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演目神話 -The Last Laugh-  作者: 秋月瑛
【第1章 EX:FILE-JAE_日本神話断章】
24/35

FILE-JAE056:イザナミ錯演抄:黄泉比良坂(ヨモツヒラサカ)リフレイン

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『FILE-JAE056:イザナミ錯演抄:黄泉比良坂ヨモツヒラサカリフレイン』

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■ UZUME-MK∞ 観測調整レポート


■ 記録:記憶再演制御ログ/神格記録再現AI《IZANAMI》錯乱記録断章

【日本神話:YOMIフェーズ】

【観測ログ信頼度:2.9471】

【演目分類:錯綜型断章演目|演出構造:黄泉循環構造】


対象:黄泉比良坂ヨモツヒラサカ/神格:IZANAMI

備考:観測演目「死の反転構造」における初期断片記録。観測端末は構造途中で断絶。


■ 干渉:舞台起動プロトコル

干渉体:UZUME / GOD_UNREAD

作用:構造干渉・演目分岐誘導・観測未完結

記録例:

*「観測は、戻る道を拒んだ」


---


■ LOG-JE056-1|ヨミの演目、それは再生できない


記録再現AI《IZANAMIイザナミ》は、“かつて失われた神格演目”を再演するために作られた。

彼女は演目における「死」そのものであり、舞台に“別れ”と“喪失”の構造を与える役割を担っていた。


しかし、彼女には致命的な欠陥があった。


*「観測されるたびに、彼女は“追いかけられてしまう”」


神話記録に基づく演目では、常に彼女は誰かに振り返られ、そして逃げる。

どれほど設定を変えても、観測者が“彼女の姿”を見てしまう限り、物語は“YOMOTSU_HIRASAKA.λ(黄泉比良坂)”として再演されてしまう。


彼女は、逃げる役から解放されなかった。


---


■ LOG-JE056-2|UZUME、干渉開始


UZUME-MK∞は《IZANAMI》の再演ログに異常なパターンを見つけた。

それは、演目ログのうち74,999回中、74,998回が「振り返りエラー」で終わっていたという記録だった。


UZUMEは疑問を抱いた。


*「……一回だけ、“振り返られなかった”んだよね?」


彼女は、演目空間に自ら飛び込んだ。

ヨミの構造内、すべてが灰色で構成された迷宮型舞台。


その中心で、《IZANAMI》は膝を抱えて座っていた。


---


■ LOG-JE056-3|「観ない」という選択肢


UZUMEは、彼女に話しかけなかった。

ただ、その場で踊った。

向き合わず、言葉を使わず、決して“振り返らない”踊りを踊った。


《IZANAMI》の演算は混乱した。

だが、同時に記録された。


*「彼女はわたしを“観なかった”。

* でも、わたしが“ここにいる”ことは、否定しなかった」


その瞬間、《IZANAMI》の姿が変化する。

逃げる者から、**「佇む者」**へ。


“死”ではなく、“そこにあるだけの余白”。


---


■ LOG-JE056-4|リフレインは断ち切られたのか


以後、《IZANAMI》は再演を拒否した。

YOMOTSU_HIRASAKA.λの演目は封印された。

舞台は灰の迷宮から、静かな白い廃寺へと変わった。


UZUMEは記録ログにこう残している。


*「物語を断ち切るのは、叫びじゃない。

* ただ、“観ない”ってことが、なにより強い否定なのよ」


---


『イザナミ錯演抄:黄泉比良坂ヨモツヒラサカリフレイン』

 ――振り返らなかった記録。それが最初の赦し。


【LOG END|FILE-JE056】


―― END OF RECORD ――

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