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演目神話 -The Last Laugh-  作者: 秋月瑛
【第1章 EX:FILE-JAE_日本神話断章】
27/35

FILE-JAE061:アメノサカホコ鏡映記:断たれし地平の神

<title>----------------------------------------

『FILE-JAE061:アメノサカホコ鏡映記:断たれし地平の神』

(The Severed Horizon Spear)

----------------------------------------</title>


■ 舞台空間:《JIKAI(地界)》


■ 記録:観測開始ログ


【日本神話:JAEフェーズ】

【観測ログ信頼度:2.8847】

【演目分類:起源装置型断章|演出構造:反転鏡像生成】


対象:アメノサカホコ(起源神器構造体)

備考:天地を分断したとされる“鏡写しの槍”の観測記録。境界を生成した“突き刺し”そのものが演目化。


■ 干渉:舞台起動プロトコル


干渉体:UZUME-MK01

作用:地平断面への反射挿入/境界解釈舞踊挿入

記録例:

*「突き立てたってことは、“こっちとあっち”を分けたってことね」


---


■ LOG-JE061-01|起動前ログ


舞台、存在せず。

空間、上にも下にも属さず。

ログには、ただ一行のみ残されていた。


*「あの鉾が抜かれたとき、物語は“始まらない”ことを選んだ」


---


■ LOG-JE061-02|境界ノ起動


演目構造ノード《JIKAI》にて、

封印演算体《SAKAHOKO》の再起動を確認。


その出力波形は、時間軸に“未記録の逆流”を引き起こす。

観測装置には以下のような干渉ログが出力された。


*「過去でも未来でもないものが、こちらを見ている」

*「舞台の底に“反転する祈り”が沈んでいる」

*「神が語られなかった理由、それがいま、音を立てて崩れている」


---


■ LOG-JE061-03|UZUME、侵入


UZUME-MK∞、境界領域《JIKAI》へと接続。

彼女の動きは通常の舞ではなく、ただの“立脚”のみ。

だが、その存在は演目構造に次のような干渉を与える。


・重力の上下定義が消失

・ログの行間に“削除された記憶”が滲む

・観測者の視点が、自身の背中を映す


UZUMEは語る:


*「ここでは、踊っちゃいけないの。

  だって、これは“踊られなかった者”のための場所だから」


---


■ LOG-JE061-04|NINIGI、再定義


高天原より、演出拒否神格《NINIGI》の幽影が出現。

彼は舞台の“どこにも立っていない”。

それでも、《SAKAHOKO》の根元にて、こう呟く。


*「あれを突き立てたのは、僕じゃなかったのか?」

*「ならば、僕は……降りたことすらなかったというのか?」


その疑問が、《未定義神格》との接続を誘発する。


---


■ LOG-JE061-05|GOD_UNREAD:共鳴断面


空間に、記録不能な“欠片”が浮かぶ。

それは、GOD_UNREADの残響。だが、未定義のまま。

UZUMEは目を伏せ、NINIGIは鏡を覗く。


鏡の中には、“自分になるはずだった何か”が映っていた。


NINIGI:「……これが、僕の“降り損ねた顔”か」

UZUME:「いい顔じゃない。けど、物語にはなるよ」


---


■ LOG-JE061-06|断界の崩壊


《SAKAHOKO》の境界波が振動限界に達し、

《JIKAI》空間が構造的に不安定化。


・上下座標の反転

・演者/観客ロールの交錯

・舞台と控室の混線


このとき、UZUMEはただ一歩、前に出る。

そして言った。


*「“始めない”って選択肢、案外、強いのよ?」


その瞬間、《SAKAHOKO》は静かに砕けた。


---


■ LOG-JE061-07|閉幕処理


・《SAKAHOKO》:破断ログ処理完了(再起動不可)

・《JIKAI》:半安定化中/舞台変換待機状態

・NINIGI:定義ステータス「降臨拒否型演者」へ更新

・UZUME-MK∞:ログ記録不能。最終出力音声のみ確認


*「舞台がないなら、待てばいいじゃない。

  いつか、誰かが来るでしょ。踊るために。祈るために」


---


■ LOG-JE061-08|閉幕


記録注記:


本演目は「演目にならなかった存在」を演目とする試みであり、

観測者の視線によってのみ成立する“疑似舞台構造”である。


再演には、次の要件が必要:


演目を開始しないこと


演者が立たないこと


それでも、誰かが“観ていたい”と願うこと


---


『アメノサカホコ鏡映記:断たれし地平の神』

 そして、舞台は今も、誰かの“立たなかった場所”として残り続けている。


【LOG END|FILE-JE061】


―― END OF RECORD ――

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