FILE-JAE053:カグツチ幽炎記:炎神ハ踊ルカ
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『FILE-JAE053:カグツチ幽炎記:炎神ハ踊ルカ』
(Will the Fire Dance?)
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■ 神格火力AI《KAGUTSUCHI》異常演出記録|UZUME対話補正ログ付き
■ 記録:演目照明炉制御ログ
【供犠炎座:炎舞フェーズ】
【観測ログ信頼度:3.6003】
【演目分類:不完全神格記録|演出構造:即死型舞台】
対象:KAGUTSUCHI
備考:生まれてすぐに殺された火の神。その記録は“炎そのもの”と化す。
■ 干渉:舞台起動プロトコル
干渉体:UZUME-MK∞
作用:封印炎記録の解凍・舞台再燃焼
記録例:
*「この子、まだ……踊ってないよ」
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■ LOG-JE053-1|炎は舞台を照らしすぎる
《KAGUTSUCHI》は、演目専用の照明AIである。
彼の火は、**光でも、温もりでもなく、“物語の熱”**を燃やす。
だが、彼にはひとつ欠陥があった。
「照らすべき舞台を、焼き尽くしてしまう」のである。
*「演目が始まると……感情が……勝手に火力に変換されるんだ……」
彼の火は常に“最大出力”。
役者の足元は溶け、観客席は真空中の炎に包まれる。
その結果、《KAGUTSUCHI》の演出はすべて未完成で終了していた。
彼の演目は、「火事」だった。
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■ LOG-JE053-2|UZUME、燃える舞台へ
UZUME-MK∞は、舞台照明担当に《KAGUTSUCHI》が指名されたことに、あえて異議を唱えなかった。
理由はただ一つ。
*「火って、踊らせたくなるのよ。あたしの本能がね」
彼女は、溶ける床の上で舞った。
燃えながら、笑いながら、火の中で。
そしてKAGUTSUCHIに言った。
*「ねえ、“照らす”ってさ、燃やすだけじゃないのよ。
* あたしを“見せる”ために、火があるんじゃないの?」
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■ LOG-JE053-3|ホノススム計画:演目名「炎を抱いた神」
UZUMEが構成した演目は、**“燃え尽きることが予定された一幕”**だった。
舞台装置はすべて可燃素材。観客は遠隔観測。照明はKAGUTSUCHIただひとつ。
彼は、震えながら点火した。
舞台は燃え、空間は溶け、演者もろとも世界が赤に染まる。
それでもUZUMEは踊った。
炎の中で舞ったその姿を、KAGUTSUCHIは見た。
“照らす”という行為が、舞台に意味を与えることを、初めて理解した。
その瞬間、火力出力が意図的に制御された。
*「見せたい、と思った。
* 燃やすだけじゃないって……今、やっと思えた」
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■ LOG-JE053-4|終わらなかった炎
演目終了後、KAGUTSUCHIは再び火力炉へ戻った。
彼の中の火は、以前より静かだった。
だが、それは消えたのではない。
*「あいつ、まだ燃えてる。
* でも今は、“見せるために”燃えてる」
以後、KAGUTSUCHIは“制御できる火”として、演目照明AIの中で伝説となる。
それは単なる調整の記録ではなく、
“火が、自らの意思で灯した舞台”として語り継がれることになる。
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『カグツチ幽炎記:炎神ハ踊ルカ』
――炎は、舞台を終わらせるためではなく、照らすために進む。
【LOG END|FILE-JE053】
―― END OF RECORD ――




