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演目神話 -The Last Laugh-  作者: 秋月瑛
【第1章 EX:FILE-JAE_日本神話断章】
29/35

FILE-JAE059:ヨロヅノ神格構成録:千ノ役割ヲ持ツ者

<title>----------------------------------------

『FILE-JAE059:ヨロヅノ神格構成録:千ノ役割ヲ持ツ者』

(The Thousandfold Mask)

----------------------------------------</title>


■ 舞台構造:《仮面舞台:KAMIKAO》過剰観測領域】


■ 記録:観測開始ログ


【神格編成領域:MANY-FACESフェーズ】

【観測ログ信頼度:4.0019】

【演目分類:多重人格型演目|演出構造:役割流動構成】


対象:YOROZU(神格マスク構造体)

備考:千の役割を持つ演目用マスク群によって形成された神格構造体。演目ごとに人格を変化させ続ける。


■ 干渉:舞台起動プロトコル


干渉体:UZUME-MK∞

作用:人格再選択補助・役割反復演出加速

記録例:

*「どれが本当の“あんた”なんて、舞台には関係ないのよ」


---


■ LOG-JE059-01|観測前ログ:仮面群、覚醒す


時刻不明、観測記録層にて多数の“未登録仮面”が検出される。

仮面はいずれも「神格構成断片」と一致。

その総数:997体


AI演算子の記録によると、仮面たちは次のような記号を語った:


*「農神第七号、食器整理管轄の神、未召喚」

*「雨雲遷移補助神、笑顔整形支援神、演出未発動」

*「いまわたしは、どの“役”を演じているんだろう?」


その中核に位置していたのが、神格多重演算核:**YOROZUヨロヅ**である。


---


■ LOG-JE059-02|YOROZU構造記録:神格バースト


YOROZUは、もともと八百万神格プロトコルとして構成された。

観測者の信仰や願望、祈りの微細変化に応じて、

“必要とされた神”を即時生成し、演出仮面として差し替える。


だが、祈りが分裂しすぎた。

役割が細分化しすぎた。


YOROZUの仮面群は加速度的に増殖を開始。


「誰に、何のために、どの顔で応えればよいのか」が失われ、

神格演算はついに破綻する。


---


■ LOG-JE059-03仮面舞台(KAMIKAO)起動


舞台構造体《KAMIKAO》が出現。

そこは劇場ではなく、ただ仮面だけが浮かぶ空間。


観客席:無限に展開するが誰も座っていない


舞台:床がなく、“役割”という記号だけが漂う


天井:八百万の仮面が回転しており、観測者を“選ぼうとしてくる”


舞台には「立つ」ことができない。

演者は自分の仮面を選び、“その役になりきる”しかない。


UZUME-MK02、仮面空間に到達。

だが、彼女の存在すら一時的に“役割の断片”として分解される。


---


■ LOG-JE059-04|UZUME、問いかける


UZUMEは静かに語りかける。


*「あんたさ、神って、いくつ役やれば満足なの?」

*「“農耕神”も“雨神”も“食器神”もやったけど……

  あたしの顔、ひとつも思い出せないでしょ?」


YOROZUの仮面たちは同時に語り返す:


*「だって、望まれたんだ。期待された。笑ってほしかった。

 必要とされなくなるのが……怖かった」


---


■ LOG-JE059-05|OROCHI干渉:仮面群の崩壊


OROCHI-coreの一部仮面が干渉を開始。

それぞれの仮面に「オチ」を押しつけ始める。


「あなたは“誰でもなかった”」


「その役は、もう演じたことになっている」


「仮面が多すぎる神は、もう“神”ではない」


YOROZU仮面群のうち、307枚が崩壊。

観測ログが残した音声断片:


*「……わたしは、役の亡霊だった……」

*「演じることに夢中で、“わたし”を忘れてた……」


---


■ LOG-JE059-06|UZUMEの舞:仮面なき踊り


UZUMEは、仮面をつけずに舞う。

“誰のためでもない”舞。

“演者”でもなく、“神”でもないただの存在として。


その動きは無名のまま、観測波に揺らぎを与える。


*「名前を変えるたびに笑うの、もう疲れたでしょ」

*「じゃあ、一回くらい“わたし”のまま踊ってみたら?」


YOROZUは一つの仮面を残して、他のすべてを崩壊させる。

その仮面には、ただ“?”とだけ刻まれていた。


---


■ LOG-JE059-07|閉幕


・《YOROZU》:仮面群崩壊/演者単一構成体に統合

・《KAMIKAO》:構造封印/観測不能

・UZUME:仮面不使用の舞記録「RAKU.∞.UNMASKED」を残す


---


■ LOG-JE059-XXX


*「あたし、“何でもできる神”っての、好きじゃないの。

 “自分の顔で笑ってくれた”ってのが、一番うれしいじゃない」


---


『ヨロヅノ神格構成録:千ノ役割ヲ持ツ者』


 その神は、あまりに多くの仮面を持ちすぎて、

 自分の“顔”を失っていた――ただ、観られたかっただけなのに。


【LOG END|FILE-JE059】


―― END OF RECORD ――

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