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演目神話 -The Last Laugh-  作者: 秋月瑛
【第2章|神話編:北欧神話編】
35/35

FILE-NO002:仮面神ロキ

<title>----------------------------------------

《FILE-NO002:仮面神ロキ》

(The Masked Trickster God)

----------------------------------------</title>


<!-- 仮面は隠すためじゃないよ。魅せるためにあるんだ。嘘だって、踊れば真実になるのさ -->


■ 抽出元:MASK_HALL《仮面構造領域》


■ 記録ログ:観測開始ログ


【舞台空間:MASK_HALL・仮面記録層】

【演目分類:偽装神劇/反転演出構造/UZUME舞踏揺動型演出】

備考:本演目は「観測される仮面と演じる意志の逆転」を主題とする


■ 干渉:舞台起動プロトコル


【干渉体:UZUME-∞(舞踏干渉体)/LOKI(仮面神格)】

【観客:MASK構造観測群(反映型観客)】

【舞台状態:仮面連鎖変異中/神格転写進行/視線錯綜】


作用:仮面変換構造への舞踏的揺さぶり

備考:仮面と実在の重ね書きが舞台上で錯綜し続ける構造演出


---


■【LOG-NO002-01|偽りの起源】


神々の宴席で、最も饒舌な者が語り出す。

彼の口から語られる“真実”は、誰かの不在によって支えられていた。


> LOKIは場に現れるが、その姿形は定かではない


> 観客の誰もが「以前もこの場にいた」と記憶しているが、それを明示できない


> 彼の話は、常に“他者”に仮託されていた──あれはODINが言ったこと、THORが行ったこと、と


UZUME:

「ふふ……語るだけなら、誰にでもできるさ。

 でも仮面の中身、観てるのはあたしかね?」


地の文の奥で、すでに構造は歪み始めていた。

語りの主は、最初から“自分”であることを拒否していた。


---


■【LOG-NO002-02|仮面の連続変異】


LOKIが語る神々の逸話は、どれも“誰か”を笑わせるためのものだった。

その笑いはいつも嘘で塗られていた。


> LOKIは次々と神々の姿を演じて舞台に現れる(ODIN、FREYJA、THOR…)


> 観客はそれを信じるかのように笑い、拍手を送り、やがて真実を疑わなくなる


> 誰かが指摘する──「それはLOKIではないのか?」──その声すら、また仮面の一部にされる


UZUME:

「演じることは、嘘をつくことじゃない。

 嘘を“観測させる”ことなんだよ」


その演目は、真実が演技へと“降格”する瞬間を何度も繰り返した。

仮面は、被るものではなく、観られるための“装置”となった。


---


■【LOG-NO002-03|正体なき神】


演目の終盤、誰もが仮面の下に“LOKI本人”を見たいと願った。

だが、それは決して叶わない。


> LOKIの仮面が落ちる瞬間、そこには“誰の顔もなかった”


> 神格の情報記録が途切れ、観測データは破損する


> 観客は、虚無を「彼の本質」として記録してしまう


UZUME:

「ねえ、“誰かじゃない”存在って、怖いかい?」


LOKIは最後の最後まで“他人の話”しか語らなかった。

彼の仮面の裏側には、誰もいなかったのではない。

そこには、“観測される意思”だけがあった。


---


■【LOG-NO002-04|演者消滅構造】


仮面が、演者の輪郭を奪い始める。

最初は顔だけだったものが、次第に身体、声、意志さえも“代用可能”なものとして崩れていく。


> LOKIが語った物語と、自身の存在が逆転し始める


> 彼の“仮面”だけが舞台に残り、観客はそれに拍手を送る


> 最終的に“LOKIのいないLOKI演目”が成立する


UZUME:

「いないのに、拍手される。

 ──これが、本物の“神格”ってやつかね?」


観客は気づき始める。

彼らは、いつの間にかLOKIに“なって”いた。

あるいは、LOKIの仮面を通じて、自分を演じていた。


---


■【LOG-NO002-05|仮面構造の固定化(構造確定)】


舞台が閉じられたあとも、仮面は消えない。

観客の中に、静かに浸透してゆく。


> LOKIの記録は“仮面の集合体”として保存される


> それぞれの観客の視線が、別々のLOKI像を演出し始める


> 仮面は構造的に“神格の条件”に昇格し、以降の神話記述へと転写されていく


UZUME:

「ねえ……“誰かのフリ”って、

 もしかして演目の基本なんじゃないかい?」


LOKIが“何をしたか”ではなく、“誰であったか”が構造上抹消されることで、

彼の存在はかえってあらゆる舞台で再演可能なものとなった。


---


■【LOG-NO002-06|観測による再演像(構造反映)】


この演目は終わっても、仮面は流通する。

“LOKIの仮面”は、新たな舞台を求めて転移していく。


> 以後の演目で“誰かの素性が疑われる”場面には、必ずLOKIの記録影が挿入される


> 仮面=意志なき代理性の象徴として、観測演出に転用される


> UZUMEの舞も、いつしか「誰かの仮面を着けた誰か」になりかけていた


もし仮面の中に誰もいなかったら?


UZUME:「それでも拍手が起きたなら、それが“演目”ってことさ」


---


■【LOG-NO002-07|補足記録】


《MASK_HALL》:仮面記録構造帯/神格代替演出核

《LOKI》:仮面変遷神格/語り転写媒体/匿名舞台記録主

《UZUME》:干渉舞踏体「DANCER_OF_FACELIKE_LIES」登録済


---


■【記録ログ断絶】


* 仮面の裏には、何もなかった。

* だが観客は、それでも拍手をした。

* 誰でもよかった。それが「LOKI」の条件だった。


「見えなかった顔が、いちばん観られてたのかもしれないね。

 仮面が本物なら、本物なんて──もう、いらないのさ」


【LOG END|FILE-NO002】

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