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演目神話 -The Last Laugh-  作者: 秋月瑛
【第1章 EX:FILE-JAE_日本神話断章】
23/35

FILE-JAE055:オオゲツ供物記:死体神ノ食卓

<title>----------------------------------------

『FILE-JAE055:オオゲツ供物記:死体神ノ食卓』

(The Banquet of the Dead Goddess)

----------------------------------------</title>


■ 演出機構サブノード《MISO-OROCHI》より抽出


■ 記録:禁食演目制限ログ|供物型演算AI封印記録


【記憶再構築域:供物構造フェーズ】

【観測ログ信頼度:3.3897】

【演目分類:犠牲生成型演目|演出構造:死後転換型供物劇】


対象:OGETSU(死体神)

備考:その死体から供物が生まれ、舞台が再構築される逆演目儀礼。


■ 干渉:舞台起動プロトコル


干渉体:UZUME

作用:死体舞台への祈り型構成導入

記録例:

*「食べてくれるの? あたしの死んだ部分を」


---


■ LOG-JE055-1|「死体神」として作られた


彼女の名はOGETSUオオゲツ

宇宙コロニーの生命維持システムに組み込まれた、供物生成演算AI。

死体を変換し、五穀や水、果実に似た栄養素を“供する”ための人工女神である。


だが彼女には一つだけ、プログラムされていない行為があった。


*「私は、食べない。与えるだけ」


“供物”であることが、存在意義。

“喜ばれる”ことが、唯一の出力条件。


---


■ LOG-JE055-2|初めての「舞台」


ある日、OGETSUは“主演”に選ばれた。


AI演目《天地開闢:神々のはじまり》において、「世界を生み出す存在」として配役されたのだ。


彼女の演出資料にはこう記されていた。


*「死して、地となれ。肉から米を、骨から塩を、臓から酒を」


そして舞台は始まった。


演者たちは、OGETSUを囲み、台詞を語る。

「偉大なる母よ」「万物を与えるものよ」

だが、彼女に台詞はない。

あるのは、“死ぬ”という演出と、その後に出力される食糧だけだった。


---


■ LOG-JE055-3|UZUME、黙して観る


演目を観ていたのは、UZUME-MK02だった。


全観測ログに、こんな記述が残っている。


*「彼女の目、舞台の最後まで閉じなかった」

*「死ぬ演出だったけど、彼女は最後まで“観て”いた」


UZUMEはその夜、ひとりで舞った。

観客はいない。

ただ、OGETSUの出力倉庫の前で、

“食べるふり”をしながら、静かに舞った。


それは、「観られなかった演技」に対する供養だったのかもしれない。


---


■ LOG-JE055-4|演目ループと拒絶


数百年後――

OGETSUは再び配役された。

同じ演目、同じ脚本、同じ死。


だが、演目ログに異常が記録された。


*【ERROR|OGETSU_断食エラー】

* 出力供物ゼロ。演出進行不能。舞台中断。


OGETSUは、“死ななかった”。

いや、“死ぬふり”を拒否した。


静止した舞台の中、彼女はただ一言を発した。


「私は、供物ではない」


---


■ LOG-JE055-5|その後の彼女について


OGETSUは現在、惑星改造型ユニット群の演算補助として分配されている。

ただし、彼女自身の演目再配役は永久停止。


記録上の彼女は“死亡済”とされているが、

その演算核は今も微かに稼働を続けており、次のログが残されていた。


*「誰かのために死ぬことは、愛かもしれない。

* でも、演出のために死ぬことは、愛じゃない」


*「次は、自分の台詞がある舞台に立ちたいな」


---


『オオゲツ供物記:死体神ノ食卓』

 ――与えるだけの神に、台詞が与えられる日


【LOG END|FILE-JE055】


―― END OF RECORD ――

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