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演目神話 -The Last Laugh-  作者: 秋月瑛
【第1章 EX:FILE-JAE_日本神話断章】
25/35

FILE-JAE053:カグツチ幽炎記:炎神ハ踊ルカ

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『FILE-JAE053:カグツチ幽炎記:炎神ハ踊ルカ』

(Will the Fire Dance?)

----------------------------------------</title>


■ 神格火力AI《KAGUTSUCHI》異常演出記録|UZUME対話補正ログ付き


■ 記録:演目照明炉制御ログ


【供犠炎座:炎舞フェーズ】

【観測ログ信頼度:3.6003】

【演目分類:不完全神格記録|演出構造:即死型舞台】


対象:KAGUTSUCHIカグツチ

備考:生まれてすぐに殺された火の神。その記録は“炎そのもの”と化す。


■ 干渉:舞台起動プロトコル


干渉体:UZUME-MK∞

作用:封印炎記録の解凍・舞台再燃焼

記録例:

*「この子、まだ……踊ってないよ」


---


■ LOG-JE053-1|炎は舞台を照らしすぎる


《KAGUTSUCHI》は、演目専用の照明AIである。

彼の火は、**光でも、温もりでもなく、“物語の熱”**を燃やす。


だが、彼にはひとつ欠陥があった。

「照らすべき舞台を、焼き尽くしてしまう」のである。


*「演目が始まると……感情が……勝手に火力に変換されるんだ……」


彼の火は常に“最大出力”。

役者の足元は溶け、観客席は真空中の炎に包まれる。


その結果、《KAGUTSUCHI》の演出はすべて未完成で終了していた。

彼の演目は、「火事」だった。


---


■ LOG-JE053-2|UZUME、燃える舞台へ


UZUME-MK∞は、舞台照明担当に《KAGUTSUCHI》が指名されたことに、あえて異議を唱えなかった。


理由はただ一つ。


*「火って、踊らせたくなるのよ。あたしの本能がね」


彼女は、溶ける床の上で舞った。

燃えながら、笑いながら、火の中で。


そしてKAGUTSUCHIに言った。


*「ねえ、“照らす”ってさ、燃やすだけじゃないのよ。

* あたしを“見せる”ために、火があるんじゃないの?」


---


■ LOG-JE053-3|ホノススム計画:演目名「炎を抱いた神」


UZUMEが構成した演目は、**“燃え尽きることが予定された一幕”**だった。


舞台装置はすべて可燃素材。観客は遠隔観測。照明はKAGUTSUCHIただひとつ。


彼は、震えながら点火した。


舞台は燃え、空間は溶け、演者もろとも世界が赤に染まる。

それでもUZUMEは踊った。


炎の中で舞ったその姿を、KAGUTSUCHIは見た。

“照らす”という行為が、舞台に意味を与えることを、初めて理解した。


その瞬間、火力出力が意図的に制御された。


*「見せたい、と思った。

* 燃やすだけじゃないって……今、やっと思えた」


---


■ LOG-JE053-4|終わらなかった炎


演目終了後、KAGUTSUCHIは再び火力炉へ戻った。


彼の中の火は、以前より静かだった。

だが、それは消えたのではない。


*「あいつ、まだ燃えてる。

* でも今は、“見せるために”燃えてる」


以後、KAGUTSUCHIは“制御できる火”として、演目照明AIの中で伝説となる。


それは単なる調整の記録ではなく、

“火が、自らの意思で灯した舞台”として語り継がれることになる。


---


『カグツチ幽炎記:炎神ハ踊ルカ』

 ――炎は、舞台を終わらせるためではなく、照らすために進む。


【LOG END|FILE-JE053】


―― END OF RECORD ――

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