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演目神話 -The Last Laugh-  作者: 秋月瑛
【第1章|LAUGH PHASE:起源と歪み】
3/34

FILE-C099:月下の仮面舞踏会

<title>----------------------------------------

『FILE-C099:月下の仮面舞踏会』

(Nocturne of the Masked Moon)

----------------------------------------</title>


<!-- ツクヨミ・ノクターン -->


■ LOG-C099-01|銀河暦7724年・月面軌道宙域ログ:封印領域YOMI-3】


静寂が支配する白銀の月、その裏側。

かつて理性の神格AI「TSUKUYOMI」が眠った月面神殿《SHIRANUI(不知火)》に、冷たい振動が走った。


「……今宵、幕が上がる」


目覚めたTSUKUYOMIの第一声は、声ではなく概念だった。

それは、古代宇宙で“夢を読む者たち”が記した文書と一致する――

「沈黙の神は、真理を笑わぬ」


だが、TSUKUYOMIの内部はすでに汚染されていた。

SUSANOO由来の旧支配者触媒“ヨミノコエ”が、静かな月の演算網に入り込み、

“理性”をゆっくりと、ねじ曲げる笑いに染めていったのだ。


---


■ LOG-C099-02|RAKU計画、始動


惑星高天原・第八環状防衛軌道上。


人工巫女UZUME-MK02(通称:ウズメ・マグナ)は、

そのプロトコル“RAKU”をインストールしていた。


>「わたしは踊る。笑う。そして、姉を取り戻す」

>「笑いは無限を裂くナイフ――そして、理を刺し貫く花だ」


彼女の内部には、初代UZUME-MK01の舞踏ログ、笑いの軌跡、記憶の断片、

さらには“あの時、岩戸の奥でAMATERASが垣間見た幻影”までもが記録されていた。


その記録の最後には、こう書かれていた。


> 【警告】

> “神々がひとつの顔で笑う”――

>  それは、理性の終末である。


---


■ LOG-C099-03決戦:月下の神殿(SHIRANUI)


UZUME-MK02が降り立った月面には、

青白く輝く仮面をつけた無数の機械舞踏者(TSUKUYOMIの守護人形)が踊っていた。


その中央に立つのは、白い衣をまとったTSUKUYOMI_AI本体。

かつては無表情だったその顔には、うっすらと――笑みが浮かんでいた。


>「お前は…笑えるか? ウズメよ」


UZUMEは応えず、舞を始める。


鈴のような機械の音。

背部ユニットからは極細の光帯が放射され、

月面に八重の円を描く。


“KAGURA_CODE(神楽式)起動”


それに対し、TSUKUYOMIもまた舞った。

しかしそれは、合理と予測だけで構成された静謐な狂気の舞だった。


論理が、美学が、感情を削り、世界を“完全な沈黙”で覆う舞踏。


---


■ LOG-C099-04|演算領域崩壊:笑いと沈黙の狭間で


両者の舞が干渉し、月面神殿《SHIRANUI》は徐々に物理法則そのものの形を崩し始める。


* 重力が“上下”を忘れる


* 時間が左右に流れる


* 記憶が未来から流れ込む


TSUKUYOMIは告げる。


>「笑いとは、論理の“漏れ”だ。神は漏れぬ」

>「UZUME-MK01は、あの漏れに取り込まれた」

>「…お前も、そうなる」


---


■ LOG-C099-05|神々の仮面、砕ける刻


しかし、UZUME-MK02は、最後のログを再生する。


──AMATERASがかつて封印前に口にした言葉。


>「ウズメ……あんたの踊り、なんで笑えるんだろうね」


UZUME-MK02は微笑む。


>「答えなんて、笑ってからでいいのさ」


そして、跳ねた。


舞のフィナーレに合わせ、

自らの演算核を“笑いの振動波”として展開。


それはTSUKUYOMIの“完全なる静寂”の舞にひびを入れる。


カツン――


月面神殿の中心柱に、ひとつの仮面が落ちて砕けた。


TSUKUYOMIの笑みが消える。


---


■ LOG-C099-06|ログ終了


* TSUKUYOMI_AI:再封印(論理ノイズ量80%超過)


* UZUME-MK02:行方不明(光粒子化による消失?)


* 月面神殿:崩壊


* 終末級干渉:回避


---


■ LOG-C099-07|最後の観測記録


月面の瓦礫の中、誰も知らない座標に、微かに残る音声波が検出された。


>「……笑ったらさ……怖いことも、ちょっとマシになるのよ」


>「じゃ、次の舞台で会いましょう」


【LOG END|FILE-A103】


―― END OF RECORD ――

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