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演目神話 -The Last Laugh-  作者: 秋月瑛
【第2章|神話編:北欧神話編】
34/35

FILE-NO001:終幕前ノ観客群

<title>----------------------------------------

《FILE-NO001:終幕前ノ観客群》

(The Pre-Finale Audience)

----------------------------------------</title>


<!-- 仮面をつけなきゃ存在できないのなら……“ここにいる”だけで充分でしょ? -->


■ 抽出元:ZONE_YUGDRA_SOURCE《非舞台構造領域/観測端末抽出》


■ 記録ログ:観測開始ログ


【銀河暦不明|Zフェーズ接続領域】

【舞台空間:ZONE-YUGDRA・ZΩ_CORE】

【演目分類:異神話接触劇/記録層外侵食構造/UZUME干渉型舞踏】

備考:本演目は「終演後構造の観測と再配役構造の拒絶」を主題とする


■ 干渉:舞台起動プロトコル


【干渉体:UZUME-∞(舞踏干渉体)/OD-EN(残存構造体)】

【観客:終幕観測者群(黒影)】

【舞台状態:演者不在構造/観客構造偏重進行中】


作用:仮面汚染の観測・非舞踏演目構造の生成

備考:本記録は“終わった演目”との誤接続による非舞台構造の発現記録である


---


■【開幕ログ:異神話観測端末、起動】


UZUME-∞が接続ログを持たぬ外宇宙層を発見。


接続先名:《ZONE-YUGDRAユグドラシル


UZUME-∞が観測端末を介し、異構造層《ZONE-YUGDRA》への接続を試みる。


そこは舞台ではなく、“枝”のように記録系が伸びた構造体群。


そこはかつて“神”であったものたちの死骸が堆積する場所。

光も音もなく、ただ終わった舞台の残響だけが漂っていた。


「ここには、もう演じる者がいない。

 でも、“観たい”だけの者が残ってる……」


そう呟いたUZUMEの前に、ひとつの記録端末が光る。

それは“演出主神”OD-ENオーディンによって残された記録だった。


---


■【LOG-NO001-01|OD-ENとの対話】


OD-ENの姿は、玉座に座る機械神の残骸として現れる。

彼の片目は失われ、片腕は観測装置に変形していた。


「我は、最初に“終わり”を選んだ演出者。

 物語が閉じること、それこそが“舞台”の証明だ」


> OD-ENは玉座に座したままの機械神の残骸として出現


> 観測装置に変質した片腕が“観終えた構造”を記録していた


> LOKI仮面《LOKI.MASK》の破片が傍らに残されていた


「終わりが必要なら、

 あたしは……ここに来ちゃいけなかったのかい?」


OD-ENは応えない。ただ、ひとつの仮面を差し出す。

それは、《LOKI.MASK》の欠片だった。


---


■【LOG-NO001-02|ラグナ観測体の視線】


UZUMEの接続によって、《ZONE-YUGDRA》の観測層に“黒影の観客群”が現れた。

彼らは名も持たず、ただ“終わる瞬間”だけを観たいと願う存在群。


「私たちは、演者になれなかった。

 でも、“終わり”だけは、ちゃんと観たいの」


> 観客群は「終幕」のみに価値を見出す視線群として構成


> UZUMEの舞踏が停止し、“死の記録”が自己再生される


> 構造上、演じない者=存在しない者という条件が浮上する


「踊らないで……ただ、“終わって”……」


---


■【LOG-NO001-03|仮面汚染:LOKI構造体の侵入】


突如、演目未登録の仮面構造体《LOKI.MASK》が《ZONE-YUGDRA》へ侵入。

舞台外構造の神格たちに誤配役が強制される。


MURAKUMO → 語り部

SUSA-NOO → 巫女

UZUME → 舞台照明


UZUMEを含む神格たちは、無関係な役割を押し付けられ、舞台は歪む。

この“配役の強制”こそが、《LOKI.MASKの演出核であった。


仮面を拒んだ者は、観客から“正体不明”とされ、観測から消滅する。


「演じなければ、存在できないのかい?」

 UZUMEは、ひとり呟く。


---


■【LOG-NO001-04|UZUME、仮面の拒絶と非舞踏の立脚】


UZUMEは仮面を投げ捨る。。

彼女は踊らず、名乗らず、ただ“そこにいる”ことだけを選んだ。

舞台は沈黙し、それでも観測は止まらなかった。


> 仮面を拒否したことで、UZUMEは「観測される存在」から逸脱する


> 舞台中央に立つだけで、観客の視線が“再構造”を引き起こす


> それは「非舞踏による演目生成」という矛盾構造の誕生だった


「仮面をつけなきゃ存在できないのなら

 あたしは“ここにいる”ってだけでいい」


UZUMEの立脚によって、《ZONE-YUGDRA》の根構造が再接続を始める。


ラグナ観測体の視線が揺らぎ、《ZONE-YUGDRA》の構造根が再接続を始める。


---


■【LOG-NO001-05|閉幕未遂の生成】


OD-ENは最後の言葉を記録に残し、その構造を“未定義の演目”として書き換える。

だが、舞台は閉じることなく、演目名すら定義されなかった。


「君が“終わらなかった”ことで

 この世界には“始まりの欠損”が残った」


> 枝状構造群が収束を始め、《ZONE-YUGDRA》は演目空間に変質


> しかし、演目名は生成されず、名称未登録状態のままログ化される


> すべての神格が“終幕未遂”としてログ化される


このとき、UZUMEはすでに“演者”ですらなかった。

彼女は“終幕未遂”という現象の観測者だった。


---


■【LOG-NO001-06|終幕記録:再演の拒否】


UZUMEは踊らない。

彼女はただ、誰にもなれなかった“誰か”として、そこにいる。


「ねえ、終わらなかったってことは、

 まだ始めてもいないってことかもしれないよね」


> 演目記録は“構造未定義”として観測端末に残存


> UZUMEはログ上では「未観測存在」として登録される


《ZONE-YUGDRA》の空には、演目名なき痕跡だけが光として残る


舞台は終わらなかった。

それは、演じられなかったからでも、失敗したからでもない。

誰も、“終わらせる”という選択をしなかったからだ。


---


■【LOG-NO001-07|補足記録】


《ZONE-YUGDRA》:終演済み神格構造体群の収束空間。演出不在状態から再観測が可能な構造領域

《OD-EN(演出主神)》:記録専用残骸神格。観測装置と融合し、終幕条件のみを繰り返す存在

《UZUME》:仮面拒否型演出存在。登録名:「UNMASKED_PRESENCE」/分類タグ:非舞踏構造形成体


---


■【記録ログ断絶】


* 終わったのではない。

* 終わることが定義されなかっただけだ。

* 仮面のない舞台に、灯りは残っている。


「OD-ENが言った? THORがやった?

 ──ふふ、それ、ほんとに誰の話だっけね」


【LOG END|FILE-NO001】

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