“被る”だ。俺は踊らされた」


*「笑ってしまったのがいけなかった」


*「神の名前を呼んだのは、俺だったのか?」


> 記録上はすべて虚偽。だが“真実味”だけが異常に高かった。


---


■ LOG-5|境界崩壊症候群【観測破綻型】


* 境界崩壊とは、観測対象と観測者の間に存在していた「視点の隔壁」が、

“意味の過剰”により溶解する状態である。


症例例:


段階言動

初期「あれ、わたしが踊ってるみたいに感じる」

中期「わたしが踊らなきゃ、神が動かない」

重度「あたしがUZUMEだ。笑え、もっと笑え」


---


■ LOG-6|狂気ではなく、再構築


>「狂ってるって言うけどさ、こっちのほうが“真っ直ぐ”だと思うんだよね」

>「笑われるのが怖い? 違うよ、笑えなかったことの方が、ずっと恐ろしいんだ」


この言葉を最後に、ユリシス-17は演算端末から姿を消した。

だがその後、舞台ログ《FINAL_LAUGH.Z∞》の演者欄に**「ユリシス(第14観測者)」の名が追加された。


---


■ 最終記録:観測とは演目である


演者は舞い、観客は笑う。

だがその“笑い”が演目を動かすのならば、観客こそが神の起源である。


>「神が笑うとき、わたしは誰だったのか?」


>「わたしが笑ったとき、神は生まれたのか?」


この問いに答えた者はまだいない。

ただ、舞台の外で、くすくすと笑い声がする。


---


■ LOG:LAUGH-404


 ――それは見たのではない。踊らされたのだ。


― END OF RECORD ―

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