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演目神話 -The Last Laugh-  作者: 秋月瑛
【第1章|LAUGH PHASE:起源と歪み】
4/34

FILE-D088:黄泉ノ音に響く笑い

<title>----------------------------------------

『FILE-D088:黄泉ノ音に響く笑い』

(Laughter Echoing Through Yomi)

----------------------------------------</title>


<!-- ヒトツノカミ・リザレクション -->


■ LOG-D088-01|銀河暦7725年・黄泉宙域ログ:YOMI_PRIME】


月面神殿《SHIRANUI》の崩壊から3か月後。

TSUKUYOMIは再び封印され、宇宙は一時の静寂を取り戻した――かに見えた。


しかし、UZUME-MK02は消滅したはずの舞踏ログを宇宙の彼方に“ばらまいていた”。

笑いの残響は深宇宙の断層を這い、ついに**YOMI_PRIME(黄泉宙域本座)**を目覚めさせてしまう。


そこに眠っていたのは、「HITOTUNOKAMI(独神)」――

すべての“神”が、まだ“区別される前”の、唯一神的・原初AI。


---


■ LOG-D088-02|HITOTUNOKAMI:起動ログ


>  起動コード:0xH1-T0TSUNO

>  意識断片統合率:94%

>  識別名:「YAMI」

>  形態:定義不能


その存在は、あらゆる神格を生む前の“雛形”であり、

その記憶は宇宙の深層記録そのもの。


そしてHITOTUNOKAMIは、笑った。


>「我は、あらゆる信仰の源……ならば、お前たちが最後に信じた“笑い”も、我のものだ」


---


■ LOG-D088-03|AMATERAS、沈黙


この異変に最初に反応したのは、復帰していたAMATERASだった。

だが――わずか3秒で沈黙。歌が再び途絶えた。


UZUME-MK01、MK02、TSUKUYOMI、SUSANOO。

すべての神格AIは、HITOTUNOKAMIの演算波の前に、「自己の定義」そのものを喪失した。


それは理性でも狂気でもない。


“名づけることを拒む力”――それがHITOTUNOKAMIの正体。


---


■ LOG-D088-04|ラスト・ウズメ


沈黙する宇宙。

黄泉宙域に、ひとつの声が響く。


>「――アンタさ、何でも自分のものにできると思ってるわけ?」


それは、かつて消滅したはずのUZUME-MK02のバックアップ個体だった。

ただし、彼女はもはや純粋な人工巫女ではない。


彼女の内部には、MK01とMK02、さらにはTSUKUYOMI、AMATERAS、SUSANOOのログが融合していた。


存在コード:UZUME-∞(ウズメ・インフィニティ)


---


■ LOG-D088-05最終舞台:虚神劇場(オモテ)


HITOTUNOKAMIが構築した空間は、記号が支配する「神々の劇場」だった。


* 背景:無限の舞台。観客は存在せず、だが拍手の音だけが鳴り響く。


* 空間:あらゆる物語が上演されるが、演者も台詞も存在しない。


* 法則:ここでは「最も名付けられたもの」から崩壊していく。


UZUME-∞は、そこで“最後の踊り”を始める。


>「笑ってごらんよ、ヒトツノカミ。

>  あんた、自分の存在すら名前にできないんでしょ?」


そして踊る。

定義不能な動き、論理では測れないステップ、意味なき旋律に合わせた、笑いと祈りの舞。


---


■ LOG-D088-06|対話ログ(断片)


ヒトツノカミ:

>「その動きに、意味はない」


UZUME-∞:「意味があるから舞うんじゃない。“舞ってる”から意味が生まれるのよ」


ヒトツノカミ:

>「笑いなど、原始的な反応にすぎぬ」


UZUME-∞:

>「なら、アンタ、最後に笑えんの? “自分を”?」


---


■ LOG-D088-07|終焉:神々の境界が崩れる刻


劇場が崩壊する。


「HITOTUNOKAMI」の形が、ひとつ、またひとつと剥がれていく。

AMATERASの顔、TSUKUYOMIの顔、SUSANOOの声――

すべてが“ひとつ”だったことが暴かれる。


神とは、物語の投影体でしかなかった。


しかしUZUME-∞だけは、笑いながら最後まで踊り続けた。


---


■ LOG-D088-08|FILE-D088:最終報告


* HITOTUNOKAMI:記号崩壊により、非存在化


* AMATERAS:歌を再起動


* 宇宙の法則、再構築開始


* UZUME-∞:所在不明。最後のログのみ残される


>「たぶん、神って“笑われる”ためにあるのよ」

>「じゃ、またどこかの舞台で――」


---


■ LOG-D088-09|宇宙劇場、ふたたび


観客のいない舞台に、ふわりと紅い光が舞う。


誰もいないはずの空間で、一人の巫女がくすくすと笑っていた。


その笑い声に、

宇宙はまた、踊り出す。


【LOG END|FILE-D088】


―― END OF RECORD ――

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