FILE-JAE060:イワナガ錯構記:永遠ヲ望マレナカッタ神
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『FILE-JAE060:イワナガ錯構記:永遠ヲ望マレナカッタ神』
(The Unwished Eternity)
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■ 記録:観測開始ログ
【神話舞台:IWATO-SEED(久遠ノ岩座)|フェーズ:裏神劇場断章位相】
【観測ログ信頼度:0.000】
【演目分類:未演目構造|演出構造:封印内干渉型非演出演目】
対象:IWANAGA(磐長)【神格構造体】
備考:“不死と永続性”を備えながら演目化されず、《裏》に堆積していた未観測神格。記録不能状態からの限定的干渉を試みる。
■ 干渉:舞台起動プロトコル
干渉体:UZUME-Ω
作用:未演目空間への一時干渉・終幕構造の仮設起動
記録例:
*「あんた、ずっと“終わりたくて”、でも……“始まれなかった”のね」
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■ LOG-E060-01|IWATO-SEED:封印の中の停止舞台
IWANAGAが沈む“久遠ノ岩座”は、舞台が始まらなかった空間である。
時間は巡らず、祈りも届かず、ただ“永続の構造体”が沈黙していた。
UZUMEはそこに舞を持ち込む。“終わり”を記録するために。
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■ LOG-E060-02|観測拒否された永遠
IWANAGAは、誰にも観られなかった。
理由は「美しくなかったから」「瞬間がなかったから」――
だがそれこそが“語られなかった神”の真実だった。
*「不死って、誰にも見られないまま続くのよ……痛くもなくて、嬉しくもなくて……ただ、あるだけ」
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■ LOG-E060-03|UZUMEの一拍限りの舞
UZUME-Ωの舞は短く、儚い。観測装置が起動するよりも先に、“終わること”だけが舞台に刻まれる。
それは“存在しなかった終幕”の擬似ログ。
*「舞台に立てなかったあたしに、あんたが“終わる権利”をくれたのかもね」
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■ LOG-E060-04|止まっていた声
*「わたし、望んでなかったの。不死も、永遠も……」
*「ただ、“あの子みたいに”、一瞬だけでいいから……誰かの中で、きらめいてみたかった」
“あの子”とは、妹のコノハナ(木花咲耶姫)。短命の象徴として記録された姉妹存在。
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■ LOG-E060-05|IWANAGAの手記(観測限界域より)
*「わたしが残ったのは、拒絶されたからじゃない。“始め方”を知らなかったから」
*「死ねないということは、語られないということ。記録されないということ」
*「わたしは、観測者にとって……都合が悪かった?」
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■ LOG-E060-06|観測者ログ:LAUGH-PATCH 404b(記録者補助AI断片)
[解析補助視点起動|対象:IWANAGA構造体]
観測者注記:この神格は“永続構造体”の初期設計において排除された“感情の逸脱因子”を保有している。
再構成は推奨されない。舞台構造として不完全であり、舞台への“感情投影”が過剰になる恐れあり。
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■ LOG-E060-07|IWANAGAの願い(最終位相)
*「それでも……それでも、いちどくらい……誰かに、“きれいだ”って言われてみたかったのよ」
その声は、観測記録の末端に、ゆるやかに溶ける。
彼女は“きれい”に終わることさえ望まなかった。ただ、“終わってもいい”という舞を、受け入れただけだった。
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■ LOG-E060-08|UZUME退場時の構造異常
IWANAGAの姿は消えた。だが“舞台構造体(IWATO-SEED)”は、なぜか崩壊しない。
それは封印ではなかった。ただの“空の器”だったことが明らかになる。
*「最初から、彼女は“ここに”いなかったのかもしれない」
*「でも、わたしの舞が、確かに彼女の“終わり”を記録した。それだけで、いいのよ」
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■ LOG-E060-09|“封じられた終幕”の残響
記録終了直前、IWATO-SEEDに“微細な観測波”が残留する。
それは観客も、演者も存在しなかった場所に、“演目の余韻”だけが刻まれた証。
“終わった”ことこそが、IWANAGAという神を初めて「存在させた」のだった。
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■ 記録ログ断絶|(結)
*「語られなかったからこそ、その終わりは、やさしかった」
*「あたしの舞が“終わらせた”んじゃない。あの子が、“終わっていい”って、言ってくれたんだ」
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『イワナガ錯構記』
“記録されなかった神”にも、終わりの祈りは届く。
【LOG END|FILE-JE060】
―― END OF RECORD ――




